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50カ国以上のエグゼクティブが渡英して受講する“世界最高峰の美術系大学院の人気カリキュラム”とは?

事業共創拠点“engawa KYOTO”No.2

2019/10/15

50カ国以上のエグゼクティブが渡英して受講する“世界最高峰の美術系大学院の人気カリキュラム”とは?

2019年7月22日にオープンした電通の事業共創拠点「engawa KYOTO」。そのオープニング・プログラムとして、世界最高峰の美術系大学院Royal College of Art(RCA)(※)を招聘したワークショップを9月5、6の2日間、開催しました。

プログラムのテーマは、「Innovation Masterclass in Kyoto」。その内容は、engawa KYOTOがRCAと共同開発したもので、「デザイン思考」について学び、イノベーションを起こすための具体的なプロセスを体感できる仕立てとなっています。

今回は、ロンドンでこれまで何度もExecutive Educationを開催してきたジェレミー教授らによるプログラムの内容や同教授へのインタビューなどを電通・京都ビジネスアクセラレーションセンターの工藤好洋が紹介します。

※Royal College of Art(RCA):2015年から5年連続でQS世界大学ランキングのアート・デザイン分野で1位に輝き、ジェームズ・ダイソン氏のようなビジネス界で躍進する卒業生を次々と輩出している世界最高峰の美術系大学院大学。

 


イノベーションを生む“デザイン思考”とは?

9月5日に開催されたワークショップのキーノートスピーチとしてジェレミー教授が選んだテーマは、「高齢化社会におけるウェルネスのためのデザイン思考」。その内容を紹介します。

(以下、話者ジェレミー教授)
デザイン思考とは、何か?19世紀にイギリスで活躍したエンジニアのイザバード・キングダム・ブルネルは「人を、ふわっと浮かぶように運べないか」という発想で汽車を提唱しました。かのジェームズ・ダイソンは、製材所で使われていたサイクロンを小さくすることで、家庭用のクリーナーに革命を起こしました。

いずれも、ひらめきの瞬間があるのです。ひらめきというクリエーティビティーをイノベーションとしてカタチにしていくには、プロセスが必要。そのプロセスこそが、「デザイン思考」というものなのです。

あらゆる物事の思考のプロセスを1.ディスカバー(発見)、2.デファイン(定義づけ)、3.デベロップ(発展)、4.デリバリー(提供)という4段階に当てはめて「発散」と「収束」を繰り返してしていく。これが、デザイン思考です。

現実世界(1と4)と空想の世界(2と3)を行き来することが、何より大事です。

従来のマーケティングは、現実世界しか見ていません。発見も、定義づけも、発展も、提供も、現実世界で正しいとされることに基づいて、正しいとされる結論にたどり着いて、実施に至る。気がつくと凡庸な施策、凡庸なプロダクツばかりで、世の中が、窮屈で醜いものになってしまう。思考の「発散」と「収束」。そのプロセスにこそ、イノベーションの可能性は秘められているのです。

理想の高齢化社会をデザインする五つの課題

年をとる、ということを「人間としての機能が衰えること」と捉えていると、典型的な老化のモデルが出来上がります。「加齢=病気」と捉える固定観点から離れて、より社会的、文化的に「加齢」というものを捉えてみよう、というのがデザイン思考なのです。

理想の高齢化社会をデザインするには、次の五つの課題があります。

1)アイデンティティー
過去の地位とか名誉とかではなく、社会に対して今貢献できることはなにかを模索する。
2)ホーム(家)
住み心地のいい家を、みんなで共創していく。
3)コネクティビティー(つながり)
銭湯やたばこ店、盆踊りや回覧板…ひと昔前は当たり前にあった地域のつながりを絶やさずにつなげていく。
4)ワーキング(働くこと)
老いてなお、歓迎してくれる職場環境を創出していく。
5)モビリティー(移動性)
年齢を重ねても、自ら動けるということ。そのための環境を社会が整えていくということ。

大切なことは、私たち自身が「高齢者の立場」でものを考えるということ。技術、生活者、ビジネス、この三つの最適化を考えることでイノベーションが具現化できるのです。

「デザイン思考」の本質とはなにか?
 

ここからは、今回のセミナーとワークショップの狙いについて、ジェレミー教授のインタビューをお届けします。

Q.デザイン思考をビジネスに生かす。その狙いとは?

多くの企業は今、「同じことを繰り返していてはダメだ」ということに気付いています。すなわち、物事を、今までとはちがう枠組みで捉えることが大事なのです。

デザイン思考のポイントは、モノではなく、使う人や購入する人、とにかく「人が中心である」ということです。アートやデザインの優れているところは、現地点から未来へ向かう道筋、プロセスをつくることに長けているということだと思います。

Q.デザイン思考を磨くには、どうしたらいいですか?

私は「クリエーティブの旅」と呼んでいるのですが、思考のプロセスに欠かせないのは、まずは「実践してみる」ということ。いわゆるトライ&エラーなのですが、やみくもにトライを重ねても意味がありません。価値ある実践には、原理が必要です。物事は、現実と空想の掛け合いで成り立っている。その掛け合いを司る「変数」を知ることがイノベーションへのきっかけとなるのです。

Q.RCAを日本で開催。そのきっかけとは?

ロンドンで開催したワークショップに参加してくれた電通のスタッフが、日本への招致を勧めてくれたことがきっかけです。とても興味深い提案だと思いました。ワークショップというものは常に変化していくもので、教える人も、教わる人も、その都度、学ぶべき発見がある。一方通行ではなく、双方が学び合う。そこに、ワークショップの価値があるのだと思います。

Q.日本と英国の受講者に違いはありますか?

日本人は、英国人と比べてより慎重、というイメージですね。慎重というのは「失敗に対する寛容度が低い」ということと「じっくり考えたい」ということ。日本人の物事に対するアプローチは、わびさびに代表されるようにとても精神的で、かつ慣習的なものだと思います。

日本人もデザイナーになれますか? という質問もよく受けます。もちろん、なれる。ただし、それには「なっていいよ」という周りや上からの許諾がいると思っている。デザイン思考を発揮するには、自分に対してそれを行う許可を出す勇気もまた、必要なのだと思います。

Q.engawa KYOTOの印象は?

私たちが普段「オープンコース」と呼んでいる、異業種の人間が集まるワークショップでは、誰に偏ることなく、互いに同じ悩みを持っているという気付きが大切になります。その気付きを得るには時間と空間を共有することが非常に大切で、engawa KYOTOはそのための絶好の場所だと思います。

人は、イノベーションを起こせ、と言われるとおびえてしまうし、デザイナーなど、特別な才能を持った人間にしかできないと思ってしまいがちですが、そんなことはありません。整理された「体系」の下で、思考の旅に出る。これは、誰にでもできることなのですから。

「背広とスニーカー」という例えを、私はよく引用するのですが、大企業に勤める、あるいは大企業を経営する人間とごくごく普通の生活者が、同じ空間で語り合う。そうした瞬間に、イノベーションのきっかけがあるのだと思います。

本プログラムを終えて

ここからは再び私が、プログラムを総括します。

本プログラムは非常に盛況のうちに終了し、早速、所属組織に戻ってからもデザイン思考の考え方を広めていきたいとのうれしい声を頂きました。RCAの教授陣からも「普通は2日間もワークショップを行うと、だらけたり参加しなくなるメンバーが出てくるものだが、今回は最後までモメンタムが高まり続ける珍しい会だった」とのコメントがありました。

その重要な要因としてRCAの教授陣によるメソッドやファシリテーションはもとより、参加者の多様性が挙げられると思います。本プログラムの参加者は、グローバルに活躍する民間企業に加え、行政職員、伝統工芸士、僧侶、スタートアップ、京都の芸術大大学生など、非常に多様性に富んでいました。

私の印象として、多様な組織からメンバーが集まると、自分が所属している組織の言語や常識が通じず、組織を背負った意見ではなくその人個人の意見が出やすくなるように思います。そういった環境で議論することが、人間の本質的な課題を見つけやすくしてくれるのかもしれません。

RCAからの重要なメッセージとして、「人間を徹底的に観察し、共感せよ」というものがありました。それは自分の組織の視点だけではなく、一個人、一人の人間としての視点を持ち、人々に寄り添った「How might we…? 」(どうしたら〇〇できるだろうか?)という本質的な課題を見つけていくことだと思います。

今後は、今回のワークショップで生まれたアイデアを深掘りしたり、このワークショップで学んだ考え方を使ってさらに具体的な事業を発想し、事業化に向けて伴走していけるようなフォローアップのセッションも行っていきます。

フォローアップセッションの形態は、今回のワークショップの参加メンバーで行うもの、参加企業の他部署を巻き込んだ新たなメンバーで行うもの、外部共創スキームと共同で展開するものなど、さまざまな形態で設計しています。

京都の四条・烏丸に設立したengawa KYOTOでは、多様な人間が集まって共創していくスペースとプログラムを用意していますし、多くのパートナーの方々と一緒に考えていきたいと思っています。

ぜひ「内と外の境界が曖昧」がコンセプトのengawa KYOTOにお越しください。一見するとオフィスとは分からないエントランスを抜けたとき、皆さまの「クリエーティブの旅」はすでに始まっていることと思います。

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