もはや人ごとではない!? 中国インバウンド入門。 AISAS、SIPS、そして…
2019/12/20
最近、外国人観光客の方々が一段と増加していると思いませんか?
中でも中国人観光客の増加が目立ち、日本におけるインバウンド消費もさらなる盛り上がりを見せています。日本と中国の消費は、ますますつながりが深まることが予想されます。
その状況下、日本と中国の企業が抱える日本・中国ハイブリッド市場のマーケティング課題にクロスボーダーで対応していくための電通グループ横断組織「Dentsu China Xover Center」略称「Dentsu CXC(デンツウ シー・バイ・シー)」が、2019年6月に発足しました。
本連載の1回目となる今回は、Dentsu CXCが12月に発表した日本・中国クロスオーバー消費行動モデル概念「SSSフレーム」をストラテジック・プランナーの武藤隆史から紹介させていただきます。
Dentsu CXC、発足!
外国人観光客の数は、10年前の2009年には約680万人でしたが、2018年には3000万人の大台を超え、政府は2020年に4000万人達成を目指しています。
中でも訪日中国人はここ5年で大幅増加。2018年には838万人に達し、今では国・地域別で最大となっています。
日本市場が成熟化する中で、中国の需要をいかに取り込めるかが、日本企業の成長エンジンのひとつとなり得ます。マーケターにも両方の市場を俯瞰的にとらえたプランニングが今後ますます求められるようになります。
この事実を背景に、電通は、グループ横断組織「Dentsu CXC」を発足しました。
Dentsu CXC 公式HP
https://cxc-dentsu.com/
電通リリース
https://www.dentsu.co.jp/news/release/2019/0529-009829.html
日本・中国クロスオーバー消費行動モデル概念「SSSフレーム」を開発
私たちは、これからの消費の大きなトレンドである、訪日中国人の需要を効果的に取り込むために、日本・中国クロスオーバーの消費行動をくくる概念が必要であると考え、「SSSフレーム」を開発しました。各種調査をベースに、CXCメンバー、電通・インバウンド担当セクションの高橋(邦)チーム、外部有識者と検討を重ねて開発しています。
電通は過去にネット時代の消費行動モデル概念として「AISAS」、SNS時代のモデルとして「SIPS」を開発しましたが、これからの日本・中国クロスオーバー時代に対応するモデルが「SSSフレーム」となります。
電通リリース
https://www.dentsu.co.jp/news/release/2019/1202-009966.html
それでは、架空の中国人女性Lilyさん(20代/上海)が初めて日本旅行に行く際を例に、彼女へのインタビューを交えながら、各プロセスを具体的にご説明します。
旅マエは「共感:Sympathize」獲得が大切。
その後「探索:Explore」して納得したら買い物リストへ
【Lilyインタビュー】
Q.普段はどのようにして日本の商品/サービスを知るのですか?
RED(小红书:中国版インスタグラム)でタレントやKOL(キー・オピニオン・リーダー)のコスメレポート動画を見て、日本の商品をチェックしています。Weibo(微博:中国版ツイッター)アカウントでは面白い日本のニュースもチェック。フォローしたWeChat(微信:中国版ライン)アカウントでよく日本のファッショントレンドや日用品の投稿記事を見て、その美しいデザインと実用的な機能に感心したり、bilibili(哔哩哔哩:中国版ニコニコ動画)では日本の商品を扱った面白い動画も楽しんで見ています。
Q.旅マエにどのように日本の商品/サービスを調べましたか?
はじめての日本旅行。Baidu(百度:中国版Google)で地名を入れて検索し、みんなの旅行記を見たり、東京のカフェランキングを調べたり。気になっていた化粧品、日本のコスメに詳しい友達に改めて聞いた化粧品をREDで調べて、買いたいものをスマホに保存しました。Ctrip(携程:中国版エクスペディア)で航空券を購入したら、WeChatグループに追加され、V-guide(微领队:オンライン旅行ガイド)が日本旅行のアドバイスや注意事項を教えてくれました。
【ここで解説】
旅マエは、まずは「共感:Sympathize」が大切です。「注目:Attention」を狙うだけでは中国国内の商品、欧米商品、韓国商品、日本商品など、膨大な商品情報の中で埋もれ、スルーされてしまうため、「共感:Sympathize」まで獲得できる出合い方が大切であると考えます。
中国人の商品に関する情報収集源として、テレビCMなどのマス広告以上に、家族・友人・知人からの情報や、SNSからの情報源(有名KOLなど)を重視していることが下記の調査結果から分かります。共感できる人、共感できる情報源を介して出合ってもらう場を設ける必要があります。
「共感:Sympathize」されれば、その後の自発的な「探索:Explore」につながり、納得できれば買い物リストに入れてくれます。下記調査結果からも分かるように、旅マエに買い物リストを作成していない人はたった13.5%しかいません。旅マエに、買い物リストに入れてもらうことが重要となります。
旅ナカは、「驚感:Surprise」が競争優位をつくり、「初回購入:Purchase」のプッシュになる
【Lilyインタビュー】
Q.旅ナカでは、どのような情報に接触しましたか?また印象に残ったことは?
機内にあった雑誌を読んでいたら、知らなかったコスメ商品の情報をゲットできたり、ドラッグストアのクーポン券を入手できました。空港の化粧品の広告が中国語で書かれていてとても親切だなと思いました。電車に乗ると静けさにビックリ。一方で渋谷の交差点の人や広告の多さに驚きました。山手線で見たスキンケアの広告が良さそうで百度で検索しました。街の人たちもとても親切で観光客に優しい国だなと思いました。V-guideがグループチャットに新宿の百貨店でコスメ品がセール中という情報を流してくれて、活用しようと思いました。
Q.どのように初回購入しましたか?
化粧品やサプリメントを買うために、安く買えると聞いていたドラッグストアに行きました。WeChat Pay(微信支付:中国版PayPay)、Alipay(支付宝:中国版PayPay)のロゴが見えて親切なお店だと思いました。入店したら商品が多過ぎて、漢字以外読めないし、迷ってしまいました。スマホに保存したメモを見ながら探したり、店員に聞きながらかごに入れていきました。見たことがあって興味を持った商品はとりあえずかごに入れました。REDで大人気だけど中国では買えないコスメを見かけて、迷わずかごに入れました。化粧水にNO.1のシールがついたものも買いました。
【ここで解説】
旅ナカのSは、「驚感:Surprise」と設定。旅マエよりも深い情報提供、体験提供が可能な旅ナカにおいては、大なり小なり、「驚感:Surprise」まで獲得できると強く印象に残すことができ、「購入:Purchase」や「共有:Share」に、良い影響を与えることができると考えます。
「Dentsu CXC」が実施した訪日中国人インタビュー調査で、今回の訪日旅行で印象に残ったことを聞いたところ、下記のような、街のきれいさ、人の優しさ、マナーの良さに驚き感動したという声を多数聞くことができました。
まだ商品やブランドに関連したエピソードを語る人が少ない状況下、中国国内よりも深い体験や情報を伝えることができる旅ナカにおいて、驚きや感動のあるコト体験の提供や、深くタイムリーな情報提供を行うことができれば、競合に先駆けて競争優位性をつくれる好機であると考えます。
旅アトは、「共有:Share 」そして「継続購入:Purchase」にまでつなげていく
【Lilyインタビュー】
Q.帰国して、使って良かったらどのように薦めますか?
旅行中、その日に買った商品をWeChatモーメント(朋友圈:SNSのタイムライン)にアップしたら、代理購入してほしいと友達から連絡が来ました。サプリメントや美顔器に対する推薦コメントももらえました。帰国してお土産を友達や会社の同僚に渡すときに、旅の思い出や、今回の旅行で買って使ってみて良かった商品を紹介しました。ちょうど来月日本に行く友達がいて、自分の話を聞いて早速スマホにメモを残したり調べたりしていました。
Q.どのように次回購入しますか?
旅行1カ月後、日本旅行でとても気に入ったスキンケアグッズが切れそうになって、忙しくて日本へ行けない中、そろそろ11月11日(中国の「独身の日」)セールキャンペーンなので、Tmall(天猫:中国版Amazon)の旗艦店を調べたら、ちょうど事前販売キャンペーンをやっていて、日本よりやや高いけど、限定パッケージを2セット予約しました。
【ここで解説】
訪日時に初回購入して、使って良かった商品は、SNSやリアルで「共有:Share」してくれて、それが、周辺の人々の旅マエの「共感:Sympathize」に繋がっていきます。
また良かった商品は、越境ECなどで多くの人々が継続購入してくれることも調査結果から判明しています。
以上、「SSSフレーム」の概要をLilyさんの体験の形で紹介しました。
「SSSフレーム」を自由にご活用ください
今回説明したように、「旅マエ」「旅ナカ」「旅アト」と日本と中国市場を一気通貫でプランニングすることが、これからのインバウンド、越境EC、中国マーケティングを考えていく上で、重要な視点であると考えます。
Dentsu CXCは、日本・中国クロスオーバー消費行動モデル概念「SSSフレーム」を多くの人々に自由に活用していただくことで、日本・中国ハイブリッド市場が今後ますます盛り上がることを願います。次回以降の連載もお楽しみに。
お問い合わせはこちら。
株式会社電通 Dentsu CXC(デンツウ シー・バイ・シー)
Email:dentsucxc@dentsu.co.jp