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“ダボス会議”2020リポートNo.1

2020/03/04

【ダボス2020】待ったなしのサステナブルな社会の構築

世界経済フォーラムのオフィシャル写真からのイメージ
世界経済フォーラムのオフィシャル写真からのイメージ

例年1月下旬にスイス東部のダボスで行われる世界経済フォーラムの年次総会、いわゆる“ダボス会議”は、今年50回目を迎えました。

対話によって世界の課題解決に一役買ってきたこの会議も、今年は「潮目が変わった」といわれています。持続可能な社会の構築へ、焦りのようなものが感じられました。本連載では、“ダボス会議”2020から見た世界の潮流と、今年のトレンドを紹介します。

「サステナビリティー」一色のダボス

今年のテーマは「ステークホルダーがつくる持続可能で結束した世界」。所得格差や政治の分極化による社会分裂から、差し迫った気候変動による危機に至るまで、世界が直面する最大の課題に取り組むため、ステークホルダー資本主義(※)の確立に重点が置かれました。

※=ステークホルダー資本主義
株主の利益のみを優先するのではなく、顧客・取引先・地域社会などの利害関係者(ステークホルダー)全般への貢献を重視するべきという考え方


世界経済フォーラム(以下フォーラム)は1973年に「ダボスマニュフェスト」として「企業は、株主だけではなく社会全体の利益に貢献するものでなければならない」という考え方を打ち出しました。2020年度はこれを初めて見直し、「公平な課税、反汚職、役員報酬、人権の尊重を含め、現代における重要な問題に言及するステークホルダー資本主義のビジョンを示す」と刷新しています。

2019年8月にアメリカのCEO組織「ビジネスラウンドテーブル」が企業は株主第一主義ではなく社会的責任を重視すると打ち出したこともあり、「ステークホルダー資本主義」が今後の潮流となっていきそうです。

今年のグローバルリスクレポートの上位5位までを初めて気候変動関連リスクが独占したこともあり、年次総会への参加者にも例年以上に厳しく環境への配慮が求められました。

二酸化炭素の排出量を減らすためにできる限りのことをしようと、カーペットの量を減らすため会議場のレイアウトを変更。提供する食事も例年以上に地域で生産された食材と植物性の食事が中心となっていました。ペットボトルについても、本会議場への持ち込みは一切禁止。本会議場でのペットボトル提供も一切禁止され、今年は「脱プラスチック」が徹底されていました。

また交通機関の90%はハイブリッド車を使用し、参加者(世界のトップリーダーたちです!)への電車の使用を強く促しました。期間内に申し込めば運賃の半額を払い戻すなど、ただの渋滞対策ではなく、車使用そのものを抑制しようという「本気度」がうかがえました。この時期のダボスの渋滞も深刻なので、CO2排出も考えるとシャトルバスなどを促す運営側の言い分も理解できます。

一方で要人や企業トップの随行担当者からすればそう簡単な話ではありません。凍った道を歩かせるなんてとんでもない!と反発する場面も多くありました。いささか「いたちごっこ」な気もしますが、今後は「移動手段」自体を根本から考え直す必要があるかもしれません。

年次総会での取り組み
年次総会での取り組み

口だけのSDGsも冷たい目線

胸元にSDGsのピンバッジをつける人を東京でもよく見かけるようになりましたが、ダボスではピンバッジをつけたら終わり、ではありません。セッションへの登壇以外の場でも取り組みには厳しい視線が注がれています。

今年は一躍有名になったグレタ・トゥーンベリさん以外にも、世界各地から持続可能な社会の構築を目指す若者が会議に参加しました。若者たちは要人や企業トップが彼らを諭すようなことを言っても、ひるまずに持論を展開しました。若者たちはいたって真剣で、その焦りは「口だけのSDGs」は無意味であり、企業は地に足の着いた「本気」の行動が求められる、という空気をつくり出していました。

今回の会議でひときわ目立ったのは、インドネシアでプラスチックごみをなくすため、レジ袋廃止に取り組むNGO「バイバイ・プラスチックバッグ」を創始したメラティ・ワイゼンさん(18)。

「スーパーマーケットの棚に何を並べるか、決めるのは私たちです。市民の力で変えていくのです」と熱く訴求し、会場内は「若者の声を聞かなければならない」という雰囲気に包まれていました。

世界経済フォーラムの立ち上げた1兆本の植樹をする(1t.org1t.orgウエブサイトより引用)
世界経済フォーラムの立ち上げた1兆本の植樹をする1t.org(1t.orgウエブサイトより引用)

今回フォーラムが立ち上げた1兆本の木を植林するイニシアチブはアメリカのトランプ大統領の基調演説の中でも出ていました。しかし若者たちは「そんなのでは間に合わない」と冷ややかです。

スポンサー企業も各社なりの取り組みをしており、例えばチューリッヒ保険は毎年会場外で配っている青い帽子を、今年は配った数だけ植林するというキャンペーンに変更していました。

対話は、ますます重要視される

そんなに環境が重要ならば雪山に集まらず、オンラインで会議をすればCO2もごみも減らせていいのではないか、と考えるかもしれません。しかしステークホルダー同士が「対面し、握手する」ことはコミュニケーションの上では重要と捉えられています(もちろん、地理的・時勢的な事情がある場合は、相手の心境をおもんばかって対面しないという判断も必要です)。

そのため、場外の世界経済フォーラム主催のセッションもこれまであったOpen Forumに加えて、企業がテーマを出すIce Villageというものができました。

各企業や団体主催のプライベートのイベントやハウスも例年通りの盛り上がりでしたが、こういうところで出会い、握手し、議論することが新たなアイデアやイノベーションを産み出す第一歩です。対面重視の会議や会談はやはり今後も増えていくのではないでしょうか。

次回は、去年から今年にかけて盛んに取り上げられるようになった「メンタルヘルス」について詳しく解説します。