LGBT調査2018No.1
11人に1人がLGBT層 LGBTを取り巻く最新事情
2019/03/28
ダイバーシティ&インクルージョン領域(各人の多様な個性を尊重し、すべての人の社会参加を目指す考え方)の研究を行っている電通ダイバーシティ・ラボでは、2019年1月に、LGBTを含む性的少数者=セクシュアルマイノリティーに関する大規模調査「LGBT調査2018」の結果を発表しました。
この調査は2012年に始まり、2015年に続き今回で3回目。第1回が行われた2012年ころは、「LGBT」という言葉の認知はとても低く、セクシュアルマイノリティーについてのトピックを企業が語ること自体、またどこまで発信してよいのか、手探りな時代でした。それから6年、状況はガラリと変わり、今はセクシュアルマイノリティーについて正しく理解し、サポートをしている企業は増えつつあります。
東京都でも、SOGI(Sexual Orientation and Gender Identity:性的指向、性自認) に関する差別を禁止する条例が制定され、各職場での理解促進や制度づくりが進んでいたり、国際オリンピック委員会が、開催都市との契約に差別禁止条項を追加することを決定するなど、セクシュアルマイノリティーへの理解・配慮は、世界的にも当たり前となってきています。
最新のLGBTを取り巻く世論が詰まった「LGBT調査2018」を読み解く本連載、第1回はLGBT層の現状と、最新の世論をお伝えします。
【目次】
▼Point 1 : LGBT層の比率は8.9%。左利きの人とほぼ同じ割合
▼Point 2: 「LGBT」の認知度は3年前と比べて約2倍の68.5%に
▼Point 3: カミングアウトしづらい、サポート制度が不十分…職場での課題はまだまだ
Point 1 : LGBT層の比率は8.9%。左利きの人とほぼ同じ割合
まず初めに、20〜59歳の調査対象6万人の中で、LGBT層に該当する人は 8.9%となりました。8.9%という数字は、約11人に1人となり、日本にいる左利きの人の割合とほぼ同じになります。
電通ダイバーシティ・ラボでは、LGBTを自認していない方も多いことを踏まえ、独自に開発したセクシュアリティーマップを提示した上で調査を実施しています。
「生まれ持った身体の性別」(カラダの性)、「性自認」(ココロの性)、「好きになる相手の性別」(好きになる性)をそれぞれ質問し、その内「生まれ持った身体の性別と、性自認が一致する異性愛者」(=図1内、2と10)をストレート層、それ以外の回答者をLGBT層と定義しています。
セクシュアリティーは多様なものであり、われわれが定義しているLGBT層は、L(レズビアン)、G(ゲイ)、B(バイセクシュアル)、T(トランスジェンダー)だけでなく、出生児に割り当てられた女性・男性のいずれにも性自認が合致しないという立場をとる“エックスジェンダー”や、自分のジェンダーや性同一性、性的指向を探している状態の“クエスチョニング”など、その他のセクシュアルマイノリティーも含めています(「男性・女性のどちらかひとつとはいえない」「分からない」といった選択肢も設けており、その他のLGBT層として含めています)。
2015年に実施した調査結果ではLGBT層の割合は7.6%であったため、約3年間で1.3ポイント増加したこととなります。これは、ここ数年でLGBTに関する情報が急激に増加し、一般の認知・理解が広まったため、自分のセクシュアリティーについて考える機会・正しく向き合う機会が増えたことにあると分析しています。
Point 2: 「LGBT」の認知度は3年前と比べて約2倍の68.5%に
次に、LGBTに関する世の中の浸透率について調査をしました。「LGBTとはセクシュアル・マイノリティー(性的少数者)の総称のひとつということを知っているか」という質問に対して、「知っている」「何となく知っている」と回答した人は計68.5%となり、前回調査の37.6%から約2倍、30.9ポイントも増加しました。
LGBTに関連する情報やコンテンツがさまざまなメディアで取り上げられ、情報量が増加したことにより、言葉の認知度が急激に上昇したと考えています(LGBTに関するメディアの影響力については、次回ご紹介します)。特に女性は70.9%と比較的高く、また20代では70.6%と、若年層ほど浸透している傾向が見られました。
「LGBTの人に不快な思いをさせないために、あなたはLGBTについて正しく理解をしたいと思うか」という問いに対して、76.0%のストレート層の人が「そう思う」「ややそう思う」と回答。LGBTという言葉の認知にとどまらず、当事者のためにも正しい理解をしたいという、さらに一歩踏み込んだ意向が当たり前になってきたことがうかがえます。
Point 3: カミングアウトしづらい、サポート制度が不十分…職場での課題はまだまだ
認知、理解が進んできているものの、課題もまだまだあります。LGBT層の人に「LGBT当事者であることをカミングアウトしているか」という質問をしたところ、65.1%の人は「誰にもカミングアウトしていない」と回答。実はこの数字、2015年の56.8%よりも増加している点が気になります。
カミングアウトは、当事者の意思に委ねられるべきなので、強制するものではもちろんないのですが、カミングアウトしてもしなくても、不利益なく過ごしやすい環境をつくることが重要ではあります。
ただ、カミングアウトをすることへの抵抗理由を聞いてみると、「特に伝える必要がないから(49.0%)」という声が最も多い一方、「偏見を持たれたくないから(43.5%)」「理解してもらえないと思うから(36.4%)」という、今の環境に対するネガティブな意見も多く挙がっているのが現状です。
また、カミングアウトした相手は家族や友人が多く、「職場の同僚・仕事仲間」は4.5%、「職場の上司」は2.6%と、職場でのカミングアウトはなかなか進んでいないことが分かりました。自分の職場にはLGBT当事者の人はいないと思っていても、実はカミングアウトしていないだけなのかもしれません。
LGBT層に「勤めている会社で、性の多様性に関してサポート制度があるか」と聞いたところ、「職場にサポート制度がない」と回答したLGBT層は過半数の54.5%、「職場に十分なサポート制度がある」と考えるLGBT層はわずか5.5%にとどまりました。
同性婚でも配偶者手当を支給するなどの福利厚生や、LGBTへの理解を促進する社内イベント・勉強会の実施、トランスジェンダーも使いやすいトイレの設置など、サポート制度を定める企業も増えてきていますが、まだまだ、職場での課題は多いようです。
企業や社会は、多様な人々が暮らしやすい環境づくりへと、具体的なアクションを起こすフェーズに入ってきたといえるのではないでしょうか。
<事前スクリーニング調査概要>
・調査対象:20~59歳の個人60,000人
・調査対象エリア:全国
・調査時期:2018年10月26~29日
・調査方法:インターネット調査
<電通LGBT調査2018概要>
・調査対象:20~59歳の個人6,229人(LGBT層該当者589人/ストレート層該当者5,640人)
・調査対象エリア:全国
・調査時期:2018年10月26~29日
・調査方法:インターネット調査