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「キャリアデザイン」って、なんだ?No.1

キャリアとは、「道筋」のことである。

2020/07/01

「アルムナイ」という取り組み(制度)を、ご存じだろうか?元々は、「卒業生/同窓生/校友」を意味する言葉で転じて、「企業のOBやOGの集まり」を意味するようになった。海外では、一度、企業を離れたアルムナイを、貴重な人的資源して有効活用することが、ごく普通に行われている。本連載では、そうした「アルムナイ」をこれからの事業戦略の核たる制度として捉えていく潮流を通じ、「キャリアデザイン」というものの本質に、迫っていきたい。
 

そもそも「キャリア」とは、何か?

「キャリア」という言葉を日本語訳してください、と言われたら、どう答えるだろう?多くの人が「経歴」「実績」と答えるに違いない。「成功」や「出世」、もしくは「社会的な地位」や「肩書(役職)」という声が上がるのかもしれない。なので、「キャリアを生かす」とか「キャリアを捨てる」という使われ方をする。「キャリアウーマン」と言われれば、社会的地位を持つ働く女性、をイメージする。「キャリアアップ」と言われれば、すなわち出世や昇進のことだ。

もちろん、英単語の「career」に、そのような意味もある。しかしながら、英和辞典を開いてみてほしい。一番上に書いてある日本語訳は、「生涯」「一生の行路」だ。「生涯を生かす」「生涯を捨てる」では、文章として成立していない。
「生涯ウーマン」「生涯アップ」に至っては、まるで意味不明だ。

そもそも「career」の語源は、ラテン語で「馬車が通った後にできる轍(わだち)」のこと。つまり、キャリアとは「道筋」のことなのだ。過去に歩んできた道のり、現在、見ている風景、感じている風景、その先に広がる未来…。そのすべてが「キャリア」ということになる。

キャリアデザインイメージ画像

その上で、昨今、社会に浸透しつつある「キャリアデザイン」という言葉ついて、考えてみたい。上記の整理によれば、「成功(や出世の方法)をデザインする」という解釈は、間違っていることに気付く。そもそも、成功や出世をデザインする方法があるのであれば、誰もが実践しているはず。

キャリアデザインとは、「人生の道筋をデザインする」ということなのだ。成功や出世をデザインするのではなく、これまで歩んできた道のりや、今現在、自身が立っている場所を正しく認識し、これから進んでいくべき道をデザインすることは、誰にもできる。もちろん、成功が約束されているわけではない。苦労も、失敗も、あるかもしれない。でも、歩みを止めるわけにはいかない。キャリアデザインを止めてしまうことは、生涯を止めてしまうことなのだから。「年功序列」や「終身雇用」が崩れつつある中、「キャリアデザイン」は、今、もっともホットで個々人が、そして、企業が、今まさに対峙すべきテーマといえる。

そもそも「人事」とは、何か?

「キャリア」同様、「人事」というワードにも、固定化したイメージがある。人事と言われて、どんなことをイメージするだろう?管理とか、支配とか、懲戒とか、評価とか、出世とか、根回しとか、左遷とかといったことを、どうしてもイメージされるのではないだろうか?でも、そもそも「人事」というコトバは、

「人事に煩う」(=人間関係に苦労する)
「人事を尽くす」(=人間に出来ることをやりきる)

という使われ方に見るように

「人間関係」(=リレーションシップ)
「人間にできること」(=マンパワー/人類の英知)

ということを表しているもの。広告的な視点で言うならば、前者は「マーケティング」であり、後者は「クリエイティビティー」ということ。これからの「人事」、これからの「キャリアデザイン」が注視すべきは、まさにその視点ではないだろうか。キャリアのタネをまく。キャリアを芽吹かせる。キャリアを育てていく。一生涯の道のりを、自らデザインする。企業はそれを、全力でサポートする。そこには、マーケティングのような冷静な分析力とクリエイティビティーあふれるワクワク感が不可欠だ。

本連載では、これからの人事やキャリアの在り方を端的に示す事例、現象としての「アルムナイ」、および、退職で終わらない個人と社会の新しい関係性の構築を目指す「電通アルムナイチーム」の取り組みを紹介しつつ、社内外のさまざまな職種、さまざまな立場の方々からさまざまな視点でコメントを寄せていただくことを通して、「キャリアデザイン」の本質と未来について、考察していきたい。

2018年に行われた電通アルムナイ・パーティの様子
2018年に行われた電通アルムナイ・パーティの様子


電通キャリア・デザイン局大門氏と、電通OB酒井章氏(クリエイティブ・ジャーニー代表)によるアルムラボでの対談記事は、こちら