loading...
MENU

あなたなら何を生む?現代の発想を刺激する、日本古来のコンセプトは、こちら。

電通BチームのオルタナティブアプローチNo.8

2019/09/05

あなたなら何を生む?現代の発想を刺激する、日本古来のコンセプトは、こちら。

<目次>
4次元オープンイノベーションを知っていますか?
現代のビジネスに即応用可能!日本古来のコンセプトたち
「日本発」の知恵と組んで生まれる「世界初」

 

4次元オープンイノベーションを知っていますか?

「4次元オープンイノベーション」という言葉をご存じでしょうか。

シリコンバレーの最新理論!?北欧で最近流行の手法!?どちらでもありません。これは、2018年4月号のForbes Japanで僕が提唱したコンセプトです。

念のため、オープンイノベーションとは、

・組織内部のイノベーションを促進するために、内部と外部の技術やアイデアなどの資源の流出入を活用すること。
・その外部とは他社、大学、地方自治体、社会起業家、消費者などを指す

つまりは、「外と組んで、新しいこと生む」こと。

当たり前ですが、基本的にオープンイノベーションの“組み先”は、生きている人です。そして僕が提唱したのは、組み先に「過去」も入れてみませんか、ということでした。

といっても、イタコさんにお願いして死者と組む…とかそういうことじゃないですよ。過去や歴史上の思想、文化、技術、エピソード、などと組む、ということです。

温故知新とは、ちょっと違うんですね。知るだけじゃなく、新しいものをつくらなくては、お勉強で終わってしまう。なので、温故創新の方が近い。あ、また言葉をつくっちゃいましたが。

実際、自分たちのプロジェクトでも、

・森永製菓の店舗開発
・有田焼400周年事業
・鍋島藩の藩校を21世紀にアップデートした「弘道館2」(※記事)

などで、過去と組んで新しいものをつくりました。

実は、僕ら電通Bチームそれ自体も、「電通の歴史」と組んでつくったんです。社史室に通い、第4代社長・吉田秀雄さんの講演録もスピーチも浴びるほど見て、過去の電通の部署のあり方も見て、いいなと思う方法を取り入れてつくりました。お墓参りも行きました。ここまで社の過去を掘ってるプランニングチームは、現役では多分僕らだけでしょう。

さて、日本古来のコンセプトで、イノベーションを生むサービス「Discover Japan Concept」。これも、4次元オープンイノベーションです。

日本の伝統文化に息づく古来の知恵と、組んで新しいものを生みます。時空を超えて、先人と組むわけです。こう考えると、ワクワクしません?

今回は、Discover Japan誌の連載から生まれた具体的な「日本古来のコンセプト」をいくつかご紹介します。

いずれも、前回触れた唐津焼の「作り手八分、使い手二分」のように、全部現地取材をし、その道の方々から「採集」してきたコンセプトです。あなたなら、これらのコンセプトを使ってどんな新しいアイデアを思いつきますか?考えながら読んでくださいね。

現代のビジネスに即応用可能!日本古来のコンセプトたち


■コンセプト「四十八茶百鼠」(しじゅうはっちゃひゃくねずみ)

これは、伝統的な着物「江戸小紋」からのコンセプト。

江戸時代、幕府が贅沢を禁じる「奢侈(しゃし)禁止令」を出した時がありました。もちろん、華美な服装も禁止。そんな中、裕福な町人が染物屋さんに、派手に見えない地味な色をたくさん染め分けてもらって、そのコーディネートや微差を楽しんでいたのだそうです。

「茶色で48色、鼠色で100色」というのがこの言葉の由来ですが、実際にはその数字は「たくさん」の例であって、正確にその色数であったわけではないらしい。

「四十八茶百鼠」
「四十八茶百鼠」について教えていただくため伺った富田染工芸の色見本帳。その数は、9000色に及ぶ。こんな感じの、茶色と鼠色の見本帳から、江戸の町人たちは、色を選んでいたのだろう。

このコンセプトからインスパイアされて、あなたなら何を考えますか?

例えば、ファストファッションブランドなら、「来年のTシャツはグレーのみ100色をNYの旗艦店で発表する」など考えられますよね。

スピード、分かりやすさ、規模が求められるグローバル社会で、「繊細さ」の価値を世界に訴えるにはもってこいのコンセプトです。

■コンセプト「四方正面」(しほうしょうめん)

「どの角度から見ても正面として成立する」「角度によって違った面が見える」というコンセプトです。

元は華道の言葉で、一方向からだけでなく、四方どこから見ても、正面に見える(鑑賞者が楽しめる)生け方のことです。

西洋のフラワーアレンジメントはシンメトリーなため、もちろん四方正面ですが、生け花の場合は左右非対称なため、それぞれの方向から違った景色が楽しめるのがポイント。

「四方正面」
お話を伺ったのは未生流笹岡の三代家元・笹岡隆甫さん。実際に四方正面な作品をつくっていただいた。京都にて。夏の暑い日でした。

このコンセプトも応用しやすいですね。四方正面なテレビ。四方正面なクルマ。etc…。

いま一方向のものを、四つの方向から使えるようにしたら、便利になりそうなもの。ありますよね。

■コンセプト「見立て」

辞書によれば「あるものを別のものと仮にみなして表現すること。なぞらえること」。いろんなジャンルで使われる言葉ですが、我々は和菓子の巨匠に取材しました。

取材して体験したことをベースにいうと「森羅万象から人の心まで、あらゆる物事を、一つのモノで表現すること」。

たとえば、きんとん。冬は白いきんとんを「雪です」と言ってお客さんに出す。お客さんは「雪ですねえ」と言って味わう。春にはピンクにして「桜です」と出す。そうすると「わあ、桜!」となる。この二つ、実際は、同じ材料。なのに、見た目だけでなく、味まで違うものとして感じられる。(すごいですよね)

「見立て」
一幸庵の水上力さんにつくっていただいた、きんとん。同じ材料で、違う状態の桜をこれだけ表現できる。なんとなく味も違って感じてしまうから不思議。

見立ては、ビジネスの世界で使いやすいコンセプトです。例えば、広告会社だとして。「わが社が目指すのは、広告会社ではない。◯◯◯◯である!」と言ったとしたら発想の幅が広がります。

あなたのビジネスなら、新しく何に見立てられるでしょう?

■コンセプト「舌頭千転」(ぜっとうせんてん)

「句調はずんば舌頭に千転せよ」
(く、ととのわずんば、ぜっとうにせんてんせよ)

句を詠む際に、違和感を感じたら実際に何度も口ずさんで検証してみよ、という松尾芭蕉の言葉を、弟子・向井去来が書き留めていたもの。

文字で書くだけでなく、何度も言って体を通すことで、よい調べに整える教え。千転というのは、これもまた「たくさん」の例えと思われます。

はやくたくさん試作してみるという意味で、現代でビジネスの世界で言われる「ラピッドプロトタイピング」と同じことですね。これを300年前に芭蕉は言っていたわけです。

「舌頭千転」
俳人・大高翔さんに、向島百花園を散策しながら、お話を伺う。手元にあるのは季語の辞書のごとき役目を果たす「季寄せ」。「歳時記」とも。

ラピッドプロトタイピングは、物理的なプロダクトだけに当てはまるのではないことが、この芭蕉の言葉からわかりますね。なんだっていいとしたら、あなたの業界なら、何をたくさんつくってみることができますか?

「日本発」の知恵と組んで生まれる「世界初」

と、Discover Japan誌で過去連載してきた「日本の奥義採集」コーナーから、五つのコンセプトのさわりだけお教えしました。

やっぱり、現場の臨場感と、一つ一つの考えの周りにあるエピソード含めてお伝えしないと、インスパイアされる量が少ないかも…。もっと詳しくは、Discover Japanのバックナンバーを買っていただくか、直接われわれに聞いてください。

この採集したコンセプトを基に、東京芸大での授業では学生に、日本経済新聞主催の「日経Discover Japan academy」というセミナーでは企業の方向けにワークショップを実施。新しいアイデアが確実に生まれることを実証してきました。

どんなものが生まれたか?については、Discover Japan Concept ウェブサイトの下の方にレポートとムービーを載せていますので、よかったらご覧ください。

見ていただくと分かりますが、過去の知恵と組むと、本当に思いもよらぬ新しいものが生まれるんですよね。しかも、海外から来たコンセプトと違って、自分たちの文化とつながっているから、分かりやすく、つかみやすい。みなさんも、きっとこの原稿を読んでいるうちに、いくつかアイデアが生まれたことでしょう。

今回ご紹介した以外にも、イノベーションに寄与する古来のコンセプトまだまだたくさんあります。僕らがここ4年で集めたのは、ざっと70個。書、仏教、能、落語からはインタビュー済みで、茶道、武道、将棋、文学からもすでに採集済みですが、今日はこれくらいで。

最後に一つ。なぜ僕が、伝統についてのプロジェクトを立ち上げたか?それはいろんな理由があります。

  1. 親が茶道の先生だった。
  2. 2010年のAPEC首脳会議の総合プロデュースなどの仕事を通じて、「日本の強み」は何か、を真剣に考えたから。
  3. 2007年、バルセロナのプロダクトデザイナーで、Speculative designの教科書にも出てくるMarti Guixeの事務所で半年働いた、最後のアドバイスが「日本のコンテクスト(文脈)を大事に仕事しなよ!」だったから。

などなどいろいろありますが、決め手は、creativeをやっている以上、「知恵」に興味があるからです。

業種や国や時代と関係なく、応用が効く知恵。特に、誰かの頭脳に刺激を与え、何かを生み出してしまうinspiringな知恵、知ったことで誰かの人生を豊かにしてしまう本質的な知恵に。

長期目線で物事を見られず、海外のトレンドに流されがちで、足元をおろそかにしている日本。そこへの問題提起を、誰かがやらなくてはいけない。誰がやんなきゃいけないかというと…それは、気づいた人。気づいてしまった、だから自分がやんなきゃという使命感にかられたってのが本当のところです。

アホか、と言われるかもしれないけど、こんな思いで始めました。幸いにも、仲間にも恵まれてますしね。

先人たちの知恵と組んで、日本からしかできないもの、つくろうよ。時空を超えて過去の知恵と組む「4次元オープンイノベーション」、一緒にやろうよ。そういう仲間。お待ちしてます。すんごいもの一緒に生みましょう。日本発、世界初、人類の進歩に貢献するようなものを。

もしかしたら、また遠い未来の人たちが、僕たちがつくったものを見て、インスパイアされて、時空を超えて組んでくれるかもしれませんからね。


【イベント告知】
「第2回 日経Discover Japanアカデミー in 日本橋」開催決定!

日本で培われた伝統的な感性、価値観を学び、新たな製品・サービスの開発に生かすための実践講座が今年も開講。電通Bチームから倉成英俊、キリーロバ・ナージャの両氏が登壇する。

1企業/団体につき5人編成のチームでのみ申込可能で、申込締切は9月30日17時。詳細は下記サイトを参照。
https://events.nikkei.co.jp/17530/