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ゴールデン・スポーツイヤーズNo.3

スポーツで進化する社会
期待されるのは、この領域だ!

2019/09/20

国際的なスポーツイベントが日本で続々と開かれる「ゴールデン・スポーツイヤーズ」(GSYs)。その3年間は、スポーツの枠を超え、さまざまな領域の進化をもたらすと予想されています。早稲田大スポーツ科学学術院教授の間野義之氏が、イベントがもたらす波及効果を解説します。

【地域活性化】

訪れる人の反応から、

街の価値を再考するチャンス

沸き立つ日本列島
地域活性化のポイントは「人口問題」です。例えば交流人口。国内・国外からどれだけの人が地域に移動してくるか。その際、GSYsは地域を映す「鏡」、マーケティングの場になります。つまり、3年間で訪れる多数の人がどの街を選ぶか、あるいは来た街にどんな反応を示すか。それを見ることは、自分の街の価値を外の目で再考する絶好の機会になるのです。しかも外国人は、街の評価をSNSで世界に発信するインフルエンサー。下手をすれば評価を落とすリスクもあるので、各地域がきちんと準備すべきでしょう。

【教育】


3年間、全国の子どもたちに「国際理解教育」を

全国の子供たちに「国際理解教育」を
「第2の開国」に求められるのは、日本人の国際意識が高まることです。子どものうちから外国人に触れ、国際理解教育を深めていくべきでしょう。オリンピックでは、1998年の長野大会で「一校一国運動」が話題になりました。長野市内の小中学校が、各校で特定の国の歴史・文化を学び、応援するものです。優れた教育モデルとして世界に評価され、後の大会でも各国で継承。東京2020でも行われます。この運動の期間を3年に広げ、日本全国の学校で行えば、長期的かつ広範囲な国際理解教育となるのではないでしょうか。

【ダイバーシティ】

シドニー最大のレガシーは「共生社会」

共生社会
ダイバーシティー、インクルージョンは、多様な人々の共生社会を目指す上で最大のポイントです。その意味で、パラリンピックの成功が「東京2020大会全体の成功」という声も多い。とりわけ、この機会に学校教育でパラスポーツを体験することが大切だと考えます。実際にやってみると、障がい者がいかに高度な技術を駆使しているか、理解が一変する。リバース・インテグレーション(※)という考え方です。2000年のシドニーではそれがレガシーの筆頭として挙がったほどで、GSYsでも大きな成果を残せるはずです。
※逆方向の統合。健常者の中に障がい者を統合するのではなく、逆にパラスポーツを健常者も一緒に行う考え方。

【生涯スポーツ】

「見る」から「する」へ。

スポーツ実施率の向上を

生涯スポーツ

健康寿命を伸ばすため、国民のスポーツ実施率向上が求められます。過去のオリンピックの統計を見ると、実は開催だけでは実施率は大きく上がりません。しかし、今回は“するスポーツ”の祭典が翌年に控えます。「見る」から「する」につなげることで、スポーツに親しむ人を増やすチャンス。また、近年はVRを使って多くの人が楽しめる「H A DO」や、年齢・性別・運動神経にかかわらず楽しめて弱者を生みにくい「ゆるスポーツ」も出ています。生涯スポーツと相性の良いこれらも活用すると広がりが生まれるでしょう。

チャンスは他にも。22年以降の「未来へつながるレガシー」を

レガシーは“自国に残す有形のもの”を想像しがちですが、“他国に残す無形のレガシー”も大切。例えばオリンピックでは、約70の国・地域が通算メダル数ゼロです。しかし、たとえメダル争いに加わらない国でも、心から歓迎・応援すれば“親日”につながるでしょう。それはインバウンドとして、国の関係性として、大会以降も続くレガシーになります。
一方、日本で残すべきはヒューマンレガシーです。各分野において、この3年を契機に人材を育成する。またとない機会に、未来の担い手を育ててほしいと思います。