loading...

令和女子のキザシNo.5

令和女子の当たり前?マッチングアプリ最新事情。
~「マッチアップ」編集長・伊藤早紀さんと、令和女子の恋愛観を考える~

2020/07/10

令和女子と大人たちとの認識の「ズレ」を解消しながら、これからの若年女性とのコミュニケーションのヒントを見つける電通ギャルラボの連載第5回。今回は、ITの進化で変わる新しい“出会いのカタチ”であるマッチングアプリに注目し、彼女たちの「恋愛観」をひもときます。

大人たちが思うよりもずっと軽やかに、カジュアルに、マッチングアプリを使いこなす彼女たち。その背景には、どんな思いやインサイトが隠されているのか……?マッチングアプリのトリセツとなっているマッチングアプリ総合メディア「マッチアップ」は今や、月間100万PV。この数字からも若い男女からのニーズが高いことが分かります。令和女子の恋愛にはもはや欠かせないツールであり、これを知らずして今や恋愛を語れない!「マッチアップ」編集長の伊藤早紀氏とギャルラボの大蔵桃子氏が、イマドキ女子の恋愛をテーマに語り合いました。(https://match-app.jp/

プロフィール

<目次>
マッチングアプリが確実に「来る!」
令和男女は、「恋愛に興味がないように見える」だけ
SNSでの恋愛は危険? スクショリスクを回避するには?
あえてスマホを放置する? 令和女子の恋愛テクニック

 


マッチングアプリが確実に「来る!」

大蔵:伊藤さんは、「マッチングアプリソムリエ」として活躍していらっしゃいます。具体的にはどのような活動をされているのでしょうか?

伊藤:「マッチアップ」やテレビ、SNSなどを通じて、アプリの魅力や最近の使われ方、トレンドなどを発信しています。マッチングアプリに注目したのは、私自身ががっつりやり込んでいたからです(笑)。キラキラした恋愛に憧れて上京し、マッチングアプリを使っていろいろなタイプの男性に会うようになり、そのうちに「アプリで出会うって当たり前のことなんだ」「恋愛の楽しさを伝える仕事がしたい」と思うようになって……。2017年に「マッチアップ」を立ち上げました。

2017年といえば、ちょうど「タップル」や「with」などのマッチングアプリが浸透してきたタイミング。登録者数がどんどん増え、マネタイズの兆しが見えてきて、確実に「来る!」という実感がありました。時流に乗りつつ自分のノウハウを生かすことで、活動が広がってきたように思います。

(参照:2019年版 ブライダル産業年鑑)

大蔵:実際に、マッチングアプリは利用者数をぐんぐん伸ばして、今や若い男女の当たり前のツールになっていますよね。市場規模を見てみると、2013年で32億円だったところから、2020年には470億円が予想されており、伸長率は一目瞭然です。

令和男女は、「恋愛に興味がないように見える」だけ

大蔵:「恋愛しない若者が増えている」といわれる中、なぜマッチングアプリの登録者が増えているのでしょうか?「草食系男子」や「若者の恋愛離れ」という言葉が聞かれるようになって久しく、恋愛に興味を持たない人が増えているようにも見えますが……。

伊藤:それは、若者が「恋愛に興味を持たないように見える」だけ。若者は、ちゃんと恋愛を求めていると思いますよ。平成時代によく見られた「プリ帳のネタはだいたい恋愛」とか「マックで3時間も恋バナ」とか。それが今はSNSや動画という形で令和女子の恋愛欲求を満たしていると思います。YouTubeを使って自分で恋バナを発信することもできるし、NetflixやAmazon プライムで恋愛リアリティーショーを楽しむこともできる。スマホが普及したことでエンタメのチャンネルが爆発的に増えて、“恋愛一本足打法”みたいな人が減っただけなのではないかなと思います。恋愛はしたい、興味がある、けれど、頭の中に占める恋愛の比率は昔よりもやや低めというか。決して、恋愛に興味のない若者が増えたわけではないと思います。

大蔵:確かに。私たちも若い男女の調査をよく行っているのですが、「恋愛したい?したくない?」と質問すると、「したい」という回答が、圧倒的に多く返ってくるんですよね。ところが「彼氏・彼女はいますか?」と聞くと、途端に数字が下がってしまう。「恋愛はしたいけれど、彼氏・彼女はいない」。それは、「恋愛をしない」とか「恋愛に興味がない」とかじゃなく、「昔に比べ余暇の選択肢が増えたから、濃度が薄まった」ようなものだと感じます。限られた時間やお金をさまざまなエンタメに割り振った結果、恋愛にかけられる原資が減ったというのも影響しているのかもしれませんね。


SNSでの恋愛は危険? スクショリスクを回避するには?

大蔵:「恋愛したい令和男女」が意外と多い、しかしガラケーを使っていた昔と比べて、今はリスクがたくさんありますよね。若い子たちと話すと「スクショリスク」というのをよく耳にします。

伊藤:そうですね、「SNSでの恋愛はリスクが大きい」というところが壁になっていますよね。今は、スマホで簡単にスクショ(スクリーンショット)が撮れてしまう時代。男女のやりとりをスクショされてこっそり共有されてしまったり、それによって慣れ親しんだSNSコミュニティーの雰囲気が悪くなってしまったり……。スクショリスクによって傷ついたり、コミュニティーが壊れてしまうのを避けたいという子が多いのではないかなあと思います。

マッチングアプリの場合は匿名なので、そもそもスクショを回したところで誰も興味を持ちません。知らない人だし、面白くないし。コミュニティーがぎくしゃくするリスクもありません。だから若い子たちは今、彼らにとって安全なマッチングアプリを選んでいるのだと思います。

大蔵:マッチングアプリそのものについての抵抗はないのでしょうか?「がっついているみたいで恥ずかしい」とか、「使っていることを知られたくない」とか。

伊藤:あまりないと思います。「恥ずかしい」「知られたくない」と言っているのは、ちょっと上の年齢層の方なのではないかと。10代、20代の子は、使っているのが当たり前ぐらいの感覚だと思います。おふざけも兼ねて気軽に登録し、友達と一緒に異性の写真をスワイプしながらワイワイ女子トークをする、そんな感じでカジュアルに使っていることが多いですね。

そもそも女子は、友達の口コミでマッチングアプリに登録することが多いんです。「友達から勧められたから」とか、「このアプリで彼氏ができたと聞いたから」とか。いい意味で、先のことはあまり考えていない感じ。災害も多いし、コロナもあるし、恐らく若い子たちのなかには、「先のことなんて分からない、予測不可能じゃん」という感覚があるんだと思うんですよね。ですから、「将来のことまで見据えていろいろやったけれど彼氏ができず最終的にアプリに行きついた」みたいな人はあまり多くない印象ですね。

大蔵:なるほど。勝手にぼんやりと「なかなか恋人ができない子が最終手段として登録するものかな」と思っていました。令和の女子は、もっとカジュアルに、当たり前に、SNSと変わらないような感覚でマッチングアプリを使っているんですね。

伊藤:そう思います。面白いのが、だからといって遊びで使っているわけでもないところ。リスクを回避して、楽しみながら、きちんと好きな人に出会っているという印象です。「普段使い」で「当たり前のもの」、でも「ちゃんと使っている」からだと思うのですが、最近では、結婚までたどり着いたカップルが披露宴の新郎新婦紹介で、「アプリで出会いました」とサラッと明言するケースも増えているそうですよ。特に女子は、恥ずかしいどころか思い入れが深いことが多いみたいで。記念日的な感覚なのか、それはもう「〇〇っていうマッチングアプリで結婚しました」みたいな体験談を話したがります(笑)。


あえてスマホを放置する? 令和女子の恋愛テクニック

大蔵:マッチングアプリを活用する際のノウハウや、令和男女ならではの恋愛テクニックはありますか。

伊藤:テクニックというほどではないのですが…。「デートのドタキャンを回避するため、こまめにメッセージを送る」というのは必須だと思いますね。

マッチングアプリで会う人というのは知らない人なので、情や義理のようなものがありません。ですから、ドタキャンが起こりやすい。ドタキャンの内容は「面倒になってしまった」とか「待ち合わせ場所までは行ったけれど、相手の容姿が好みじゃなかったから帰ってきた」とかいろいろですが、なにも対策をしないと結構な確率で、会えないままブロックされてしまうということが発生するんです。ですから、デートの約束をしたら、食べ物の好みを聞いて、食べログ3.5以上のお店を予約し、URLを送ってあげる……、そんなコミュニケーションをマメに行い、相手の気持ちをメンテナンスすることが欠かせないのです。

あとは、当日の待ち合わせをお店の中にしてしまうというのもポイントですね。お店待ち合わせの場合、店員さんに通されてしまったら帰ることができませんので(笑)。

大蔵:ドタキャン防止策ですね(笑)。ほかに、伊藤さんのTwitterにあった「トイレに立つときに、あえてスマホを置いていく」というテクニックも今っぽくて面白いなと思いました。

伊藤:トイレに立つときに席にスマホを置いていくと、「この子、こんなにオレのこと信頼してくれているんだ」思ってくれる男性が結構いる、っていうヤツですよね。イマドキ女子の恋愛テクニックです。

そのほか、「名前を間違わないよう、LINEの表示名に簡単なプロフィールを記載しておく」というのも今っぽいノウハウかもしれません。マッチングアプリは、100人にいいねを送って、30人とマッチングし、10人とメッセージをやりとりして、1人2人と会うという世界ですから。常に同時進行で、いろんな子とコミュニケーションを取らないといけないんですよね。例えば「『ペアーズ』で会った24歳の〇〇ちゃん」とか、LINEの表示名を変更して注意している人は多いと思います。

大蔵:なるほど、すごいテクニックですね(笑)。コロナ渦においては、今年5月、伊藤さんが運営されている「恋愛婚活ラボ」から、「若者の間でビデオデートが浸透している」という調査データを発表されてましたね
(参照:https://match-app.jp/all/147522)。

dineデータ

マッチングアプリで出会って、いいなと思った人とまずビデオで会話することで、確実性がより高まりそうですよね。

伊藤:確実性を高める方法として、最近は、収入証明書などを提出させるアプリや、口コミ評価ができるアプリなんかが出てきています。男性はいろいろとごまかせなくなってきています(笑)。初回は2対2デートでリスク回避をする、というテクニックなんかもありますよ。

といろいろ語ってしまいましたが、私は、大人でも若者でも、コロナ禍であってもなくても、恋愛の本質というのは変わらないものだと思っています。「駆け引きが楽しい!」「愛されてるのが好き!」「やっぱお金!顔!」とか。今っぽいテクニックやルールはたくさんありますが、結局のところ「若者だから」「大人だから」などのステレオタイプはないと思っています。とにかく「恋愛そのものが楽しい」と思える人を増やしたい。恋愛を楽しめる人はちゃんと好きな人を見つけられるし、成功すると思っているので。いろいろひっくるめて「恋愛、楽しい!」と思えるようなコンテンツを発信し続けていきたいと思っています。


総論

ITの進化によるツールの変化に伴い、恋愛をする上での手法や出会い方が変わってきたことで生まれたイマドキ女子の“新恋愛戦術”。そんな中でも恋愛の本質は昔から変わらないのだということが分かりました。
時代の流れは、「お見合い結婚」から、「恋愛結婚」へと移り変わってきましたが、これからは確実性の高いマッチングという名の新しい形の出会いのカタチが、どんどん増えていくのだと感じました。

5回にわたって連載してきました「令和女子のキザシ」。イマドキ女子のイマドキな行動・インサイトが垣間見られたと思います。2010年に活動をスタートさせ10周年を迎えたギャルラボですが、この夏、ギャルラボがGIRL'S GOOD LABに生まれ変わります。メンバーそれぞれ、さまざまな活動を企画しておりますので、ご期待ください!