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「Commerce Marketing Conference―顧客体験(CX)がブランドの価値を変える」が開催。Vol.3

2019/09/24

    7月29日、電通ホールで開催された「Commerce Marketing Conference―顧客体験(CX)がブランドの価値を変える」。今回は、その第3部の模様を紹介する。

    第3部:講演 「アフターデジタル オフラインのない時代に生き残る」

    【講演者】

    藤井 保文 氏
    株式会社ビービット
    東アジア営業責任者
    八木 克全 氏
    株式会社電通デジタル
    執行役員デジタルトランスフォーメーション部門長
     
    写真左からビービットの藤井保文氏、電通デジタルの八木克全氏。
    写真左からビービットの藤井保文氏、電通デジタルの八木克全氏。

    第3部では「アフターデジタル オフラインのない時代に生き残る」の著者のビービット東アジア営業責任者 藤井保文氏が登壇。電通デジタル 執行役員デジタルトランスフォーメーション部門長の八木克全氏と議論を繰り広げた。

    まず藤井氏から中国の最新事例として、平安(ピンヤン)保険グループの取り組みが紹介された。藤井氏によると、平安保険グループは、デジタルトランスフォーメーションを成功させた企業の代表例。通常は顧客との接点が少ない保険会社でありながら、デジタルを使った生活サービスを開発したことで、個客データの取得に成功しているという。

    同グループの取り組みの中でも、特に成功しているのは「平安グットドクター」というアプリ。現在、約2億人のユーザーが利用している。平安保険が有する医師のネットワークにアプリからアクセスでき、チャットによる無料の問診を受けることができたり、さらに診断が必要な場合には、医師の診断を予約することができるようになっている。

    さらに、ユーザーが毎日歩いた歩数をポイント化する機能も内蔵。ポイントをためると健康に関する商品に交換でき、かつ1日1回、その日歩いた歩数を登録する必要があるため、毎日必ずアプリを開くことが習慣化されているのだという。

    「平安保険ではこのアプリを営業がユーザーに対して薦めている。アプリに登録してもらえば、ユーザーのデータを取得できるので、そのデータの分析結果を基に、相手の状況に合わせた営業が可能。押し売り型の営業が不要になる」と藤井氏は説明する。そして、中国で言われている「ニューリテール」とは、オンラインとオフラインが融合されていく世界のことだと指摘する藤井氏。アリババのジャック・マー氏の「いずれECはなくなる」という発言を引き合いに出し、「これはECのEがなくなるという意味。ニューリテールが浸透する中国では、すでに顧客は自分が今オンラインにいるのかオフラインにいるのかを意識しなくなっている」と話した。

    藤井氏による中国の状況についての紹介を踏まえ、八木氏からは「日本で同様のことをしようとすると、あらゆるサービスを横断した顧客IDの統合が必要となるためハードルが高く、中国と同じ状況が起きるわけではないと思う」との見解が示された。とはいえ、中国における変化から日本企業が取り入れるべき潮流もあると主張。その一例として、藤井氏はタクシー配車アプリDiDiの事例を紹介した。

    「DiDiでベストドライバーとして評価をされている人にインタビューをしたところ、『DiDIで働き始めてから自分はよい人になった』という話を聞いた。ユーザーによるドライバーの評価が影響しているのはもちろん、運転時のデータも収集されているので、より安全で快適な運転を心がけるようになっているのではないか。さらに大切なポイントは、顧客が満足するような良いサービスをすると、ドライバーの給与が上がる仕組みができていること。ドライバーにとってのインセンティブが、ユーザーの良い体験につながる仕組みには学ぶことが多い」と話した。

    パネルディスカッションを統括して八木氏は「メーカーであっても従業員と顧客が直接つながることのできる時代になっている。それは、あらゆる事業者がサービサーになっていくことを意味している。サービサーになる上で大切なのは、DiDiのケースのように顧客と従業員が楽しく、かつ自立して動ける仕組みをつくること」と語った。

    さらに「サービサーがその仕組みを他社にも公開すると、それはプラットフォーマーになっていく」と八木氏。まずは、あらゆる事業者がサービサーになっていく世界観の中で、メーカーのコマースマーケティングを考えていく必要性を提唱した。

    次回からは「電通グループ各社のソリューション」について紹介された第4部・第5部の模様を2回に分けて紹介する。