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世界一、ラグビーを楽しむ国へ。

2019/11/20

世界一、ラグビーを楽しむ国へ。

「最も偉大なワールドカップとして記憶に残る。日本は開催国として最高だった」

主催者のワールドラグビー(以下、WR)会長、ビル・ボーモント氏が最大級の賛辞を贈った「ラグビーワールドカップ2019日本大会」。

日本代表が悲願のベスト8進出を達成し、44日間の熱戦は南アフリカの優勝で幕を閉じた。

ラグビーワールドカップ南アフリカ優勝
©フォート・キシモト

チケット販売率は約99%(約184万枚)、観客動員数は延べ約170万人、全国16カ所に設置されたファンゾーンには約114万人が来場した。テレビの瞬間最高視聴率は53.7 %を記録するなど、日本のラグビー熱に火をつけた大会だった。

ワールドカップの成功と今後の日本ラグビーを、日本ラグビーフットボール協会(以下、協会)はどのように捉えているのか。岩渕専務理事が語った。

岩渕健輔氏
日本ラグビーフットボール協会専務理事の岩渕健輔氏

感謝の思いを込めた、閉幕翌日の新聞広告

われわれ協会は、ワールドカップ閉幕の翌日11月3日付の読売・開催都市の朝刊に、応援してくださったファン、自治体、スポンサーへのお礼を伝える全ページ広告を掲載しました。

ラグビーW杯新聞広告
11月3日付朝刊掲載の新聞広告

現在、日本のラグビーの競技人口は約10万人。そのご両親や友人を含めたラグビーファンが約100万人だとしても、日本の人口のわずか1%に過ぎません。今回の大会は、99%の方々にラグビーを知っていただける重要な機会となりました。

テレビでも電車の中でもラグビーの話題を見聞きする日々。大会を通してラグビーがこれだけ注目されたことを、とてもうれしく感じています。

振り返れば、ワールドカップの日本開催が決まったのは、10年前の2009年。それまで日本のワールドカップ通算成績は1勝2分け21敗、1995年にはニュージーランドに145対17で大敗したこともありました。大会での実績が乏しい中で招致を決めた協会の先輩方の努力、そしてWRの決断に大変感謝しております。

ワールドカップの成功要因として、組織委員会の力はもちろんですが、開催地やキャンプ地の自治体、ボランティアの方々の力が大きかったと感じています。

例えば、ウェールズ代表が北九州で公開練習を行った際、1万5000人が会場に集まりウェールズ国歌を斉唱したサプライズは世界中で賞賛されました。このような“おもてなし”が各キャンプ地で、地域の皆さまによって行われ、選手たちはSNSなどで、日本のワールドカップの素晴らしさを世界中に発信しました。

一方では各国代表の地道な活動も見逃せません。ウェールズ代表は、4、5年前から毎年北九州を訪れ、選手や子どもたちにラグビーのコーチングなどを行ってきました。国内外の方々が時間をかけて、ラグビーをきっかけにみんなで盛り上がる流れをつくったことが大きな成功に結びつきました。

ワールドカップをつくり、楽しんでくれたすべての人を思い、新聞広告では、「世界一のファンがいた。」というキャッチコピーを掲げ、強い感謝の思いを込めました。

われわれはサービス業。日常の中でラグビーの楽しさや価値を伝えたい

今後はワールドカップで生まれたラグビーの大きなうねりをどう生かしていくかが課題です。2015年大会でもラグビーブームは起こりましたが、残念ながら保つことはできませんでした。今回は開幕前から、どうやって皆さまにラグビーに関わり続けていただくかをずっと考え続けてきました。

例えば、すでに小学校の学習指導要領に「タグラグビー」(※1)を取り入れていただくよう働き掛け、過去4年間で60%以上の学校に採用いただきました。中学校や高校にはラグビー部創設を働き掛け、新しい大会の設立も進めています。他にもラグビー未経験者や女性でも楽しめるラグビー(※2)を提案したり、ラグビーを観戦しながらお酒を飲めるようなスペースも増やしていきたいです。

W杯ファンゾーン
全国16カ所に設置されたファンゾーンは、ラグビーを身近に感じる貴重な場になった。©フォート・キシモト

われわれ協会は、自らをサービス業だと考えています。多くの方に日常的にラグビーを楽しんでもらえるよう取り組んでいきます。

そのためには、ラグビーの価値を整理して発信していくことも必要です。例えば、WRが定めた「ラグビー憲章」では、ラグビーの五つの価値は「品位」「情熱」「結束」「規律」「尊重」と記載されています。世界の中で日本ほど、これらの言葉がマッチする文化・精神を持つ国はないはず。

今回、多くの方がラグビーに惹かれた要因のひとつは、ラグビーの五つの価値が皆さまの心を捉えたからではないでしょうか。日本がこれまで大切にしてきたことが、ラグビーの“ノーサイド”や“ONE TEAM”という精神、選手の振る舞いの中に感じられたのだと思います。

この他にも、ラグビーの価値や魅力はたくさんあるはずなので、それらを言語化して分かりやすく伝えていくこともわれわれの使命です。

ラグビーを世界中へ広げられる存在に

日本のラグビーはこれまで企業に支えられてきた部分が大きかったのですが、地域への浸透は遅れていました。それが、ラグビーが“限られた人のスポーツ”になっていた原因の一つです。今後ラグビーを広めていくためには、企業の皆さまに加え、地域の皆さまの支援も必要です。

世界的に見ても、ラグビーはまだまだ普及・発展する可能性があります。「伝統国」(※3)と呼ばれる国は限られていて、サッカーなどに比べると強国は多くありません。とはいえ、アルゼンチンが、20年ほどで強豪国になったように、日本も他国も今後の取り組み次第で大いに飛躍するでしょう。

ラグビーでは、「Grow the game」(競技を広める)とよく言われます。今回のワールドカップは、「Grow the game in Asia and Japan」、つまり、アジアと日本にラグビーを広めることが大きな目的でした。

ワールドカップの成功は、アジアの国々にも希望を与えたと感じていますが、次は「Grow the game globally」を掲げ、アジア以外の国々に対しても、われわれが希望を届けられる存在になりたい。すでに次回の招致に向けた計画を進行中で、もう一度日本でワールドカップを行うことで、さまざまな国で大会が開ける道をつくりたいという話をWRにいたしました。将来的には日本が国際的なリーダーシップをとって、世界中にラグビーを普及・発展させていくことが目標です。

※1 タグラグビー:イギリス生まれのスポーツで、タックルなど身体に接触するプレーを一切排除しているのが特徴。タックルの代わりに腰につけたタグを奪って相手の攻撃を阻止する。詳しくは、http://www.tagrugby-japan.jp/ 

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※2 一例として、ストリートラグビー:広い場所がなくてもプレーできるように考案されたラグビーで、3人対3人でプレーする。相手の動きを止めるときはタッチをするなど、女性や子ども、ラグビー未経験者でもプレーできるよう工夫されている。詳しくは、https://street-rugby.com/ 

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※3 伝統国:ラグビー競技の歴史が長く、常に世界ランキング上位を占める強豪国を指す。ニュージーランド、オーストラリア、南アフリカ、イングランド、ウェールズなど。

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