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広告効果最大化に向け、140ターゲットの視聴率を予測する「SHAREST」

AI MIRAIが考える、ちょっと先のAIとシゴトNo.5

2019/01/17

広告効果最大化に向け、140ターゲットの視聴率を予測する「SHAREST」

現在、人工知能(AI)を用いて将来のテレビ視聴率を高精度に予測する「SHAREST」(シェアレスト)というシステムの開発を行っています。今回は、この開発プロジェクトについて、ラジオテレビビジネスプロデュース局の岸本渉から紹介します。

■未来の視聴率が予測できるってホント?

現在、私たちを取り巻くメディア環境は非常に激しく変化しています。その中にあっても、視覚と聴覚に同時に訴えかける「テレビ」というメディアが持つ広告効果、一斉に同時に多くの人々に同じメッセージが届けられる媒体としての力は、唯一無二のメディアと呼べるのではないでしょうか。

一方で、そのテレビメディアにおいて、「ターゲットの視聴“割合”が高い番組を特定し、そのような、商品の購買にプラスの影響が強い番組で、CMを流したい」というクライアントサイドのニーズが日に日に高まっています。

例えば、男性の若年層をターゲットにした商品の訴求であれば、このターゲットの視聴割合が高い番組を特定して、その番組でCMを流したいというニーズです。

その際、ある番組の過去の視聴率データを純粋に参照したとき、男性若年層の視聴割合が高いと見込まれたとします。そうすると、その番組で男性若年ターゲットの商品CMを流すことになるわけですが、実際には、このターゲットの視聴率は、放送時においては低い視聴率になることがあります。

これは、例えばその番組の前後の番組の影響を受ける場合や、同時間帯に他局の番組の影響を受ける場合、出演者が異なることによる影響、番組で取り上げられる内容・コンテンツの変化による影響など、さまざまな理由が考えられます。

その際、テレビCMにおける広告効果の低下の影響はとても大きいため、できるだけ未来の放送においても、この見込みのズレが生じない施策が求められます。

未来の視聴率をもし高い精度で予測できるようになると、あるターゲット向けの広告素材を流そうとしたときに、その層の視聴率を見極めた上で、適切に放送することができようになるため、「想定された視聴率より低くなってしまった」という事態を最小限にすることができます。つまり、視聴率を予測する目的は、「広告効果の低下を避ける=広告効果の最大化を目指す」ためということになります。

■5000のデータ変数で140ターゲットの視聴率予測が可能に!

SHARESTは、過去、現在のデータに基づき未来のデータをも“シェア”できる仕組みとして名付けられました。SHARESTは、さまざまなデータをAIが学習することでテレビ視聴率を予測するシステムです。

特に、放送前1週間のテレビ視聴率を予測するバージョンを「SHAREST_RT」(シェアレスト・アールティー/※「RT」は、Recent Trendの略)としてリリースでも紹介しています。

AIには、昨今の第四次産業革命を支える技術のひとつといわれているディープラーニング(深層学習)を活用しています。学習対象となるデータは、過去の視聴率データや番組ジャンル、出演者情報や、インターネット上のコンテンツ閲覧傾向に加え、前後番組編成や他局の編成番組内容などで、現在5000を超える変数が対象となっています。

これらは、SHARESTの予測精度を向上させるための教師データである、「RICH FLOW」(リッチフロー)と呼ばれるデータベース基盤に格納されています。RICH FLOWは構造化されたデータベースであり、下記三つの条件に当てはまるさまざまなデータで構成されています。

①まとまった量の過去データが担保されている。
②一定の粒度を確保した時系列データである。
③将来の安定供給が可能である。

RICH FLOWデータを参照することで、現在、SHARESTは、140ターゲットの視聴率予測を行うことができ、予測対象エリアは関東、関西、中部の3地区へと拡大しています。また、関東地区においては、放送後7日間のタイムシフト視聴率を予測することも可能となっています。

既に、複数ターゲットのCM素材を持っている一部クライアントのCM割り付け業務に活用されています。

今後、このRICH FLOWデータベースを拡充させることでSHARESTの予測精度をより高め、予測対象指標を広げていく予定です。例えば、更に詳しい視聴者のプロフィールデータを体系的にRICH FLOWデータに投入できれば、現在より更に絞り込んだターゲットプロフィールで予測値を算出することができます。

また中長期的には、テレビ広告接触後の視聴者の購買履歴などもデータ投入できれば、将来のテレビ広告接触者の購買予測も可能になるかもしれません。

■気象データ活用で、より高精度な視聴率を予測

さらに現在、電通では、気象データを活用し広告マーケティングの高度化を実現するフレームワーク「Weather Enhanced Marketing」(ウェザー・エンハンスト・マーケティング)の開発をスタートしています。

これは、日本気象協会が保有する豊富な過去の気象データ、そのデータを用いた分析結果、最新の気象予測データなどと連携していくもので、この気象データのRICH FLOW投入も、現在検証を開始しています。

一般的に、雨の日や寒過ぎる日は外出が控えられるため、視聴率は上昇傾向になるといわれています。例えば、降水量と視聴率の関係を分析すると、実際に下記のような傾向が得られます。

上記のような傾向がターゲットごとにどう異なるか、時間帯や曜日別にどのような傾向が得られるかを可視化し、気象データとともにRICH FLOWへ投入し、SHARESTの学習データへ組み込むことで、より高精度な視聴率予測が可能となります。

SHARESTは、テレビCMの広告効果をさらに高め、多様化するクライアントニーズに応えることを目指していきます。また、テレビ広告の影響範囲は大きいため、この広告効果の向上は、クライアントのキャンペーン成功にも大きく影響していくものと思います。テレビ視聴率の高精度な予測の一つ一つが、売上拡大などに貢献する日を目指して、引き続き開発を力強く推進していきます。