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2018年クリエイター・オブ・ザ・イヤー受賞者 田辺俊彦氏に聞く 自分の中に根差すボーダーレスの魂について

「届く表現」の舞台裏No.19

2019/07/19

2018年クリエイター・オブ・ザ・イヤー受賞者 田辺俊彦氏に聞く
自分の中に根差すボーダーレスの魂について

「『届く表現』の舞台裏」では、各界の「成功している表現活動の推進者」にフォーカスします。今回は、2018年クリエイター・オブ・ザ・イヤーを受賞した電通の田辺俊彦氏に、表現活動への取り組み方や信念などについて伺いました。

田辺俊彦氏
田辺俊彦氏

ここ3年間くらいは企業のグローバルなキャンペーンを手掛けさせていただくことが多くなっています。よく聞かれることが、ドメスティックなものとの企画の仕方やプランニング手法の違いです。なのですが、自分としてはそこに違いは全くありません。驚くほどないんです。人間が心を動かすものを煎じ詰めていくと、国や文化や年齢がどう違おうと、絶対に変わらない核のようなものがある。これは僕の強い信念です。その核をひたすら追求することだけを考えています。

僕は日本で生まれ大学も日本でしたが、高校卒業までは計4年間を除いてずっと海外で過ごしました。それも、インドネシア、オーストリア、サウジアラビア、イギリス、ドイツ等々、実に多様な国々で。表現に国境なんてないとの僕の信念はこうした実体験からおのずと出来上がったものかもしれません。

核となる普遍的な価値をいかに表現でジャンプさせるかが、クリエーティブのスキルだと思っています。誰もが共感できるテーマで、誰も見たことがない話をつくる。一番しんどく、やりがいもあるところですね。

トヨタ自動車が初めて展開したワールドワイドキャンペーンのベースには「人が自由に動く社会をつくる」との確固たる企業哲学がありました。大変な時間と労力をかけてつくり上げた作品群はすべて、「人が自由に動くことをトヨタが祝福する」構図で貫きました。

トヨタ自動車「Start Your Impossible グローバルキャンペーン」
トヨタ自動車「Start Your Impossible グローバルキャンペーン」

国内向けに手掛けた事例としては、例えばNTTドコモ25周年キャンペーン。安室奈美恵さんの25年のキャリアとシンクロさせての展開。25年前の彼女の姿は今と本当に同じで、むしろ今の方がきれいでかっこいいことを、彼女の聖地・渋谷を舞台に徹底的にリアルに描きました。

NTTドコモ「安室奈美恵×docomo 25th ANNIVERSARY」
NTTドコモ「安室奈美恵×docomo 25th ANNIVERSARY」

僕は社会人になるまでは、徹底的な「右脳」人間でした。海外の高校時代はクラブカルチャーにつかり音楽を、そして大学では映像をやっていました。ずっとポップカルチャー・サブカルチャーの世界で過ごしていた。てっきりクリエーティブ部門にいくと思って入社した電通での配属は、中部支社のマーケティング部門。ここで7年を過ごしクリエーティブ部門に転局したのですが、この7年間の経験が、僕にとって実に有意義だった。人生で初めて強制的に「左脳」を使うような経験。マーケティングやブランド論を学び、名古屋でしか経験できない地域性や東京とは違う原理にも触れられた。

こうしてちょっと変なハイブリッドが出来上がったと自分で感じた時期に、クリエーターとしてのキャリアがスタートしました。そして、ベーシックなクリエーティブのスキルをひたすら磨く数年を経て、30代半ばくらいから音楽・ダンスなどカルチャーの知見や語学力といった自分の個性を仕事に投入していった感じです。

僕は表現にはもちろん強いこだわりがありますが、もっと根元の戦略にも深く関わりたい指向があります。これがどれだけ深いかが最後の表現の強さにつながる気もします。そして必ずしも、戦略から表現へ、との一方通行でもないと思っています。両者は行き来するものだし、もしどちらかが圧倒的に強い場合は、強い方に合わせチューニングするのがいいと思う。最終的にいい結果にするのが目的なら、定型的にボーダーラインを引く必要は、ないですよね。

あとなくしたいのが、広告とそれ以外の表現活動のボーダーライン。ここにはなぜか高い垣根がある気がする。広告はもっと、他分野のクリエーターと共有すべきだと思う。その方がいいものができるし、やりたがってる人もいっぱいいます。僕は今、他分野のクリエーターを作業チームに組み込むことが多いです。これから僕も広告以外にも出ていってみたいし、逆にさまざまなクリエーターにどんどん広告世界に来てほしいですね。