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ブロックチェーンで起きるビジネスモデルの変化とは?

b.tokyo2019レポートNo.1

2019/11/08

ブロックチェーンで起きるビジネスモデルの変化とは?

日本最大級のブロックチェーンカンファレンス「b.tokyo2019」が10月2、3の両日、ホテル雅叙園東京で開催された。

「情報のインフラ」であるインターネットによって、あらゆる業界のビジネスモデルは大きく変化した。では「価値のインフラ」といわれるブロックチェーンの登場によって、ビジネスモデルはどう変わるのか。

この問いに答えるべく、ブロックチェーン研究開発企業SIVIRA(シビラ)CEOの藤井隆嗣氏と電通イノベーションイニシアティブ・プロデューサーの鈴木淳一氏が登壇。近年の若者の消費行動の変化を分析し、企業が取るべきマーケティング戦略について解説した。

btokyo鈴木氏と藤井氏
SIVIRA(シビラ)CEOの藤井隆嗣氏(右)、電通の鈴木淳一氏(左)

若者へのマーケティングは信頼されることが重要

仮想通貨のビットコインを支える基盤技術として登場したブロックチェーンは、鈴木氏いわく「主に若年層をターゲットにしたテクノロジー」なのだという。「若年層に従来のやり方は通用しない」と前置きした上で、「ものが売れない時代になったのは、“そもそもスマホで事足りる”というリアル離れが根本の原因にある」と指摘する。

また鈴木氏は、若年層の15%がテレビを持っておらず、4人に1人がスマホでテレビを見ていると回答しており、この傾向は年々拡大しているという調査データを紹介。さらに、SNSが暮らしに必要という人の割合は10代、20代が飛び抜けて高く、若年層にとってSNSは自身の行動に影響を与える大きな存在になっていることも示した。

「自分で考えるよりも、信頼できるインフルエンサーに従うのが現代の若年層の特徴」と言う鈴木氏。若者にとって、信頼できるサービスとは「信頼できる人が勧めたサービス」であり、同じ価値観を持つ信頼できる人と“依存契約”することで、“考えずに生きていく”時代になりつつあるという。

「金銭的な損得で判断できない哲学や価値観に関わること、例えばキャリアプランや恋愛の意思決定などについては、同じ価値観の人にお金を払ってでも頼りたいという時代になっています。若年層にとっては、有名人に限らず、一般人であったとしても、自分と価値観が合えば、インフルエンサーとして、十分に信頼の対象になるということが社会の変化として見えてきた」と鈴木氏。企業が若年層向けのマーケティング戦略を考える上では、“信頼されること”が何より重要といえる。

鈴木淳一氏

信頼されるために必要なのは、共感できる哲学

企業が消費者に信頼されるためには、“共感できる哲学”が必要だ。例えば、スターバックスは従業員の学費補助やコーヒー豆の適正な価格での仕入れのために、消費者であるファンに負担を求め、それによって近くのカフェではなく遠くのスタバに足を運ぶ消費者も出てきている。消費者は商品ではなく哲学を買う時代なのだ。

鈴木氏は「スタバはユーザーをナーチャリング(育成)しているといえる」とし、「企業が消費者と長期的な関係性を築くためには、サービスを信頼してくれるファン同士のコミュニティーを強化していく『ユーザーナーチャリング』という発想が鍵になる」と説明した。

これは“ファンのDAO化”ともいえるという。DAO(自律分散型組織)とは、中央管理者が不在でも自律的に機能する新しい組織のことだ。

「スタバではファンがファンを呼んでくることもよく見られますが、スタバが率先してファン組織を動かしているのではなく、あくまで有志の自発的な行動の結果です。そうしたファンがコミットできることに喜びを感じるような組織がDAOであり、ユーザーナーチャリングとDAOは相性がいいんです」(鈴木氏)

SIVIRAの藤井CEOは、「ユーザーナーチャリング×DAO」という視点で考えると、三つの形態に分類されると解説した。

DAOの3形態
●コンシューマーDAO
企業の思想に共感するユーザーがファンコミュニティーを形成。ユーザーが自律的に商品をPRしたり商品を売ったりして企業に貢献することで、企業とユーザーの関係性が変わること。社員とファンの境界線も曖昧になっていく。

●エンタープライズDAO
1社では影響力がないが、複数社が協力し共同体を構築することで、単体では提供できない価値を提供できるようになること。分かりやすい事例として、温泉地や観光地が挙げられる。企業も観光地のように顧客を共有したり一部のリソースを共有したりダイナミックな連携や共同体が増えていく。

●ガバメントDAO
行政基盤を他国と簡単に共有することができるようになり、地理的な制約が外れて国や都市が再定義されていくこと。世界各国に仮想国民を持ち、仮想国民の人口が自国民を超えたエストニアが先行事例。過疎化が進む地方自治体にこのモデルを導入することで、地方創生につながる可能性も。

藤井氏は、「ブロックチェーンはDAO。例えばビットコインには運営主体がないにもかかわらず、ビットコインというプロダクトが成り立っている。ブロックチェーンは世界のDAO化を加速していく」と述べた。

SIVIRA藤井氏

ブロックチェーンで実現する新たな報酬獲得システム

では、ブロックチェーンによって実際にビジネスモデルはどう変化しているのか。ゲーム業界では、ブロックチェーンの技術を生かした作品も登場してきている。

「キャラクターやアイテムは仮想通貨(トークン)で作成されており、ゲームアイテムが流通するたびに、原著作者であるゲーム会社がスマートコントラクト(あらゆる契約行動をプログラム化し、自動で実行できるようにすること)で著作権料を自動徴収することも簡単にできます。これは中古市場がどんなに盛り上がっても原著作者は苦しくなっていくだけ、という現在の仕組みの改善にもつながります」(藤井氏)

ブロックチェーンの技術を用いたSNS「Steemit」では、コンテンツの価値や影響度を自動測定し、優れたコンテンツを投稿した人やそれを発掘し、評価した人にブロックチェーンからトークンが支払われるという新たな仕組みを採用している。「広告収益モデルに頼らず、より良いコンテンツが評価され、報酬が得られるシステムになっている」と藤井氏。

ブロックチェーン技術の社会実装に挑む

続いて両者は、電通とSIVIRAが4年前から共同で取り組んできたブロックチェーン技術の社会実装に向けたPoC(概念実証)の事例を紹介。

農家、物流、レストランをブロックチェーンでつなぎ、食材のトレーサビリティーを実現するための実験を行い、エシカル(倫理的)な消費を明確化することで、購買行動の変化を測定できたという。また、SDGsに貢献しているワインや食材を食した人に、貢献度合いに応じて報酬が支払われる仕組みを試したことも報告した。

2社による実験フェーズは終了し、これからはいよいよ社会実装に入る。鈴木氏は最後に、ファンコミュニティーを形成するユーザーナーチャリング、1次からN次へとコンテンツの継承が進む時代のマネタイズ事業という二つの視点で実装を進めていくとし、「興味が湧いた方はぜひ一緒にやりましょう」と観客に呼びかけた。