日本古来のコンセプトで、イノベーションを生むんだ。「Discover Japan Concept」Start!
2019/07/17
<目次>
▼日本はオープンイノベーション先進国だった?
▼心を撃ち抜かれた、唐津に伝わる魔法の言葉。
▼ビジネスに即応用できる日本のコンセプトのみを集めた、日本初の連載始まる。
日本はオープンイノベーション先進国だった?
日本はオープンイノベーション先進国だと言ったら、違う、と言われるでしょうか。
日本はラピッドプロトタイピング先進国だと言ったら、あなたはなんと言うでしょうか。
日本人の多くが、足元ではなく遠くばかりを見ているから気づいていません。流行の横文字の、アメリカから来ているこういった手法が、すでに、数百年前から日本にあったということに。
海外から概念や手法を輸入して、インスタントに成長しようとする流れに警鐘を鳴らしたいと思っています。それでは世界初のものは生まれないからです。
いま僕らが始めようとしているのは、日本古来のコンセプトを、21世紀の社会に応用し、“世界初”を生むことです。組む相手は、シリコンバレーのスタートアップでも、ヨーロッパの大学でもありません。日本の先人たちが残した、忘れ去られようとしている古来の知恵です。
Discover Japanと電通Bチームが組んで、
日本古来のコンセプトで、
企業のイノベーション発想支援を行う。
これが、「Discover Japan Concept」プロジェクトです。実は開始からすでに5年たっています。そして、今後かなり長く続くと思っています。もしかしたら、一生やるかも。
だから、どうやって始まったのか、そのストーリーもちゃんと長めにシェアしておきたいと思います。一緒にやろうよ、と言ってくれる人には、どうせ話すことだから。少しお付き合いくださいませ。
【広報リリース】電通とディスカバー・ジャパン社、日本古来のコンセプトで企業や自治体のイノベーションを支援するコンサルティングサービス「Discover Japan Concept」を開始
http://www.dentsu.co.jp/news/release/2019/0717-009854.html
【公式サイト】
https://discoverjapan-concept.com
心を撃ち抜かれた、唐津に伝わる魔法の言葉。
2014年2月。佐賀県武雄市。夜10時頃。
僕は、有田焼のエース、李荘窯の寺内信二さんといました。たくさんの教えを頂きながら、当然飲みながら、2016年に控えた有田焼400周年で何をするかについて話していました。
過去の話から、未来の夢まで。故郷の先輩・寺内さんとのいろいろな会話の中で、ふと出てきた耳慣れないワンフレーズ。その言葉に僕は完全に耳を奪われました。
寺内「つくり手八分、使い手二分、って言葉があってさ」
倉成「なんですか、そのカッコイイ言葉は?」
寺内「つくり手の役割は八割くらいだと考える。使い手を想像して二割分、余白を残してつくる。料理を盛り付けたり飾られたり、器は使う人が使って初めて100点になるって考え方。有田じゃなくて唐津焼の言葉なんだけどね」
撃たれてしまいました。ズキューンと音がして。撃たれたのは、頭じゃなくて、心ですね。完全に。
そして、こう思ったのです。
「それって、消費者参加型のオープンイノベーションじゃん。
しかもそこに、つくり手と使い手が、それぞれ8:2という割合付きの」
一応解説すると、オープンイノベーションとは、違う組織と組んだり、異業種の知識や技術を積極的に取り込んで開発する、要はオープンにすることでイノベーションを生む手法です。そこに消費者も初めから参加して開発を進めるのが「消費者参加型オープンイノベーション」です。
ここ10年くらいで流行したこの手法を、唐津では300年以上も前からやっていた。だとしたら、これはすごいことです。
つくり手と使い手の参加具合を8:2って決めてアイデアを考えたら、焼き物以外でも新しいものができるかもしれない。そして、何より、舶来の手法じゃなくて、日本の過去の知恵と組んだら、日本にしかできない、本当に世界初のものができるんじゃないか。
それが、ズキューンと撃ち抜かれてから、締めの卵かけ御飯を食べるまでに思ったことです。
滞在を1日伸ばし、唐津へ。人間国宝の流れを継ぐ中里太郎右衛門窯のパンフレットに「つくり手八分、使い手二分」の記載があることを確認しました。
また、ある窯元では、お客さんが買った器を手渡す時「この器は未完成ですので、あなたの手で育ててくださいね」と伝えるのだという話も聞きました。なんてオシャレな。
唐津では、「つくり手八分、使い手二分」の言葉が生きていたのです。
ビジネスに即応用できる日本のコンセプトのみを集めた、日本初の連載始まる。
唐津焼のこのコンセプトを基に考えれば、新しい発想がたくさん生まれます。2割、買う人が入り込む、参加できる余地のある商品は、考えやすいのです。
例えば、「使い手二分」足すことで完成するクルマがあったら?
あるいは、
「使い手二分」で完成する照明、
「使い手二分」で完成するアプリ、
「使い手二分」で完成するリモコン、
「使い手二分」で完成する教科書…
読んでいるあなたも、もうアイデアが一つは浮かんだでしょう。
唐津焼の他にも、面白いコンセプトを持つ伝統工芸や伝統芸能があるんじゃないか。それを集めたら、ちょっと面白いことになるんじゃないか。
一緒に「日本古来のコンセプト集め」をやるとしたら…最初に浮かんだ顔。その人に電話をかけます。日本のモノ、コト、場所、人の魅力を再発見する雑誌「Discover Japan」統括編集長、高橋俊宏さん。
2014年7月末。渋谷ロフトの2Fのカフェ。手書きの紙で、趣旨と唐津で見てきたことを説明しました。
「これは面白いですね!やりましょう!」
「絶対いけますよ!」
と言われたかどうか、セリフは忘れたけれど、「とにかく、始めてみましょう」ということになった時のお互いの熱は覚えています。
その場で、一緒にルールも決めました。その日決めたことは三つあります。
◎ルール1:Discover Japanで連載をしながら、日本古来のコンセプトを採集していく。
締め切りができることで、自動的にコンセプト集めが進んでいくと思ったことから、Discover Japan誌上での「連載」という形で始めることになりました。一つの記事を出すためには、その10倍はコンセプトを集めなくてはいけないので、それだけたくさんのコンセプトを集められるということもあります。連載名は「ニッポンの極意採集」に決定。
◎ルール2:読んだ人が自分のビジネスにすぐ応用できるコンセプトのみを集める。
例えば、「わびさび」とか「かぶく」とか、日本の文化としては大事な概念ですが、発想に関していうと、アイデアの土台にはなりにくい。どんな大家が集めたり解説したものでも、現場で使えなければ、お勉強で終わってしまいます。
しかし、常にアイデアを生まなければならない人。つまり日々、いろんな企業の新規事業のサポートや、国や自治体の物事のプロデュースや、スタートアップやNPOとの共同事業や、自社事業を立ち上げることに迫られている人間(すいません、われわれです)がキュレーションすると、全く違うものになるはず。
そう思ったから、ルール2ができました。そして、
◎ルール3:連載してある程度コンセプトが溜まったら、「日本古来のコンセプトで、発想を支援するサービス」を共同で立ち上げる。
そう。つまり、高橋さんと話した5年前の時点で、すでに今回リリースを出した計画を織り込んでスタートしており、そして今、念願かなってこのサービスを立ち上げたというわけです。
流行といえば、渋谷。その中心部に位置する、渋谷ロフトでの1時間の会話から。過去の先人たちの知恵とコラボレーションする、僕らの長い旅が始まったのでした。
その結果、「オープンイノベーション」をはじめとする現在の概念や手法を数百年単位で先取りしたようなコンセプトが次々と集まりました。
ラピッドプロトタイピングは俳句に、コクリエーションやビジネスエコシステムは城崎温泉に、アクティブラーニングは藩校の教育にすでに先取りされていたのです。少し違った日本らしい形で。
次回はそんな、イノベーションに役立つ日本古来のコンセプトのいくつかをご紹介します。
つづく。