会議をスポーツ化するAI「ブレスポ会議室」
2019/09/09
多くの時間を費やしがちな会議。オリエンからプレゼンまでさまざまな会議がありますが、特に時間を要するのは、アイデアを出すための会議です。良いアイデアが出ずに気まずい沈黙の時間が流れ、次回また集まることに…。そんな経験がある方も多いのではないでしょうか。
そこで私たちは、AIの技術を使って、会議を活性化できないかと考えました。ブレインストーミング・スポーツ。略して「ブレスポ」。
今回は電通のAIを活用した取り組みの一つ「ブレスポ会議室」を紹介します。
ゲーミフィケーションで参加者をポジティブに
会議にAIを導入する取り組みは既に数多く存在していますが、そのどれもが「効率化」に主眼を置いています。しかし、効率化するだけでは、なかなか人は動きません。そのため、私たちは、会議に対する人々の考えを根底から覆すために、ゲーミフィケーションの概念を取り入れました。
開発したいのは、「アイデアを生み出すための会議」を活性化するサービスです。AIでアイデアの発想を支援することを考えると、何らかの思考フレームワークをハックするのが近道です。これまでに「KJ法」や「デザイン・シンキング」など、さまざまなアイデア思考のフレームワークや手法が開発されてきました。
それらを検証していく中で、質より量を重視し、自由に発言することをコンセプトにしている「ブレインストーミング」、いわゆる「ブレスト」が、AIと相性が良さそうだと分かりました。そこから具体的なイメージに落としていき、ピラミッドフィルムクアドラ社と共同開発したのが、「ブレスポ会議室」です。
ブレスト参加者の発言を音声認識でリアルタイムに可視化し、自然言語処理によって会議への貢献度をスコア化。まるでテニスや卓球のように発言ラリーの応酬を楽しみながら、会議をすることができます。
発言のポジティブ度をAIが判定!ブレスポ会議室の遊び方
① 参加者はまず、ヘッドセットを装着し、席に着きます。
② アイデアを出したいお題を選択し、参加者全員の「お願いします」という掛け声で会議がスタート。
③ アイデアを思いついた人は「ブレスポ!」と発言すると発言権をゲット。それに続けて自分のアイデアをしゃべると、その内容が音声認識によって画面に映し出されます。
④ 他のプレーヤーはそのアイデアについて自分の考えを返します。するとブレスポ会議室のAIは、その返答がポジティブかネガティブかを判定し、前者であればアイデアに加点します。逆に、ネガティブな場合は、ブレストの「相手を否定しない」という考えにのっとり、ネガティブな反応をしたプレーヤーの得点を減点します。
制限時間内にアイデアの得点を集計。多くのアイデアを発言し、高い得点を得られたプレーヤーの勝利となります。発言されたアイデアはデータとして残り、議事録として持ち帰ることができます。
ブレスポ会議室の中心となっている仕組みは、AIによる音声認識とテキストマイニングです。テキストマイニングとは、発言内容を解析するシステムのこと。
現在の音声認識技術は、iPhoneに搭載されているSiriをはじめ、既に実用レベルに達しています。今や、さまざまなIT企業が音声認識APIを提供しており、ブレスポ会議室もそれらを活用。また、今回は参加者に個別のヘッドセットを装着してもらうことで、話者が誰かを特定できるようにしました。
テキストマイニングについては、会議中に出てきそうなフレーズを大量に用意し、それらがポジティブかネガティブかラベリングしたデータを学習させて、スコア判定に用いています。
今後は、BERT(※)など最新の自然言語処理アルゴリズムを使い、これまでに出ていない単語が入った発言をした人はポイントが高い、といった自動判定システムの導入も検討しています。
※BERT
GoogleのAIチームが開発した、ディープラーニングを使った自然言語処理の最新モデル
さらに、会議中にAIがアイデア提案をアシストするようなこともできるかもしれません。例えば、広告のアイデア出しの会議では、事前に広告賞の受賞作を学習させておけば「こんな要素を掛け合わせたら新しいアイデアになるのでは?」とAIが話しかけてくるイメージです。
実際にブレスポを体験した人からは、「メモを取らなくてよいので楽」「会議をカジュアルにするという発想が面白い」とポジティブな意見を多く頂くことができました。
社会的にAIを活用した取り組みが増えていく中、参加者をポジティブに変容させるというブレスポのコンセプトは、電通らしいAI活用の指針になると思います。ブレスポ会議室に興味を持った方は、お気軽に問い合わせください。
AI MIRAI公式サイト:https://aimirai.ai