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コロナ禍における企業PR活動No.3

2020/06/09

コロナ禍で評価を高めるPRとは?~海外事例から見る五つの特徴~

危機が生じた際にどう対応したか、によってレピュテーションを向上させることも、損なうこともあります。

多くの人々が命の危険と経済的困窮にあえぐコロナ禍では、

「人々にとって必要で実効力のある政策をどれだけ迅速に実行できたか」

によって国家指導者の支持率が上下しました。

経済界においても、特に業界のリーディングカンパニーとして名高い企業は、従業員やサプライチェーン、業界、消費者などのステークホルダーに正面から対峙し、パンデミックにどう対応するかについて意志を示し、行動する必要が生じました。

「多くの生活者や産業が生き抜くための対応・コミュニケーションを取り、それが他社より抜きん出ている企業」

はステークホルダーとの関係を強固にすることに成功しています。

筆者は普段、ステークホルダー調査や報道・SNS分析などを通じて国内外企業の広報評価や広報企画の策定を支援する業務に携わっており、今回は新型コロナウィルス(Covid-19)をめぐる海外企業のコミュニケーション事例を分析しました。

成功事例から五つのポイントを導き出しましたので、ご紹介します。

  1. 新型コロナウイルスをめぐる重要課題への強力な取り組み
  2. 社会や業界への行動変容の提案
  3. 事業環境好転のアイデアと実践
  4. 従業員やサプライチェーンへの配慮
  5. 国民や消費者を力づけ、希望を与えるメッセージ

この五つは、多くのトップ企業で複合的に実践されています。

1.新型コロナウイルスをめぐる重要課題への強力な取り組み

重要課題として、

  • 新型コロナウイルスとの戦いに必須の医薬品・医療設備の開発提供
  • 医療従事者支援
  • 人々の生活や経済基盤の確保

がまず挙げられます。医療と直接関係しない企業でも、三つ目の「人々の生活」に貢献する発信はできるケースが多いでしょう。

ユニリーバはコロナ禍が拡大する中、

せっけんを生産する企業として、せっけんをより簡単に人々が入手できるようにし、効果的な手洗いを啓発する義務がある。

と声明を出し、グローバルに手洗い啓発キャンペーンを展開しています。

新型コロナウイルスを拭い去るために必要な手洗い時間は20秒といわれています。そこで、文字と数字だけが登場する“Take care, be safe”というテレビCMを同社のブランド「ダヴ」で展開しました。20秒からカウントダウン形式で、手を洗う音とともに時間の経過を表示し、

私たちはあなたがどのせっけんを使うかは気にしない、気にしているのはあなたと同じことーーあなたと、みんなのために。

と手を洗う人々に話しかけるメッセージを入れ、#WashToCareのハッシュタグで締めくくっています。

また英国政府と協力し、衛生習慣が定着しておらず、医療が十分に行き届いていない途上国において、10億人をターゲットとするキャンペーンを行っています。バスの停留所に屋外手洗いステーションを設置したり、若年層に影響力のあるインフルエンサーを活用し、せっけんを使った手洗いの有効性を訴求しています。

このように、ワクチンが世界に行きわたるまでの間、衛生水準の向上によって多くの生命を守ろうとしているのです。

2.社会や業界への行動変容の提案

3月初旬に英国でも新型コロナが急激に拡散し、食料などの生活必需品のパニック買いが発生したため、商品の需給バランスが崩れました。

そんな中、ソーシャルディスタンスを早くから導入した英国最大手のスーパーマーケットチェーンのテスコは、テレビCMで「安全措置を講じたスーパーで顧客が商品を購入するまでの流れ」を細やかに説明し、社会に浸透させています。

同社のルイスCEOは

Together, We Can Do This(いっしょに乗り越えよう)

と、何度も声明文を出し、物資供給や消費者の状況に応じて、実店舗やオンラインの購買行動を制限しました。

3月下旬には新型コロナと最前線で闘うNHS(国営医療サービス)関係者が、「仕事を終えてからスーパーに来ても、必要物資が売り切れていて買えない」とSNSで泣いて訴える様子がメディアで取り上げられました。

テスコはこのような声に応えるべく、医療従事者や高齢者が優先的に店舗で買い物できる時間を拡大。

他の消費者はその時間の来店を遠慮してほしい。

と度々消費者に要請しています。その後、対象を介護施設関係者にも拡大した他、通常の購入時間においても、NHSと介護施設関係者が優先的に購入できるようにしました。

テスコが行った混乱期における丁寧な消費者とのコミュニケーションは、生活者に秩序を守るよう促すことで、あらゆる人々に必要な物資が行きわたることに貢献しています。

3.事業環境好転のアイデアと実践

生活必需品以外を扱う小売業の多くは、新型コロナによる世界的な店舗休業で売り上げが大きく減少しました。

ナイキも例外ではなく、中国では2月に75%の店舗が休業し、グローバルでの売り上げも激減しました。

その間、同社は中国で外出を制限された多くの人々に

趁此刻,蓄力吧(今こそ体力をつけよう)


と呼びかけて、Nike Training Clubアプリを使って自宅でエクササイズするよう促しました。エクササイズをした人の多くは、自ずとナイキのオンラインストアにアクセスし、その結果、オンラインでの商品購入が36%増加しています。

その後、同社は中国での成功事例を世界でも展開しようと、同アプリの米国でのサブスクライブ料金を無料にし、欧米でも著名なアスリートたちとフォロワーがさまざまなトレーニングを競うインスタグラムキャンペーン”The Living Room Cup”を展開。

Play Inside(家で運動しよう)

Play for the world(世界のために運動しよう)


を呼び掛け、スポーツのプロからアマチュアまでが家庭でエクササイズを行う、という新しい日常を形成し、ビジネスの好転につなげようとしています。

4.従業員やサプライチェーンへの配慮

多くの企業が従業員の健康と生活を守るために最善を尽くし、働く人々を気遣い、その働きに感謝するメッセージを発信しています。

もちろん、従業員の雇用を維持できないなど、ネガティブな判断をせざるを得ないケースもあります。そんなときこそ、トップメッセージが重要になります。

世界トップのホテルチェーンであるマリオットは経営不振に陥り、3月中旬にはグローバルで従業員の無給休暇を発表したため、従業員は失意のふちにありました。その2日後に、同社ソレンソンCEOはビデオメッセージに登場し、全世界の従業員に思いを届けました。

同氏は率直に

当社の宝である皆さんに伝えたくはないが、今は未曽有の危機」と述べ、「しかし、世界コミュニティーはいずれ良くなる。ゲストはまた美しい世界を旅したくなる。その偉大な日が来たら、ゲストを温かく迎え、ケアしよう。われわれは世界に名をとどろかせている。

と語りかけ、さらにCEO自身が2020年中は無給で働く、と発表しています。

率直に会社の苦境を共有し、自身も従業員と同じ無給の立場になる、と表明したこのトップメッセージは多くの従業員の心を打ち、「従業員が状況を理解し、身の振り方を早く検討できるように配慮した」とメディアでも高く評価されました。

5.国民や消費者を力づけ、希望を与えるメッセージ

企業の中には、これまで数々の危機を克服してきた実績をもとに、新型コロナにも勝てる、という力強いメッセージを発信しているケースもあります。

ゼネラルモーターズは同社サイトにて、

世界大戦という過去の国家の危機に際し、GMと自動車業界は、常にソリューションを開発するよう期待され、国を支援してきた。

新型コロナにおいても世界が勝利するために、GMの能力と工夫が役立つと信じている。

と述べています。

また、コカ・コーラCEOも声明を出し、

当社には正しい行いをしてきた歴史があり、今回も同じ。コカ・コーラとコミュニティーは、より良き未来のために力を合せれば、立ち直ることができると信じている。

と語っています。

このような力強いメッセージは、不況や感染の闇の中で光が見えない人々を勇気づけると同時に、「この企業ならわれわれを助けてくれる、信頼できる」と評価を上げることにも役立ちます。

人々を勇気づけ、希望に導く力強いメッセージを発信できるか否かも、国難や世界的困難が生じた際に必要なポイントです。

まとめ

以上、コロナ禍で企業評価を高めるコミュニケーションの五つのポイントについて、それぞれ該当する海外事例をご紹介しました。

いずれの事例も

  1. 自社の理念やパーパスに沿ってどのような貢献活動を行うかを決定し、
  2. 強い意志で取り組む決意表明を行い、
  3. 変化するステークホルダーのニーズを把握しつつ実施内容を調整し、オウンドメディアや決算発表の機会を活用して実施状況をアップデートしていく

というものでした。

新型コロナによるパンデミックの前と後では企業活動とコミュニケーションの成否により企業評価が大きく変わってしまう、との見方があります。

特に、ダメージの大きかった国々においては、今後のコミュニケーション戦略を検討するうえで、進出企業は自社の評価がどのように変わったかを、調査を通じて把握する必要があります。

パンデミック下でも社会から好意的な評価を得ることに成功しているグローバル企業は、今回お伝えしたように、自社が何者かを改めて国内外のステークホルダーに伝え、信頼を勝ち得ているのです。

多くの人々の命や生活に関わる危機だからこそ、今、社会に役立つために何をすべきかを明確にして、人々を本気で救済する企業と、そうでない企業を、ステークホルダーは冷静に見定めています。

今後も再度の感染拡大が懸念されていますが、感染への備えを盤石にすると同時に、ステークホルダーからの信頼を高めるためにも、企業がどのように貢献し、それを伝えていくべきか再確認してみると良いのではないでしょうか。