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地方自治体の取り組みとLGBT世論の地域差

LGBT調査2018No.3

2019/07/18

地方自治体の取り組みとLGBT世論の地域差

ダイバーシティ&インクルージョン領域(各人の多様な個性を尊重し、すべての人の社会参加を目指す考え方)の研究を行っている電通ダイバーシティ・ラボでは、2019年1月に、LGBTを含む性的少数者=セクシュアル・マイノリティーに関する大規模調査「LGBT調査2018」※の結果を発表しました。

今回の調査では、日本各地の世論を比較するため、都道府県ごとに、それぞれ120人の回答を得ています。最新のLGBTを取り巻く世論が詰まった「LGBT調査2018」を読み解く本連載、第3回は地方自治体の取り組みとLGBT世論について同ラボリサーチャーの吉本妙子が分析していきます。

Point1:地方自治体に広がる、同性パートナーの支援制度化

2015年、渋谷区と世田谷区でスタートした同性パートナーシップ制度。区が結婚に相当する関係を認める証明書を出した意味は大きく、地方自治体から住みやすい平等な街づくりをするためのアクションの重要性を訴える大きなきっかけとなりました。

それから4年、パートナーシップ宣誓制度を定める地方自治体は着実に増え、2019年4月1日には、東京都江戸川区、豊島区、府中市、神奈川県横須賀市、小田原市、大阪府堺市、枚方市、岡山県総社市、熊本県熊本市の9都市がパートナーシップ宣誓制度を同時に開始するなど、20の地方自治体にまで広がりました。


東京都では、セクシュアル・マイノリティー(性的少数者)の差別禁止を盛り込んだ人権尊重条例が2018年10月に可決、施行されました。また、パートナーシップ制度だけでなく、ヘイトスピーチの規制や、性自認、性的指向を理由とした差別を禁じる条例も各地方自治体主導で制度化が進んでいます。
国会でも、LGBT理解増進法案が進んでいますが、国全体の制度化に先駆け、このような地方自治体による法整備が活発になっています。

Point2:地方自治体の支援と、地域世論には関連性がある

こういった地方自治体の活動は、世論にどのような影響を与えているのでしょうか。LGBT調査2018の結果をもとに、都道府県別の世論動向を分析してみました。
調査対象:ストレート層 各都道府県120人ずつ計5640人(20~30代 /40~50代 男女それぞれ30人ずつ)

まず、LGBTとはセクシュアル・マイノリティーの総称の一つということを知っているかというストレート層の方への質問に対して、「知っている」「なんとなく知っている」という回答の合計が最も多かったのは沖縄県と福岡県、続いて東京都という結果でした。

いずれも80%を超えており、全国平均68.5%に比べるとかなり高い数値といえます。これらの上位3県は、調査を実施した2018年秋時点でパートナーシップ制度を制定している先駆者的な市区町村を擁しています(沖縄県那覇市/福岡県福岡市/東京都渋谷区、世田谷区、中野区)。

さらに沖縄県は、LGBTのイベント「ピンクドット沖縄」が行われていたり、那覇市では、「性の多様性を尊重する都市・なは」(通称・レインボーなは)を宣言し、地域でLGBTを支援する動きが活発になっています。

このような地域の動きは、認知を高め、より正しい理解へとつながっているのではないでしょうか。

調査対象:ストレート層 各都道府県120人ずつ計5640人(20~30代 /40~50代 男女それぞれ30人ずつ)

また、「同性婚の制度化について、どう思いますか?」という問いでは、ストレート層の方の賛成の比率が全国平均で78.4%だったのに対し、1位の群馬県で87.5%、2位が沖縄県と三重県で84.2%という結果となりました。

前述した沖縄県に加え、群馬県、三重県も現在同性パートナーシップ制度の制定自治体(群馬県大泉町、三重県伊賀市)のある都道府県です。

こういった地域単位の支援活動が住民の理解を促進し、さらに理解が進むことにより、多様な性のあり方を尊重していく機運が高まっていくのだといえます。

Point3:当事者にとっては、都市部の方が住みやすい?

次にLGBT当事者層の回答を、都市部(今回は、東京、神奈川、千葉、埼玉、大阪、京都、奈良、兵庫、愛知の9都府県と定義)とその他の地方部に分け、比較分析をしてみました。

調査対象:LGBT層 都市部(東京、神奈川、埼玉、千葉、愛知、大阪、京都、兵庫、奈良)120人、地方部(その他都道府県)463人

「あなたは、LGBT当事者であることをカミングアウト(実名で自分のセクシュアリティーを他者に伝えること)していますか?」と聞いたところ、誰にもカミングアウトしていないという人が、都市部の9都府県で68.3%となった一方、地方部では74.5%と、より高い結果となりました。

人口が少ない地方部では、コミュニティーが小さく、一度カミングアウトすると、すぐにうわさが広まるなど、住みづらいという声も聞かれます。そういったことがカミングアウトを躊躇する要因となっているのかもしれません。

調査対象:LGBT層 都市部120人、地方部463人

また、「以前に比べて、周囲の人にLGBT当事者であることをカミングアウトしやすい環境になっていると感じますか?」という問いに対しても、都市部では34.2%の人がカミングアウトしやすい環境になってきている、ややカミングアウトしやすい環境になってきていると回答した一方、地方部に関しては、28.3%にとどまる結果となりました。少しずつ改善が進む都市部に比べ、地方部の方が進みが遅いといえます。

調査対象:LGBT層、有職者 都市部:102人、地方部:399人

最後に、「あなたが勤めている企業では、性の多様性に関してサポート制度がありますか?」という問いに対し、都市部では十分ではないにせよ33.3%の人がなんらかのサポート制度があると回答した一方、地方部では14.5%のみと、都市部と大きな開きがあることが分かりました。

地方部の人口減少が深刻な問題となっている中、一人一人の多様性をより尊重し、住みやすい街づくりをすることは、非常に重要な取り組みだと考えます。国レベルでの制度化が遅れている中、地方自治体でのLGBT層への平等な制度づくりやサポート制度は、他の地方自治体に比べて、住人一人一人を大切にしている証しとして、より魅力的で住みたい街と映るのではないでしょうか。


  <事前スクリーニング調査概要>
・調査対象:20~59歳の個人6万人・調査対象エリア:全国
・調査時期:2018年10月26日(金)~29日(月)
・調査方法:インターネット調査

<電通LGBT※1 調査2018概要>
・調査対象:20~59歳の個人6229人(LGBT層該当者589人/ストレート層該当者5640人)
・調査対象エリア:全国
・調査時期:2018年10月26日(金)~29日(月)
・調査方法:インターネット調査
 
※電通のダイバーシティ・ラボの「LGBT調査」は、便宜上、LGBTなどのセクシュアル・マイノリティーに該当する人を「LGBT層」と呼んでいます。これは、「セクシュアリティーマップ」(セクシュアリティーを身体の性、心の性、好きになる相手の性に分けたもの)の2と10(ストレート:生まれた時に割り当てられた身体の性と性自認が一致しており、異性愛者である人)以外の方々と規定しています。LGBT層「8.9%」の中には、「クエスチョニング(Q):自分の性自認や性的指向を決められない・決まっていない人」やその他も含まれています。そうした意味でも、DDLが2012年、2015年、2018年に行った「LGBT調査」は、実質的にはすべてLGBTQ⁺調査であったといえます。