「人づくりから共創しよう」〜合同インターンシップ
engawa young academy
2020/01/20
事業共創拠点「engawa KYOTO」で始めた新たな産学共創の取り組みのひとつが、engawa young academy(以下、eya)。2019年11月〜2020年2月の4カ月間にわたって、京都を中心とした大学生36人と異業種大手企業6社のメンターが共創し、将来の日本を担う学生の成長を支援する長期的な合同インターンプログラムです。参加企業は、島津製作所、積水ハウス、⽇本たばこ産業、パナソニック、みずほフィナンシャルグループ、電通の6社。
プログラムはリンクアンドモチベーション社と電通京都ビジネスアクセラレーションセンターで共同開発、運営を行います。電通側の事務局は、京都ビジネスアクセラレーションセンターの眞竹・湊が担当します。11月に行われた初回の様子とこのプログラムの開発背景や狙いについて、眞竹広嗣がご紹介します。
緊張感みなぎる「チームビルディングワーク」とは ?
今回のeyaは、2019年11月から2020年2月にかけて月1回のペースで行われるプログラムで、各回に狙いと目玉プログラムを仕込んでいます。
11月に行われた初日はチームビルディングワーク、具体的には二つのコンテンツで構成しました。
1:学生たち自らがチームメンバーを選ぶ、チームクリエイト
グループワークを行う場合、普通のインターンシップだとあらかじめチームが決められているケースが多いのではないでしょうか?eyaでは、以下のステップで、自分の個性を鑑みながらメンバーを選び、指名をする、またされた側は受けるかどうかを考える(=題して、戦略的M&A会議)ことで、多様性のある6人がチームメンバーになることを意識したワークを行いました。
狙いは、このプログラムの中で、自らの学び、成長を最大化するために、自分にとってどのようなメンバーとチームになるのが望ましいのか、自ら考え、情報を集め、選ぶ機会を与える、ということです。実際始まると、「チームになってください!」「ごめんなさい…」そんなやりとりもしばしば発生。どういうメンバーとチームを組むことが自分の刺激になりそうか、主体的に考える学生たちの姿勢が垣間見えました。
2:チームがメンターを逆指名!! メンタードラフト会議
チームメンバー同様、メンターも、決められたメンターではなく、チームメンバーと相談して、チームごとにメンターを指名する“メンタードラフト”を行いました。
まず、メンターの皆さんが、企業を明かさない範囲での業務歴や仕事観、人生観などに踏み込んで自らをプレゼンテーション。その後、メンターは各テーブルを回り、学生からの質問タイム。学生がメンターを選ぶための質問をぶつけていきました。
大人が真剣にプレゼンして、学生がチームのメンターを選ぶ。普通のインターンとは逆のケースで、企業側にも緊張感を求める。そんな場を設けることにももちろん、狙いがあります。一つは、チームクリエイト同様、自らの学び、成長を最大化するための環境をつくり、自ら考え、情報を集め、選ぶ機会を与える、ということです。もう一つは、企業側も学生から選ばれることで、学生の視点を直に感じる、というものです。いつもは選ぶ側の企業が、目の前で学生から選ばれる。この緊張感あるプログラム、メンターの皆さまからは、
「人事が試されるのはとてもグッドです」
「異業種の方のプレゼンテーションが、自分とは違い刺激があった」
「私自身の真価を問われる良いきっかけになったとも感じています」
(参加企業の声)
という声を頂きました。企業側も学生から選ばれることによる気付き、また学生同士だけでなく、企業同士も刺激し合う、という点において、初日のトライはある程度、目的を果たせたのではないかと感じています。
では、なぜ、このようなプログラム設計を行ったのか。eyaの開発背景と狙いを紹介していきます。
大手企業における人材課題の解決に向けて
「自社だけで活動をしていても、接触できる学生の層が固定化しつつあった」
(参加企業の声)
VUCAといわれる環境の中で、企業は新たな成長を模索しています。もちろん、強みを発揮しているコア市場での競争力維持・強化のために、必要な人材確保は欠かせません。企業が収益を上げる柱だからです。ただ、その観点での人材獲得だけでは、その先の成長を描くための取り組みを担う人材が不足する恐れがあります。多くの人材は、コア領域に基づくイメージをベースとしてその企業に好意を持ち、企業は、その志望してくる人材のみにアプローチすることになるからです。
既存のやり方では接触し得ない、自社に関心のない人材をどう自社に関心を向けさせ、自社への志望動機を高めるか、これまでとは異なるスタンスのアプローチとの両立が必要になっているのです。つまりは、新たな成長事業をつくる人材領域にも、engawa KYOTOのコンセプトである、未知との境界線、ウチなる限界を越えてソトとつながっていく、というオープンイノベーションの考え方を持ち込むのが重要になるのではないか?ということです。
「合同インターンシップ」における企業側と学生側のベネフィット
「イメージだけで就職活動はしてほしくないので、自社、あるいは業界に対して正しい情報をお伝えした上で、学生に判断してほしいなと思っています」
(参加企業の声)
ネットの普及により流通する情報量が爆発的に増えたことに加え、企業の合併や事業領域の拡大により企業側のリアルな状態は複雑さを増し、その情報理解にはかなりのカロリーを要します。一方、ネットでのリコメンド機能になれている学生は、コンテンツの処理速度をどんどん高速化し、情報は選んで捨てるものと考えています。そのため、よほどのモチベーションがないと自ら情報を取りにいく、ということがおきません。
結果、学生が就活前に持っている知識の中で、企業イメージが処理されるケースが多く、「日系の大手」というだけで、
・年功序列で若手には裁量権がない。
・安定志向で挑戦の機会を与えてもらえない。
というレッテル化された文脈で処理されてしまい、企業研究すらしてもらえないリスクを抱えています。
eya開発の狙い
このような中で、eyaはこれまでの「人材を待つ」とは異なるアプローチの在り方として、「人材を育む」ことを目的として設計しています。「人づくりから共創しよう」のコンセプトのもと、電通のアイデア実行力とリンクアンドモチベーションの人材育成、それぞれのノウハウを基軸とした構成で、6社のメンターと共に企業のみならず日本の新たな成長を支え世界に通じる人材を育て、意欲ある学生のビジネスリーダー、イノベーターとしての資質を磨き、成長を支援していくことが狙いです。それにより、企業側、学生側双方に次のようなベネフィットを提供できると考えています。
企業側のベネフィットとしては、
●自社のみの活動では接触できない人材との接点確保
異業種6社が集まることで、自社のみでは接点が持ちづらいタイプの人材との接触機会を生み、その視点、マインド、行動を直接、観察することができます。
●学生から選ばれることで、学生の視点を学ぶ
メンタードラフトの狙いですが、メンターが学生から選ばれる過程を通じて、今の学生の率直な視点を感じ、気付きを得ることができます。
●人事セクションでの企業横断のつながり、また切磋琢磨が生まれる
人事の活動において、他社と同じ時間を一定期間共有する、ということはなかなかなかったのではないでしょうか。異業種の人事同士が互いに刺激し合い、知見を交換し合う場にもなります。
実際、次のような期待を頂いています。
「業界や自社志望層ではない、通常の活動では接触できない層と接触ができる」
「学生だけでなく、参加するメンター共々に成長しあえる仕組みであるこのプログラムは、新たな社員育成の取り組みとしても期待しています」
(参加企業の声)
一方、学生側へのベネフィットですが、
●既存イメージの壁を破る企業情報のインプット
それまで視野になかった業種・業界・企業のメンターや情報に深く接触することで、6社だけでなく企業に対しての視野を広げることができます。
●ドラフト、チームクリエイトで自ら環境をつくる機会の提供
お仕着せの環境ではないことで、プログラムへのより主体的な参加を促します。もちろん、メンターやメンバーが希望どおりにならない方が多いと思いますが、その状況からどうやってチームの強みを生かすか、を考えることは成長につながると考えます。
●将来の社外同期ネットワークの保有
4カ月間、絆を深め合うチャンスがあります。それは社会人となった後、社外同期へとつながり、ビジネスの拡大や個人としての成長にとってこれからの時代に有効なネットワークになります。
ベネフィットは以上です、というのは、あくまで今のところの話で、人材領域での共創ベネフィットは、まだまだ奥深いところにもあるのではないか、見えていないところを今後さらに発見、開拓していきたい、と考えています。
engawa young academyで描きたいストーリーがあります。それは、ここの卒業生が社会人となって、ここでつながったeyaの社外同期、企業、電通京都BACやリンクアンドモチベーションとの縁から新しいビジネスのタネが生まれ、共創し、実らせることです。そのためにまず、engawa KYOTOでの濃密な4カ月を、学生の皆さん、参加企業のメンターの皆さんとともに走りきりたいと思います。
リンクアンドモチベーション組織開発デザイン室 エグゼクティブ ディレクター 樫原 洋平
電通 京都ビジネスアクセラレーションセンター プロジェクトリーダー 前⽥ 浩希EPD
電通京都ビジネスアクセラレーションセンター 情報発信ウェブメディア“JAMJAM!”も、のぞいてみてください!