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なぜか元気な会社のヒミツNo.3

2019/12/19

ローカルの魅力、見落としてませんか?

「会社の正解」を得るのが難しい時代の中、オリジナリティーを発揮する元気の良い会社があります。その秘訣(ひけつ)とは一体何でしょうか?電通「カンパニーデザイン」チームがそれぞれの会社のキーパーソンに伺った話をご紹介する本連載コラム。

3回目は、沖縄県の上間フードアンドライフのケースです。

ウェブ電通報「カンパニーデザイン」連載記事は、こちらから。

 


上間フードアンドライフ


競わずして打って出る、沖縄から世界へ

近年、沖縄の食市場で一躍注目を浴びる存在になった、上間フードアンドライフ。地域ならではの風土を生かし、あえて競争しなくていい市場で、唯一無二の存在を目指す。

話し手:上間喜壽氏(上間フードアンドライフ社長)
聞き手:武藤新二氏(電通 CDC)
 
上間フードアンドライフ 「食を通して沖縄の文化を守り、伝え、発展させる」を理念に、店舗のみならず、仕出し、ケータリング(本文内写真)、製造卸を展開。
上間フードアンドライフ
「食を通して沖縄の文化を守り、伝え、発展させる」を理念に、店舗のみならず、仕出し、ケータリング(本文内写真)、製造卸を展開。

地域に根付いた遺伝子で、個性を削り出す

「僕は競争したくないんですよ。敵が来たら逃げますね」と冗談めかして語る上間氏。両親が営んでいた「上間弁当天ぷら店」を引き継いで、家業を法人化した2009年以降、ニッチ領域を次々に見つけ出し、業績を伸ばしている。
県民のソウルフードである「沖縄天ぷら」の販路をコンビニに広げ、沖縄では需要の多い行事や法事料理の仕出しを手掛けるなど、地域ならではの文化や風土を味方につけ、過度な競争を避ける戦略が興味を引く。

上間喜壽氏(上間フードアンドライフ社長)
上間喜壽氏(上間フードアンドライフ社長)

大学卒業後すぐ経営者となった上間氏が試行錯誤してたどり着いたのが、「その地域の人間に根付いたもの、身体性とか、血とか、遺伝子とか、そういうものを個性としてきっちりと削り出し、ローカルにしっかりと根差す」という信念だという。

武藤新二氏(電通 CDC)
武藤新二氏(電通 CDC)

唯一無二の文化や風土を持った集団に

こうした考えを社員やパート、アルバイト全員に共有する機会は欠かさないという。「うちのストーリー、ルーツはどこにあって、商品はなぜこうなっているのかを、繰り返し伝えます。そして、自分たちは何のためにやっているか、世の中にどんな変化を与えるかを常々意識してもらいたいんです」と話す上間氏は、会社の新たな価値観をみんなで創り出そうとしている。

ケータリング準備風景
ケータリング準備風景

年に一度、家計簿のつけ方や保険のことなど、生活を良くするための知識をシェアする合宿も全員参加でやっているという。「無理せず楽しく働く。シンプルに沖縄らしく。会社というよりも、地域やコミュニティーをつくる感じかな」。上間氏が目指すのは、文化や風土を強みに沖縄から世界へ打って出る、唯一無二の緩やかな集団なのだろう。

上間フードアンドライフ社長・上間喜壽氏(写真左)と電通 CDC・武藤新二氏(同右)。 「商品の9割は親の代から変えていないとのこと。『らしさ』を追求しながら成長する上間氏の次の一手、そして未来に目が離せません」(武藤)
上間フードアンドライフ社長・上間喜壽氏(写真左)と電通 CDC・武藤新二氏(同右)。「商品の9割は親の代から変えていないとのこと。『らしさ』を追求しながら成長する上間氏の次の一手、そして未来に目が離せません」(武藤)

編集部が見た「カンパニーデザイン術」#03

上間社長のインタビューが終わったところで、すぐさま英和辞典と和英辞典を引っ張り出したい衝動に駆られた。「local(ローカル)」という英単語の意味を、改めて確認したくなったからだ。果たせるかな、「local」に「都会に対して田舎の」の意味はなく、「限られた区域における」の意味しかない。田舎、あるいは田舎の、を意味する単語は「country」だったり、「rural」だったりする。要するに、「地方」と「地域」は、全くの別物なのだ。上間社長は、実に明確にその線引きをしていて、具体的な経営戦略に生かしている。

上間社長の戦略を要約すると、こういうことになる。「地方」の弱点は、流通の力やIoT、AIといった最先端技術を活用していくことで解決していける。その一方で「地域」の魅力を伸ばすには、その地域に根付いた風土、文化やソウルと真っ向から対峙しなければならない。ならないというよりは、向き合うからこそ無限の可能性が広がっていくのだ、と。単なる地元愛、沖縄愛ではない。そこには、優れた経営者としての明確なビジョンと信念をうかがい知ることができる。

「地域に根差したビジネスは、100年、150年と続けていける」と、上間社長は言う。そのためには、「そばと沖縄そばは、違うよね」のノリで、沖縄天ぷらを一つのカテゴリーにして育てていきたいのだと語る。計算し尽くされたマーケティング戦略であると同時に、ブランディングの大切さを、改めて思い知らされる。近い将来、オキナワテンプラが一つのカテゴリーとしての地位を確立した時、その商品はもはや「地方の名産品」ではなく、「沖縄という地域が生んだ世界的なブランド」になっているはずだ。分かりやすい例を挙げるならば、フランスのシャンパーニュ“地域”の風土が育んだシャンパンのように。

「なぜか元気な会社のヒミツ」#01は、こちら。#02は、こちら
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