【続】ろーかる・ぐるぐるNo.190
コンセプトをアーカイブせよ
2024/07/26
「コンセプトの品質管理」における5項目の評価基準を片手に、あなたの身の回りにある事業計画や企画書を見直してみてください。そこに記されている「コンセプト」は、事業を遂行する上で本当に十分な品質を保っているでしょうか?
ざっくばらんに言えば、コンセプトは常に「筋の良いメタファー」でなければなりません。「筋の良い」とは④「数字」と⑤「理想」の実現に貢献できるということです。そして「メタファー」は、今はまだこの世に存在しない(①いままでの常識を覆し、②いままでにない顧客を創造する)“具体策”を仲間に直感させる(③)ために欠かせない技術です。
「筋」の良しあしを検証するには一定の時間が掛かりますが、それが「メタファー」であるかどうかは一瞬にして判断がつきます。そして、もしそこに「喩え話」の要素がないとするなら、大至急作り直さなければなりません。
ところが、いざ「コンセプトを、メタファーで表現しよう」となると、なかなか難しいようです。「学級委員みたいな」とか「野武士のような」といったブランドパーソナリティの話になってしまったり、課題解決によってもたらされるポジティブな状況を、「魔法」とか「革命」とか、ポエティックに言い換えることに終始するケースを、しばしば目撃します。
そこで今回は、コンセプトをメタファーでつかまえるときに参考になるであろう2つのポイントについてお伝えします。
1つ目は、そもそも「何を描かなければならないのか?」についてです。
コンセプトとは、ヒト(お客さま)とモノ・コト(商品・サービス)の間に生まれる「新しい結びつき」です。この結びつきを、ヒトに重心を置いて描こうとすると「顧客創造」、モノ・コトに重心を置くと「価値創造」となります。つまり「コンセプト創造」と「顧客創造」「価値創造」は本質的に同じ行為を意味します。
そのうえで、「結びつき」という抽象的なものを、いきなり喩え話にしようとするから難しくなるのです。まずはいったん、そこに生まれる「新しいお客さまの生々しい顔」をできるだけ(デモグラフィカルではなく)サイコロジカルに描き出し、同時にそのヒトの課題を解決するモノ・コトの「価値」を言語化しましょう。
この2つが準備できれば、その間に生まれる「新しい結びつき」を表現する難易度は、ぐっと低くなるはずです。
2つ目は、結局「どう描いたらいいのか?」です。これを知るための最良の手段は、1つでも多くの「傑作コンセプト」をアーカイブすることです。傑作の何たるかを知らずして、コンセプトづくりに挑もうというのは、どだい無茶なお話です。
「サードプレイス(スターバックス)」、「空飛ぶバス(サウスウエスト航空)」、「平和を創り出すための工場(広島平和記念公園)」、「香りの出版社(フレデリック・マル)」、「芸術は爆発だ(岡本太郎)」、「人生に、野遊びを。(スノーピーク)」……と、傑作コンセプトの例を挙げればキリがありません。
こういった事例について、「なぜ、その言葉を選んだのだろう?」「別の喩えではダメなんだろうか?」と、ひとつひとつじっくり吟味するのです。そうすることによって、確実に「新しい結びつき」を表現する技術は向上します。
コンセプトが常に仮説に過ぎないことを考え合わせると、ボクたちは永遠に、「筋の良いメタファー」を探し、それをブラッシュアップする検証過程を戦い抜かなければならないのです。
さてさて。
おいしくてお財布にも優しい「よいお店」なんていうのは、探しても、探しても、見つからないものですが。
大井町線緑が丘駅近所に開店して、まだ1年も経っていない某イタリアン。とある調理学校の先生からオススメされて行ってみたら、これが大当たり。
最初に出てくる燻製バターに魅了され、カツオのカルパッチョも、自家製タリアテッレも、ローマ風牛テールの煮込み“バチナーラ”も、みんな手が込んでいて、うまい。それをシェフがほぼワンオペで回していることに、びっくり。しかもコスパが良くて、くつろげる。こんなありがたいお店は、絶対にナイショの隠れ家にしておこう!!と企んでおりました。
ところが、そんなお店にはやっぱり友達を連れていきたくなっちゃうもの。そのうち、会社同期のMさんもすっかり行きつけの常連であることが発覚。素晴らしいレストランを秘密にしておくことなんて、どだい無茶なお話なのだと悟りました。
店名のヒントは写真にあります。ご興味があれば、ぜひ探してみてください。
どうぞ、召し上がれ!