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12年間の「企画書人生」で気付いた三つのこと

電通インターンで伝えるアイデア脳No.4

2019/06/04

12年間の「企画書人生」で気付いた三つのこと

インターンシップ2018の講師を務めた電通社員が、自身の思考法や企画術、仕事への取り組み方を紹介する、本連載。最終回となる今回は、電通ビジネスデザインスクエアの小島雄一郎が、企画書でアイデアを伝える際のポイントをお伝えします。

三つのフェーズでテクニックを活用し、アイデアの本質をあぶり出す

「企画書はいらない」「PowerPointに時間をかけるなんて愚かなことだ」
そんな声をよく耳にします。それでも私は12年間、企画書を書き続けています。プレゼン資料だけではありません。若い頃は飲み会をやる時も、後輩を指導する時も、伝える時の手段はすべて企画書でした。

自分が考えたアイデアを信じてもらうために、実現するために、誰もが納得できる企画書をつくる必要がありました。

ただ、そこで身に付けた「企画書力」はさまざまな場面で役に立っています。本を書きたいと思った時、企画書があったから出版までこぎ着けられました。社内で数千万円の事業投資が承認された時も、事業構想を企画書に落とせていなかったら実現することはありませんでした。

これらの経験から、私が担当する学生向けのインターンシップでは「結局、広告会社に入らなくても役に立つスキルを学ぶ1日」と銘打って、12年間の「企画書人生」で気付いたことを伝えています。今回はその中から三つほどご紹介しましょう。

私は学生たちに「アイデアの出し方」ではなく、「アイデアの見せ方」を教えています。そんなことを言うと「小手先のテクニックだけ教えてどうする?」「もっと本質的なことを教えるべきだ」というお叱りを受けるかもしれません。しかし教えているのは単なる見せ方のテクニックではありません。アイデアの本質をあぶり出すためのテクニックです。

アイデアを企画書に落とす際、大きく三つフェーズがあります。
1.ストーリーをつくる
2.言葉を選ぶ
3.構造でまとめる

まず、「ストーリーをつくる」際のポイントからお話しします。

1.主役を引き立てるストーリーづくり

「企画書」というとすぐにPowerPointやKeynoteを起動したくなりますが、私のインターンシップではこれを禁止しています。「1スライド1メッセージ」を基本とするこれらのツールは全体像がつかみづらいので、ストーリーづくりに向いていません。

それよりもワードパッドやメモ帳、Evernoteがお勧めです。後でPowerPointやKeynoteに落としていくイメージを持ちながら、1スライド1行でプレゼンの全体像をつくるのが企画書の一歩目。実際にインターンシップの資料もこんなメモから始まります。

メモスライド

こうしてストーリーの全体像をつくり、図示などの演出を加えながら1枚ずつ以下のようなスライドにしていきます。

スライド
スライド2

では、どうしたら肝心の「ストーリーをつくる力」が身に付くのか?そこでインターンシップではこんな訓練を行います。

スライド3

まず、企画書に「主役の1枚」を設定。広告でいう「コアアイデア」の部分です。ストーリーづくりはそんな主役を中心に考えます。

例えば上の図では5行目に登場する1文が主役となります。この主役を魅力的に感じてもらうために、話の入り口はどうするか?登場後はどう展開するか?シナリオライターになったつもりで、7行のストーリーを完成させます。

一見すると「話をこじつける訓練」にも感じます。もちろんロジカルシンキングを鍛える側面もありますが、それがメインではありません。

この訓練のポイントは“主役を固定させて何度も行うこと”。同じ主役にいろんな角度から光を当てると、主役の魅力を複数の角度から検証できます。

結果的に主役が主役に足るほどのものか、その強度確認にもなり、主役の新たな魅力を発見するきっかけにもなります。私は普段の仕事でこのテクニックを通じて、その「コアアイデア」が本当に主役を張れるほどのアイデアなのかを検証しています。いいアイデアとは、いいストーリーが浮かぶものなのです。

2.言葉の横軸と縦軸を意識する

大枠のストーリーが決まったら、次は言葉を精査します。ここでのポイントは言葉の「横軸」と「縦軸」です。

横軸とは同じ意味の言い換え、縦軸は一連の流れを意味しています。

例えば「企画」という言葉は「企てる」とも言い換えられますし、少し意味は広がりますが「プランニング」と言い換えることもできます。これが横軸。

そして「企画→発表→実行」など一連の流れに見える言葉の連なりが縦軸です。この軸を意識して1回のプレゼンで“無駄な言い換えをなくす”ことがこのフェーズの目的です。

スライド4

なぜ無駄な言い換えをなくす必要があるのか。例えば、同じプレゼンの中で「私は企画する時〜」と言った後に「私はプランニングする時〜」と言い換えてしまうと、聞いている人は「企画とプランニングって何が違うんだっけ?」と余計な思考のスイッチが入ってしまいます。この余計な思考はコアアイデア(主役)の存在感を薄める「ノイズ」となるのです。

スライド5

この「ノイズ」によってプレゼンや企画書が台無しになっているケースによく遭遇します。これは特に語彙力がある人、知識が多い人が陥りがちです。

「相手の頭を整理する」という視点が抜け落ち、ノイズの多い自分本位のプレゼンや企画書になると、結果的に「あの人、要するに何が言いたいんだっけ?」となってしまいます。

使用する言葉の種類を絞り、ノイズを最大限減らすことで受け手に「本当に伝えたいコアアイデア」(主役)を印象づけるのがこのテクニックの機能です。

3.構造でフラットな議論のフィールドをつくる

ほかにもプレゼンや企画書に関するテクニックは山ほどありますが、今回は構造の話で締めたいと思います。

これまで一口に「企画書」と言ってきましたが、私は四つのケースに応じて書き分けています。

まず自分で話せるかどうか、口頭で補足できるのであれば企画書にはキーワードだけ書いておけばいい。次に紙で残るかどうか。紙に残るのであれば、その企画書が独り歩きする可能性があります。この場合は最低限読み物としても成立するレベルを意識します。

この四象限で捉えると、もっとも難易度が高いのが「自分で話せず、紙に残る企画書」。そこで活躍するのが「構造」です。

スライド6

「自分で話せず、紙に残る企画書」とは、経営層や自分の手の届かないレベルの人に上がっていく企画書が多くなります。そういった人は大抵忙しいので、結論を急ぎます。しかし結論だけ書いても、それがハマらなかった場合は何度もやりとりをすることになってしまい、逆に非効率です。

そこで企画書には必ず、企画書の趣旨を構造でまとめた1枚を用意しておきます。ここで大切なのが「網羅性」です。

網羅性とはつまり「目指すべきはAです」ではなく、「A〜Dがある中で、Aを目指します」という状態のこと。このA〜Dが全ての可能性を網羅していることが重要です。いわゆるMECE( Mutually Exclusive and Collectively Exhaustive:もれなく、ダブりなく)というものです。上記の「四象限」構造を用いた説明もこの網羅性を担保した一例となります。

構造の効果は「一目で分かる」という理解のスピード促進もありますが、「この図で言うとココ」のように“議論のフィールドができる”という効果が大きいです。網羅性のあるフィールドを準備することで、好き嫌いなどの好みを排除してフラットに議論をすることができます。

特にアイデアの仕事は好き嫌いの話になりやすいので、こういったフィールドが重要です。もし企画が通らなかった場合は、用意したフィールドを使って「求めていたアイデアはこのフィールドでいうとどこですか?」と確認することで、再度プレゼンする際に修正をする方向性を確認することができます。

そこでインターンシップでは構造化の訓練も行います。例えばお題はこう。

スライド7

オーソドックスな四象限でも、ベン図でも、オリジナルの図でも構造に指定はありません。大切なのは網羅性です。「じゃあ○○という映画はどうだろう」となった時に議論ができるフィールドをつくってもらいます。

スライド8
上記例題の回答例

このように、世の中の事象を構造で説明できるようになっておくと、自分のアイデアの意味や意義も客観的に説明できるようになります。

いいアイデアなら採用される、という勘違い

私が「アイデアの見せ方」にこだわる理由は「アイデアは見せ方次第でどうにでもなる」とアイデアを軽視しているからではありません。大切なアイデアだからこそ、見せ方で失敗したくないのです。

「いい商品さえつくれば売れる」なんてことがないように、「いいアイデアさえ出せば採用される」こともありません。むしろ「いいアイデア」とは人の理解が及ばない場所にあることが多く、意外性があるから「いいアイデア」なのです。

つまり「いいアイデア」ほど、採用されるハードルは高い。だからこそ、その意外性の意味や意義をきちんと説明する必要があります。今回書いたポイントが、少しでも「いいアイデア」が世に広まることに貢献できたらうれしいです。