カンパニーデザインNo.1
社員の「現場力」で、会社を変える
2019/10/21
ここ数年、経営トップ層の方々にお会いしていると、働き方改革、労働力不足、ミレニアル世代の働く意識変化など、ヒトにまつわる悩みに耳を傾けることが多くなりました。さらに、事業再編、イノベーション、利益拡大も同時に求められ、その悩みは根深いものです。人事制度や待遇の見直し、研修強化など様々な施策を講じても、それらを同時には解決できず、悩みは尽きないといいます。
ヒトと事業の問題は、表裏一体なはず
「ヒトの問題と事業の問題は、本来ならば表裏一体なはずだ。会社にとって、ヒトは究極の財産であり、すべての源泉である。ならば、ヒト(社員)をモチベートし、能力や知恵を最大化する仕組みや仕掛けをつくれないだろうか。そして、それをブランディングや事業に活かせられないだろうか」
多くの会社が抱えている悩みに何度も耳を傾けているうちに、こうした想いを抱くようになりました。そうした折、ある会社の若手エンジニアの方々と仕事をする機会があり、彼らが仕事の傍ら、自主的な研究活動を行っていることを知りました。しかも、それを大いに面白がっています。好奇心も、熱意も、遊び心も半端じゃありません。活動内容はもちろん、その想いや姿勢に強く共感しました。
答えは会社の中、それも現場にある
会社の先端に埋もれていた、現場社員の試み。世の中の人たちは、もちろん知る由もないし、社内にもほとんど知られていない。しかし、これはものづくりを生業として立ち上がった、この会社のDNAが、今もなお現場に息づいている証しであると感じました。そこで、自主研究活動のまま終わらせず、会社が製品化を目指す挑戦をサポートし、その姿を社内外に発信したらどうだろう、という発想を持ちました。
本人はもちろん、まわりの社員のモチベーションにも影響を与えられる。製品化が成功すれば、イノベーションを起こせるかもしれないし、事業に貢献できるかもしれない。発信を受け取った人たちから共感が得られれば、ブランディングにも、リクルーティングにも寄与できる。そう考えたのです。
こうして1年間に渡り、若手エンジニアにスポットライトを当て、世の中へ発信するプロジェクトに携わりました。プロトタイプは完成したものの、製品化までには至りませんでしたが、同様な自主研究活動をしている多くの社内エンジニアに勇気を与え、社外からも良質な反響を得る結果となりました。答えはその会社の中、それも現場にあったというわけです。
カンパニーは会社のことであり、「仲間」も意味する
この取り組みを通じて、こんな仮説に至ったのです。
「現場に埋もれている会社の潜在価値を発掘し、社員ひとり一人の能力や知恵を発揮するためのアクティビティー(制度や仕組み、仕掛け、場など)を創り出す。さらにその価値を発信・展開することで、会社のオリジナリティーに結びつけていくスキームを構築する」
そして、それを「カンパニーデザイン」と名づけました。カンパニーには会社という意味だけでなく、「仲間」という意味もあります。前述の仮説にもあるように、会社の仲間(社員)をデザインし、「社員の現場力で、会社を変える」お手伝いができればという想いを込めました。同時に、電通内のクリエーターやプランナーに声をかけ、組織を横断したチームを編成し、活動中です。
学びと実践を重ねて、スキームに磨きをかける
活動は大きく2つあります。まずは、この仮説を検証するために、チームメンバーがカンパニーデザイン的な取り組みをすでに行っている経営トップ層の方々を訪ねて、その秘訣を教えていただいています。このレポートは、ウェブ電通報で、11月下旬からスタートの新連載「なぜか元気な会社のヒミツ」で順次公開していく予定です。
もう1つは、具体的な実践に取り組んでいます。こちらも、公開できる活動事例が1つできました。静岡県にある中古車買取・販売会社「オートベル」が実施している「一人一芸プロジェクト」です。お客さまへの接客サービスに活かせる「一芸」の習得に会社が全面サポートする取り組みが、多角的な課題解決を実現させたとして、2019年度のグッドデザイン賞にも選出していただきました。