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令和女子のキザシNo.1

2020/01/28

オワコンだった“つけま”が復活。令和女子にヒットするものづくりとは?

「最近の女の子たちは、一体何を考えているのか ?」これは大人たちが抱く永遠の謎です。予想もできないものが流行したり、調査しても売れなかったりするのはなぜなのか。

本連載では、女の子向けプランニングチーム・電通ギャルラボが、日々のプランニングや女子高生へのヒアリングをもとに、イマドキの令和女子たちの間で起こっている変化や潮流を分析し、大人と彼女たちの間にある「ズレ」を解消していきます。第1回のテーマは、「令和女子にヒットする商品開発」。

流通からも美容誌からも拒絶された“つけまつげ”をどう復活させるか

令和女子から“オワコン”と見なされ、昔のギャルアイテムとして市場から消えつつあった“つけまつげ”の復活劇の事例を紹介します。それは老舗化粧品会社、コージー本舗商品開発本部の谷本憲宣さんのご相談から始まりました。2019年11月に10周年を迎えたアイメークブランド「DOLLY WINK」のリブランディング作業の依頼です。

DOLLY WINKは、元祖カリスマギャルモデルとして一世を風びした益若つばささんプロデュースのアイメークブランド。主力商品である「つけまつげ」を中心に、アイライナー、アイシャドー、マスカラなどがラインアップされています。2009年、タレントプロデュース商品の先駆けとして発売したDOLLY WINKは記録的な大ヒット。しかし2012年をピークに低迷し、2018年には発売当初の2分の1以下まで売り上げが落ち込んでいました。

いわゆる「ギャルブーム」が過ぎ去り、世はナチュラルメークが主流に。マツエクサロンに通う女性が増え、“つけまつげ”の需要が大幅に減少したのです。

2009年発売当初のDOLLY WINK
2009年発売当初のDOLLY WINK

それでも“つけまつげ”に挑んだワケ

「“つけま”はもう、バラエティーショップに置いてもらえない。諦めて市場規模の大きいアイライナーに注力すべきでは」。初回のコージー本舗との打ち合わせでは、このような話も出たほど。“つけま”というだけで流通から敬遠され、ここ数年は主力美容誌への掲載もありませんでした。完全にオワコンと見なされたつけまつげの扱いに、コージー本舗も困惑していました。しかし、その商品群や過去の発売商品、試作の山を見て驚きました。私たちが驚いたのは、その圧倒的な技術力とクオリティー。

つけまつげ1本1本の毛へのこだわりや緻密に計算された長さやカールの角度、毛の密度。聞いてみると、ブランドプロデューサーの益若つばささんが全ての商品を細かくディレクションし、ミリ単位での調整が何度も行われ、一つ一つが手作業でつくられていたのです。その使用感や仕上がりは他社を圧倒していました。

さらに、私たちは重要な事実を発見しました。コージー本舗には、1947年に日本で初めて“つけまつげ”を商品化した歴史があったのです。浅草の踊り子さんが自分の髪の毛を切って細工し、つけまつげをつくっていたことが着想のヒントになったといいます。

つけまつげの老舗と、ギャル時代に命を懸けるほどつけまつげと向き合ってきた益若つばささん。この最強コンビのタッグこそ、DOLLY WINKが持つ最大の価値。そう信じた私たちは、改めて“つけまつげ”で勝負することに決めたのでした。

日本で初めてコージー本舗が発売したつけまつげ第1号
日本で初めてコージー本舗が発売したつけまつげ第1号

あえて「つけまつげ離脱者」「つけまつげ未使用者」をターゲットに

つけまつげ商品自体のクオリティーの高さは、保証できそう。しかし、今の令和女子たちに受け入れられるにはどうするか?市場を見ると女子の8割以上が「つけまつげ離脱者」「つけまつげ未使用者」。でも、私たちはその逆境をチャンスと捉えました。市場のほとんどを占める「つけまつげ離脱者」「つけまつげ未使用者」を今回のメインターゲットに据えることで、大きく巻き返せるはず。そのためには“従来のつけまつげ”が受け入れられない彼女たちのために、“全く新しいつけまつげ”をつくる必要がありました。

令和女子と“従来のつけまつげ”の間に立ちはだかる高い壁。まずそれらと向き合う必要がありました。その壁とは、「派手そう/難しそう/選びづらい」の3要素。これらのネガティブ要素を払拭する新しいつけまつげとは?

従来の“つけまつげ”とは全く違う“新しいつけまつげ”とは

そこで私たちが目指したゴールは、「令和女子の価値観とライフスタイルに合う新・つけまつげ」をつくること。彼女たちは、マツエクをつけるし、マスカラも使う。つまり“まつげメーク”への需要は変わらずあるのですが、“つけまつげ”に対するネガティブなイメージ「派手そう/難しそう/選びづらい」が根強く残っていました。

その原因は、市場に出回っていたつけまつげのほとんどが、つけまブームだった10年前からほぼ進化しておらず、「派手/手間がかかる/ギャル向け」のままだったこと。ならば、令和女子のニーズに合わせてつくり変えてしまおう。

そこで私たちが注目した令和女子のインサイトは二つ。一つ目は「手間をかけずにナチュラルに盛りたい」という本音。二つ目は「多様な選択肢の中から自分らしさを選びたい」という時代背景。

そこで行きついた答えが、「10秒マツエク」という新コンセプトと、ナチュラルな中でもバリエーション豊かな16種の商品ラインアップ、さらにアイコニックなイラストが目を引くパッケージデザインです。

限界まで小型化し、面積の小さい売り場でもズラリと並べることが可能に。バラエティーショップでの映えも意識
着用モデルをオモテ面に出さず、多様な女子をアイコニックに表現したイラストのパッケージデザイン。お菓子や雑貨のような気分で選べる
着用モデルをオモテ面に出さず、多様な女子をアイコニックに表現したイラストのパッケージデザイン。お菓子や雑貨のような気分で選べる

サロンに行くより簡単、でもマツエクのようにナチュラルに盛れる。そして多様なテイストから気分に合わせて好きなものを選べる。そんな令和女子の心をくすぐる新商品を、これまでの価格から格段に下げた500円に設定。品質を一切落とさずにこの価格にチャレンジしたのは、日によってさまざまなファッションを取り入れる令和女子たちが、複数買いできるようにするためでした。

かくしてこの世に登場したDOLLY WINK 10周年リブランディング第1弾「新・部分用つけまつげ EASY LASH」は、予想以上のスピードで令和女子たちに広まっていきました。通常8万個売れたら大ヒットといわれる中、発売1カ月で30万個販売を達成。バラエティーショップでは売り切れるラインアップも続出。「#10秒マツエク」というハッシュタグでTwitterトレンドにも浮上。それは“つけまつげ”を超えて、アイメークの新常識として世の中に根付き始めた証しでした。

“つけまつげ”を超えて、令和女子の新常識へ

ターゲットの再設定、“つけまつげ”のリデザイン、そして復活へ。さて、令和女子にヒットするものづくりの秘訣とは一体何なのか?そのポイントは、まとめると三つです。

1.ブランドの本質(=“つけまつげ”の老舗)から逃げずに向き合うこと。
2.ブランド独自の価値(=コージー本舗の技術力×益若つばささんの提案力)
を最大化して、世の中と結び付けること
3.ターゲットの本音(=派手になりたくないけど、まつげメーク”への需要はある)を見逃さず、時代に合った存在価値を設定し直すこと。

そしてこれらを実現するために何より大事なのは、チーム一同が志を一致させ、共にゴールに向かうことです。

次回は、最近特にブームとなっているコンテンツなどを事例に、令和女子ならではの“推し”について分析していきます。

前列左から2番目の益若つばささんと、コージー本舗の皆さん、電通メンバー
前列左から2番目の益若つばささんと、コージー本舗の皆さん、電通メンバー

【電通ギャルラボ】

2010年3月設立。若い女の子を中心とする女性たちのパワーを活用し、企業だけでなく社会の活性化までを目指すプランニングチーム。
さまざまな角度から女の子たちのインサイトを分析し、幅広い事業領域でプランニングします。