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LGBT調査2018No.2

LGBTへの理解を育むメディアの力

2019/04/24

ダイバーシティ&インクルージョン領域(各人の多様な個性を尊重し、全ての人の社会参加を目指す考え方)の研究を行っている電通ダイバーシティ・ラボでは、2019年1月に、LGBTを含む性的少数者=セクシャルマイノリティーに関する大規模調査「LGBT調査2018」の結果を発表しました。

最新のLGBTを取り巻く世論が詰まった「LGBT調査2018」を読み解く本連載、第2回は、人々の意識・理解における「メディアの影響力」についてです。

欧米では、映画やNetflixのドラマにLGBTのキャラクターが登場したり、LGBTを扱ったコンテンツがアカデミー賞やエミー賞で多数ノミネートされるなど、メディアにおいて多様性を推進する動きは、ここ最近大きなムーブメントとして、LGBT理解の促進に寄与しています。

また、19年3月に日本で行われた「国際女性会議WAW!」では、アニメ「プリキュア」のプロデューサーが登壇し、「多様性を育てるメディアコンテンツ」と題したパネルディスカッションを行うなど、日本においてもメディアの多様性促進への努力は注目されています。

そんな影響力を持つメディアについて、調査の分析結果から見えた、押さえておきたいポイントを四つご紹介します。

【目次】
Point 1 : メディアには、LGBTに対する意識を変える力がある
Point 2::登場キャラクターにLGBT層がいるのは「ごく当然」
Point 3:メディアは人を傷つける可能性もある
Point 4:著名人の影響力が大きい

Point 1 :メディアには、LGBTに対する意識を変える力がある

 

LGBTに対する意識が変わった・理解が深まったのは、どのようなきっかけだったのかを聞いたところ、最も多く挙がったのが、「LGBTの人のドキュメンタリーやニュース」(20.1%)でした。次いで、「映画やドラマ、アニメなどのエンターテインメントコンテンツの影響」(14.3%)、さらに「SNSやインターネットの影響」(12.9%)と続き、上位三つが「メディアによる影響」となりました。

LGBTについての認知はもちろんですが、さらにLGBTに対する理解を深め、意識を変えさせる力を、メディアは持っているということが分かりました。

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最も影響力が大きかった、ニュース、ドキュメンタリーについて、「LGBTについての正しい理解を深めるようなドキュメンタリーを、見たいと思うか」と質問したところ、LGBT層で71.3%、ストレート層でも59.8%の人が見たいと回答、さらに、「LGBTに対するパートナーシップ条例や世界の同性婚に対する動きなどを、もっとニュースで取り上げてほしいと思うか」という問いに、LGBT層の62.6%、ストレート層の50.1%が「そう思う」と回答しました。

LGBTへの認知が高まっている今、「なんとなく知っているがよく分からない」というストレート層でも、正しい理解をするためにメディアでもっと取り上げてほしい人が半数を超えるようです。

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Point 2: 登場キャラクターにLGBT層がいるのは「ごく当然」

 

ドラマや映画、アニメなどに、LGBTのキャラクターが出てくると、そのことが特別視され、話題になりがちですが、第1回で述べたように、8.9%=約11人に1人がLGBT層※1 であり、多くいる登場人物の中にLGBTのキャラクターがいてもごく自然な割合であるといえます。

※1 L・G・B・Tだけでなく、クエスチョニングや、エックスジェンダー、アセクシュアルなどのその他セクシュアルマイノリティも含む。
 

実際、「映画やドラマ、アニメなどのエンターテインメントコンテンツにおいて、LGBTの登場人物が登場することについて、あなたはどのように思いますか」という質問に対し、約半数の人が、ストレート層・LGBT層ともに、「ごく当然だと思う」と回答。

まだまだ日本ではLGBTの登場人物がでてくるコンテンツは多くない状況ですが、LGBT の人が描かれていても当然というところまで浸透しているようです。

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Point 3:メディアは人を傷つける可能性もある

その一方で、影響力の大きいメディアは、時にネガティブな影響を与えてしまう可能性もあります。

「あなたは、以下のようなコンテンツを見て、LGBTについての不当な表現がされていて、不快に思ったことはありますか」という質問を、「ドラマ、映画、アニメなどのコンテンツ」「バラエティー、トーク番組」「ニュース番組・記事」に分けて聞いてみたところ、全てのジャンルにおいて、当事者のLGBT層はストレート層よりもそれぞれ約2倍程度の人が、「不快に思った経験がある」と回答しました。

ストレート層の人では特に気が付かない、もしくは気にならないような表現が、当事者にとっては不快、傷つけてしまうような表現になる可能性を、しっかりと意識しておく必要があるといえます。

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Point 4:著名人の影響力が大きい

最後は、著名人の影響力についてです。世界のLGBT事情に目を向けると、著名人が世の中の認識を変えた例が多く見られます。

アメリカでは、1990年代に、人気コメディアンで俳優のエレン・デジェネレスさんが自ら出演するテレビ番組でレズビアンであることをカミングアウトしたことが、大きな転機となりました。また、イギリスでも、先日大ヒットした映画「ボヘミアン・ラプソディ」でも描かれた、QUEENのフレディ・マーキュリーさんが、1991年にエイズ感染を発表したことは、人々の意識を変える一つの大きなきっかけでした。

調査でも、「LGBTについての理解を深めるために、著名人や文化人の影響は大きいと思いますか」という問いに対し、ストレート層の81%が「そう思う」「ややそう思う」と回答。

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また、「自分が好きなアーティストやタレントなどがLGBTを公表したら、どうしますか」という問いにも、82.3% の人が、「引き続き応援・サポートしたい」という結果となりました。

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LGBTに対する認知が当たり前になり、「なんとなく知っている」から、「正しく理解している」へと理解を深めねばならないフェーズに入っている日本。今回の調査で、「認知を広める」だけでなく、「理解を深める」ためにも、メディアの力は大きいことが分かりました。

日本でも、おっさんずラブ(テレビ朝日系)や女子的生活(NHK)がヒットするなど、ここ数年でメディアでLGBTが取り上げられることが急激に増えてきているように思いますが、「認知」から「理解」への意識変動にも一役買っていくコンテンツが増えていくことが重要です。


<事前スクリーニング調査概要>
・調査対象:20~59歳の個人60,000人・調査対象エリア:全国
・調査時期:2018年10月26日(金)~29日(月)
・調査方法:インターネット調査
 
<電通LGBT調査※1 2018概要>
・調査対象:20~59歳の個人6,229人(LGBT層該当者589人/ストレート層該当者5,640人)
・調査対象エリア:全国
・調査時期:2018年10月26日(金)~29日(月)
・調査方法:インターネット調査
 
1 DDLの「LGBT調査」は、便宜上、LGBTなどのセクシュアルマイノリティーに該当する人を「LGBT層」と呼んでいます。これは、「セクシュアリティーマップ」(セクシュアリティーを身体の性、心の性、好きになる相手の性に分けたもの)の210(ストレート:生まれた時に割り当てられた身体の性と性自認が一致しており、異性愛者である人)以外の方々と規定しています。この「8.9%」の中には、「クエスチョニング(Q):自分の性自認や性的指向を決められない・決まっていない人」やその他も含まれています。そうした意味でも、DDL2012年、2015年、2018年に行った「LGBT調査」は、実質的にはすべてLGBTQ+調査であったといえます。