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AI MIRAIが考える、ちょっと先のAIとシゴトNo.8

AIで地方創生!福井で見つけたイノベーションの可能性

2019/11/12

こんにちは、電通のAIプロジェクトを推進するAI MIRAIの児玉です。

突然ですが、「AIで地方創生」と言われて、イメージは湧きますか?

いまだニュースをにぎわすAIですが、まだ一部の大企業が少しずつ使い始めているもの、というイメージがあるのではないでしょうか。しかし、AIの可能性は地方にも、いや、地方にこそ眠っていると、私は考えています。また、AIの導入を後押しするべく、政府や地方自治体の補助金制度も整備されてきました。

今回は、福井県で今年7~9月に行われたイベントを紹介しながら、AI×地方創生の可能性を探っていきます。

福井発!地元企業とAI活用を協創する「THINK AI」

福井県の県紙である「福井新聞」は、今年創刊120周年を迎えました。新聞を発行するだけでなく、地元企業のハブとして地域経済を支える福井新聞社が周年事業の一環として主催したのが、この「THINK AI」という企画でした。

「THINK AI」は、周年紙面の企画であると同時に、AI活用の第一歩を見つけるための全3回のワークショップという複合的なプロジェクトになっています。

THINK AIロゴTHINK AIサイト:https://think-ai.jp/

THINK AIワークショップの流れ

AI×地方創生がアツい三つの理由

どうしていま、AI×地方創生なのでしょうか。AI MIRAIが注目している理由を、以下のトレンドにより説明します。

① 加速する「AIの民主化」
数年前までは、高額な投資、あるいは優秀なエンジニアがいて、はじめて取り組めたAI活用ですが、昨今は初歩的な知識だけで取り扱えるAIのソリューションが開発され、流通しています。これにより、小規模の企業でも、少額の投資からAI活用が始められるようになりました。

②「非定型データ」の活用推進
AIは、今までデータとして取り扱えなかった自然言語や画像などの「非定型データ」を取り扱うことができる技術です。地域を支える第1次産業や、データ化されていない小規模のビジネスにはそういった非定型データが多く眠っており、AIによるブレークスルーが起こりやすいといえます。

③ 働き手不足の深刻化
都市部以上に、地方では少子高齢化に伴う働き手の減少は深刻化しています。熟練のノウハウをテクノロジーに学習させ、生産性を向上することが、事業存続上も急務となっています。

しかし、地方企業にとって、先端テクノロジーに触れる機会は都市部ほど多くありません。AIに関する一般的な知識はあっても、それをどう自分のビジネスに生かすのか、実践的なノウハウはほとんどないといえます。その情報ギャップを埋めることが、AIによる地域活性化の第一歩です。

「THINK AI」は、テクノロジーではなく課題から考える

では、実際にどのようなワークショップになったのか、内容の詳細や体験した方の様子を紹介します。

福井新聞社本社のホールに集まったのは地元企業10社。福井銀行のような大きな企業もあれば、精米会社やクリーニング店、美容室チェーンなども。地域性を反映した企業が集まりました。

福井新聞社本社と当日のアジェンダ
福井新聞社本社(左)と当日のアジェンダ

講義やワークショップの企画は、AI MIRAIと、日本最大のAI専門ウェブメディア「Ledge.ai」を運営する株式会社レッジが共同で行いました。

単にAIについての知識をインプットするだけではなく、自社ですぐに活用するための実践的なノウハウについて学べる構成となっているのがユニークです。大手企業であっても、「AIを使う」自体が目的化してしまうという失敗が見られる昨今。それを避けるため、まずは自社の課題を絞り込んで、課題とAIを結び付けて考えるというステップを踏みました。

当日は、レッジとAI MIRAIのメンバーが講師として福井を訪れ、地元企業とFace to Faceで対話しながら理解を深めていきました。

Day1 AIテクノロジーの概観と、自社の課題の発見ワークショップ

7月。ほとんどAIについて知識がないままに集まった地元企業の皆さん。前半は座学形式でAIテクノロジーについて基礎的な理解をした後、後半は「自社の課題を見つける」という、一見AIに関係ないワークを行いました。

「最初はついていけるか不安だったけれど、事例をたくさん紹介されて面白かった」
「まずは自社の課題に向き合うというのが新鮮だった」

と、AIに対する警戒(?)が解け、AI導入で一番大切な「課題と目標の設定」に取り組むことができました。

Ledge.ai編集長の飯野希氏
講師として登壇されたLedge.ai編集長の飯野希氏  写真提供:福井新聞社
THINK AI 福井新聞の記事
第1回の様子は福井新聞の記事になりました。

Day2 AIソリューションに実際に触れてみるハンズオン研修

8月に行われた第2回のワークでは、ソニーの「Prediction One」という、プログラミングなしで予測分析ができるAIソリューションを使って、お弁当の販売数やアボカドの価格などサンプルデータの予測をしました。

「まさか自分でできると思っていなかったので、簡単さに驚いた」
「後日に早速業務でも導入し、いろいろなデータを入れて予測しています」
という驚きの声が印象的でした。AIの民主化を実感した瞬間です。

ハンズオン研修の模様
講師のサポートもあり、ハンズオン研修も盛り上がりました。写真提供:福井新聞社

この日の最後には、Day1で見つけた自社の課題に対し、どのようなテクノロジーで、どういう解決策を探るかというプロジェクト設計のワークを行いました。

単なる「システムの開発プロジェクト」ではなく、それをビジネスに確実に生かすため、何を目標とするか・誰とどんなステップで進めるかなど、必要となる項目をすべて埋められるように設計されています。

Day3 プロジェクト設計図の発表と講師によるフィードバック

9月の最終日は、Day2から宿題となっていたAIプロジェクトの設計について、グループに分かれて発表を行いました。正直、どんなものかなとドキドキしていたのですが…そのクオリティーの高さに講師一同、驚きました!

一例を挙げると、ベテランが勘と経験で行っている、「営業ルートの策定」や「商品の仕分け」を自動化するというアイデアを軸に置きながら、それに伴う組織や業務の変革、お客さま満足度の向上など、テクノロジーに限らない広い視点でプロジェクト設計ができていました。

AIの強み弱みをきちんと捉え、実現性があるだけでなく、現場視点・課題視点に基づき、ビジネスにも大きなインパクトを与える珠玉のアイデアがたくさん生まれました。

発表に向けて最後のセッション
発表に向けて最後のセッション。講師からのフィードバックを受け、イメージが具体化してきました。
参加企業の発表
参加企業からの発表は、とても堂々としていました。

その後、「AI TALK NIGHT in FUKUI」というネットワーキングイベントが開催され、今回のイベント出席者のみならず、多数の方が交流を深めました。AI MIRAIの福田も登壇してAI×地方創生の可能性についてディスカッションし、3カ月にわたる「THINK AI」は幕を下ろしました。

イベントが終わった後も、
「さっそく上司に上申するため、社内で勉強会を行います!」
「1年後に同窓会をやって、進捗を皆で確認しましょう!」
などの会話が響き、皆さん前向きな意識を持ち帰っていただけたようです。

今回出たアイデアが一つでも多く、実際に活用されることを願います。AI×地方創生のうねりが、福井から日本中、世界中にひろがっていく日も遠くないですね。

(その後の懇親会も盛り上がり、AIトークを繰り広げながら、福井の夜は更けていきました…)

AIが地方を救う

今回のイベントを通して、講師としても強い手応えを感じました。

・テクノロジーの基礎的な知識とモチベーションがあれば、どんな企業でもAI活用に取り組めるということ

・地方や、小さな企業だからこそ、AI活用のユニークなアイデアを発見できること

・そして何より、地方の企業にも強い課題意識があり、このようなプロジェクトを通して大きく変革の進む可能性があること

世界の中でも類を見ないほど高齢化が進み、「課題先進国」と呼ばれる日本。だからこそ、テクノロジーによる地方創生モデルを一刻も早く確立することは急務であるだけでなく、それが世界中で応用されれば、日本の競争力にもなるのではないでしょうか。

AI×地方創生、これからアツいですよ!