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AI MIRAIが考える、ちょっと先のAIとシゴトNo.6

電通AI MIRAIの活動を紹介!非エンジニアによる人工知能学会レポート

2019/07/30

エントランス

2019年6月4〜7日に新潟市で「第33回人工知能学会全国大会 」(JSAI2019)が開催されました。電通としては、2度目の協賛となる今回、昨年に続きブース出展し、電通AIプロジェクトAI MIRAIの活動を紹介しました。

人工知能学会は、人工知能領域では日本最大級の学会。今回の参加者は学会史上過去最多の3000人に迫り、会場は多くの人の熱気に包まれていました。事前参加登録も前倒しで打ち切られるほどだったそうです。

論文発表は800本を超え、スポンサーも過去最高の90社となり、いまだ衰えぬAIブームを肌で感じる4日間となりました。今回、初参加となるAI MIRAIの渡邊はるかが、電通の取り組みと学会の様子をレポートします。

会場

電通らしいAI活用法を紹介

電通は2018年に続き、今回もプラチナスポンサーとして、ブース出展、インダストリアルセッションとランチョンセミナーで発表。また、今回は初めて論文も発表しました(電通グループでは計4本の論文を発表)。

共に参加した電通グループの電通デジタル、電通国際情報サービス、データアーティストのメンバーとも情報交換をしながら、グループとしてのプレゼンス向上、知見収集に努めました。

ブース出展では誰でも楽しめる展示を用意。その名も「2枚目の名刺メーカー」です。名前(あだ名OK)と趣味・特技を元に、電通が開発したAIコピーライターのAICOが8種類の新しい肩書を生成、その場で名刺印刷ができるというものです。名刺の裏の色は、カメラで認識した「幸せ」「驚き」など顔の表情を元に決まります。

電通ブース
AIコピーライターAICOの「2枚目の名刺メーカー」(電通ブース)
名刺
2枚目の名刺 表面(左)裏面(右)
イラスト
(イラスト:渡邊はるか)

「え、こんな趣味があったの!」「この肩書ウケる!」などと、ブースへ来た方同士のコミュニケーションを促進。電通らしいAIの活用法を実感できる展示となりました。

インダストリアルセッションでは、昨年からのアップデートを中心に、電通のAIへの取り組みについて具体的に紹介しました。

・人工知能が広告コピーを生成するAIコピーライターのAICO
・テレビの視聴率を予測するAIのSHAREST
・テレビやSNSで流行しそうなキーワードを予測するTREND SENSOR
・画像認識で対象に合わせて目的地へ案内する投影型のナビゲーションシステムiO
・企業の顧客対応を自動化・高度化するチャットボットのKiku-Hana
・自動バナー生成&クリック率予測システムのADVANCED CREATIVE MAKER
・画像や動画のウェブ広告効果を事前に予測してくれるMONALISA

一覧

ランチョンセミナーでは「マスメディア×AIの未来」というテーマで、テレビ東京の石田淳人氏、日本経済新聞社の谷口泰隆氏と、電通AI MIRAI代表の児玉拓也氏で、トークセッションを実施。

テレビ東京では50年分以上のテレビ放送内容のメタデータ化、日本経済新聞社は(AIを活用して)過去100年に発行した新聞紙面の画像をデータ化したり、編集局の校閲業務を省力化したりする取り組みを進めており、いかにマスメディアの保有する「非定型データ」という宝の山を活用していくかという話題が中心となりました。

他の研究やイベントではあまり目にすることのない「マスメディア」という切り口に、100人以上の方に参加いただき、盛況でした。

ランチョンセミナー
「マスメディア×AIの未来」ランチョンセミナーの模様

また、電通データ・テクノロジー・センターの福田宏幸氏が、「キーワード条件つき変分Autoencoderによる広告文生成」をテーマにした論文を発表。従来よりバリエーションに富み、広告の目的にも合致する広告文を自動生成する手法を提案しました。興味のある方はぜひ論文を読んでみてください。

非エンジニアが参加して分かった、六つのこと

今回、人工知能学会に初めて参加した非エンジニアの私が印象深かったのは、下記の六つのポイントでした。

1. 各産業でのAI活用の広がり
人工知能のあらゆる分野をカバーする人工知能学会。同じ分野ごとに論文数本をまとめて発表するセッション形式で、その数は4日間で180セッション。技術でまとめたセッションに加え、「農業」「医療」「教育」など、産業でまとめたセッションも数多くあり、AI活用範囲の広がりを感じました。

非エンジニアの私でも興味のあるテーマで最新の研究や技術を網羅的に知ることができ、プログラムを眺めるだけでも、AIの潮流をつかむことができました。

2. ビジネス活用の発展が顕著
他の専門学会に比べ、企業の参加や、アカデミアと企業の共同研究が目立ちました。他のメンバーによると、昨年に比べてもさらに企業の参加が活発化しているそうです。

3. “AIの民主化”を推進するビジネスが増加
過去最高のスポンサー数ということで、企業展示エリアもにぎわっていました。印象的だったのは、顧客獲得やR&Dを目的に自社のAI技術を紹介する企業に加え、「一般ユーザーが簡単に機械学習できるプラットフォームを作る」企業や、「AIや機械学習を学べる講座を提供する」企業が目立ってきたことです。「AIの民主化」が叫ばれる中、周辺領域でのビジネスも多様化、汎用化していると感じました。

4. AIの信頼性や倫理を問う議論も盛ん
AIの信頼性や倫理をテーマにしたセッション・論文が散見されたことも、印象的でした。医療や自動車、政治など、人間の命や権利に触れる分野へのAI活用の広がりを受け、世界で「人間中心のAI社会原則」に基づいたルールづくりが急速に進んでいます。ここ人工知能学会でも、社会における人工知能のあり方について、関心が高まっていることを感じました。

5.  国際的なプレゼンス向上に向けた動き
今回初の取り組みとして国際セッション(国内の論文を英語で発表する)も設けられていました。アメリカや中国の大躍進に対し、日本のAI研究のプレゼンスを高めるためとのことです。80本の論文が発表され、会場もにぎわっていました。

6. 研究者と学生、企業の産学連携の場としての役割
公式の参加者交流会に加え、新潟市街の各地で大小さまざまな懇親会が行われ、研究や企業の枠を超えた交流の場となっていたようです。ある教授が「アカデミックの中でさえ、研究分野をまたぐ交流はまだまだ少ない。このような場が増えるとよい」とお話しされていたのが印象的でした。新潟での縁をきっかけに、これからますます共同研究や共同開発が増えそうです。

いずれも、単にブームに乗ってAI活用が広がるだけでなく、その内容や質も少しずつ変化していることが分かりました。

AIの発展には、アカデミアと企業の連携が不可欠

今回の発表の中で個人的に気になったのは、創作×AIの領域です。あるセッションでは”人がものを作る過程”を工学的に明らかにするべく、AIによる創作支援システムや、漫画のセリフの感情識別、四コマ漫画分析、トーン貼りの自動化など、ストーリーづくりから作画まで各段階で研究が進んでいると知りました。

現場の視点としてアニメプロデューサーや漫画家の発表もあり、漫画・創作好きとして非常に興味深く聴講しました。

人の心を動かすCMなどのマーケティングコミュニケーションに力を入れてきた電通でも、ヒントになること、協業できることがあるかもしれません。

今回は、電通としてさまざまな発表の機会を設け、その後いくつも問い合わせを頂くなど、実りのある学会参加となりました。全国大会自体は、よりビジネス的な側面、アカデミアと企業のマッチングの場に近づき、専門的な学会とのすみ分けが進んでいます。今後も専門的な学会と併せてウォッチしていきたいと思います。

また、AIの発展には「アルゴリズム」だけでなく「大量の良質なデータ」が必要不可欠です。アルゴリズムの発展に加え、リアルなデータを保有する民間企業との適切な連携が今後ますます重要になるでしょう。電通も、ときにデータを保有するプレーヤーとして、ときにユーザー企業と学術研究を結ぶオーガナイザーとして、アイデアや推進力を生かして、AIビジネスに取り組んでいきたいと思います。

AI MIRAI公式サイト:https://aimirai.ai