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カンパニーデザインNo.2

おばちゃんの「おせっかい」、会社を救う

2019/10/31

東田ドライという会社をご存じでしょうか?
兵庫県西脇市を拠点に、5店舗を構える町のクリーニング屋さんです。創業から60年たつ老舗ですが、もう一つの顔を持っています。オンラインサービスの宅配クリーニング「リビナス」を立ち上げ、開始からわずか5年で、競合ひしめく市場において、売り上げ2位に躍り出た、知る人ぞ知る注目の会社。それが東田ドライなのです。

宅配クリーニング「リビナス」。詳しくは、こちらまで。
 

社内の当たり前が、会社の貴重な価値に

 

東田ドライの「おせっかい」作業風景
東田ドライの「おせっかい」作業風景

この会社との出合いは、昨年6月に放送されたテレビ番組「カンブリア宮殿」(テレビ東京系列)でした。職人のおばちゃんの「おせっかい」を売りに、大躍進を遂げているさまが特集されていたのです。頼んでもいないのに、預かった衣類の気になる箇所を修繕して、一番いい状態に戻してくれる。それもすべて無料で。「ほつれ修繕」「シミ抜き」「ボタンの取り付け」など、かゆいところにまで手が届く、そんな職人のおばちゃんのおせっかいで、宅配クリーニングを始める前から、町の人たちに愛される存在となっていました。

社内ではそれが当たり前になっていたため、特段それを売りにしてはいませんでした。ですが、宅配クリーニングの主要市場を都市圏と捉えたとき、それはお客さんにとって貴重な価値であり、最大の差別性(=自社の強み)になるのでは、と思い立ち、前面に掲げたところ注文が殺到したのです。大切にしている衣類、特に高級価格帯のものを、丁寧に扱ってもらえる職人に預けたいというニーズに見事にマッチしました。現場社員の知恵や工夫、自主活動に着目して、新規事業の根幹に据えたことで成功を導き出した好事例といえます。
(11月下旬からスタートするウェブ電通報・新連載「なぜか元気な会社のヒミツ」で、東田ドライの東田伸哉社長のインタビューレポートを公開予定)
 

「カンパニーデザイン」の四つのステップ
 

カンパニーデザインのロゴ

東田ドライの事例は、本連載で前回ご紹介した「カンパニーデザイン」と同様な発想です。こうした取り組みが実際に成功へとつながることを知り、カンパニーデザインチームの活動に確信と勢いを与えるものとなりました。
それでは、改めて「カンパニーデザイン」とは、
「現場に埋もれている会社の潜在価値を発掘し、社員一人一人の能力や知恵を最大限に発揮するためのアクティビティー(=制度や仕組み、仕掛け、場など)を創り出し、発信・展開することで、会社のオリジナリティーに結びつける、電通のオリジナルスキーム」のことです。(詳しくは、こちらまで。)
具体的には、以下の四つのステップで構成されます。

カンパニーデザインの4つのステップ
カンパニーデザインの四つのステップ
 

STEP1
会社の潜在価値である「現場社員の知恵や工夫、自主活動」の発掘

現場には、さまざまな社員の知恵や工夫、自主活動が内在しています。実はそれが会社のDNAやビジョンに根差したものであることも少なくありません。しかし、それらの活動は現場だけで完結してしまっており、会社の上層部からは見えていない場合も多くあります。そんな現場社員が行っている「会社の潜在価値」を第三者目線で発掘します。

STEP2
現場社員を巻き込む「アクティビティー」を設計・実行

発掘した潜在価値をもとに、その会社オリジナルのアクティビティー(=制度や仕組み、仕掛け、場など)を企画設計します。先々のブランディングやコミュニケーションに活用する観点から逆算し、電通ならではのクリエーティブ力で社会的に価値の高い形に仕立てます。全社的な取り組みとして広がっていくよう、実行のサポートも可能です。

STEP3
アクティビティーを「ブランディングやコミュニケーション」に活用

アクティビティーを実行すると同時に、そのプロセスをコンテンツ化します。世の中へ伝わるように表現・編集し、広告やPR、SNS、ウェブムービー、社内ツールなど、ブランディングやコミュニケーションに活用していきます。アクティビティーを、社内にとどめることなく可視化・発信することで、会社のオリジナリティーとして確立させます。

STEP4
イノベーションを加速させる、新たな「事業」開発の協働

現場社員を起点としたアクティビティーから新たな事業や商品・サービスを生み出し、イノベーションが加速されることで、会社のオリジナリティーはさらに強固なものに育つと考えています。アクティビティーをブランディングやコミュニケーションで終わらせず、その最終ゴールまで、パートナーとして協働することを目指しています。
 

元気な会社が、日本中に次から次へと現れる

冒頭にご紹介した「東田ドライ」同様、カンパニーデザインのコンセプトとスキームを構想する上で参考にさせていただいたのが「タニタ食堂」の事例です。タニタは谷田千里・現社長が就任されてから、会社の存在意義を「健康をはかる」から「健康をつくる」へと再定義しました。従来から社員の健康を考え、社員食堂で当たり前のように提供されていたヘルスメニューに着目し、それを書籍化し、広報として活用したのです。レシピ本としては異例のシリーズ累計500万部を突破し、それが引き金になり「タニタ食堂」としてレストランを展開し、飲食サービス業に新規参入を果たしました。

昨今も「タニタの働き方改革」(日本経済新聞出版社)が出版され、話題となっているように、タニタは社員の働きがいやモチベーションを上げる施策を次々に打ち出しています。現場社員を起点としたアクティビティーを発信し、ブランディングや事業に生かしていく取り組みは、カンパニーデザインチームが理想とするものです。

社員が生き生きと働き、お客さんにも喜んでもらって、社会にも貢献する。もちろん事業も成長する。そんな元気な会社が、日本中に次から次へと現れていく。そこにカンパニーデザインが一手法として使われるようになったら…チームメンバーの思いは大きく広がっています。

(#03へ続く)

カンパニーデザインチーム差し替えフォト
カンパニーデザインチーム

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