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とまどいの社会学もどかしさの経営学 #01

杉浦 正和

杉浦 正和

早稲田大学ビジネススクール教授

社会はいま「とまどい」の中にある。そうした「とまどい」の下、経営はかつてない「もどかしさ」を抱えている。先行きは、不透明で、不確実なことだらけ。得体の知れない不安が広がっている。

杉浦正和先生

不安にかられると、人も企業も社会も、ついつい思考を停止してしまう。「考えるほどに、不安はつのる。ならばいっそ、考えるのをやめてしまおう」。そうした意識が、ビジネスを停滞させ、失速させているのではないだろうか。

本コラムでは「とまどい」や「もどかしさ」の正体を解き明かすことで、「不確実な時代のビジネスのあり方」について、考察を深めていきたいと思う。

幸運学 書影

『不確実な世界を賢明に進む「今、ここ」の人生の運び方 幸運学』杉浦正和著
企業の幹部候補生が数多く通うという「早稲田大学ビジネススクール」の教授が「運」の正体について解き明かす。運の良い人と悪い人は何が違うのか?自分でコントロールできる運と、コントロールできない運をどう扱うか?開運財布を買うよりも、冷凍餃子をおいしく焼けるほうが幸運に恵まれる?「運の教科書」で、人生を賢く強化。日経BP
 

ビジネスというものを、科学してみよう。

ビジネスを「科学」せよ、と言われるとMBAに代表されるような「統計学」や「経営学」を思い浮かべて誰しもが、「ムズカシイもの」と敬遠しがち。(自分にはムリだと思ってしまう)でも、その一歩手前で考えれば、「微分」と「積分」の考え方さえわかっていればいい。

ところが、世の中のひとの多くは「微分」「積分」と言われると、ムズカシイもさることながら「メンドくさい」と思う。では、こう考えてみてはどうだろう?「微分」とは、一瞬、一瞬をどう生きるか、ということ。(時間をスライスするイメージ)「積分」とは、これまでどう生きてきたのか、ということ。(重ねてきた行動の総量)

そのイメージがもてると、なにが見えてくるのか?小学校のとき、算数の授業で習った極めてカンタンな「確からしさ」が見えてくる。「確からしさ(確率)」の意識をもって、世の中の現象を見ると「期待値」がわかる。「複利の構造」がわかる。「行動の指針」が見えてくる。モノ、コト、他人、おカネ……あらゆることに対する「センサー」が身につく。センス(=感性や勘といったあいまいなもの)ではなく、センサー、すなわち理性や具体的な数値で、現状分析や未来予測ができるようになる。

さて、ここが大事なところなのですが、センサーを身につけると、どういうことが起きるのか。「機会」と「確率」を、手に入れることができるようになるんです。機会とは、♣️未来開拓(キャリアの形成)と❤️関係構築(人との付き合い方)確率とは、♠️意思決定(たとえば経営判断)と♦️自己管理(資産管理など)
のこと。「確率」という数学用語に抵抗があるひとは、「機運」のことだとお考えになるといい。

幸運学 図解

「機会」と「確率」を操れると、未来への道筋がはっきりと見えてくる。無駄なく、わかりやすく、非常にシンプルな「未来像」が見えてくる。本コラムではそうした観点から、「不確実で、不透明な、いまのビジネスのあるべき未来像」を
全5回にわたって、掘り下げていこうと思います。
 

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著者

杉浦 正和

杉浦 正和

早稲田大学ビジネススクール教授

1982年、京都大学を卒業し、日産自動車に入社。海外企画部でマーケティングなどを担当。1990年、スタンフォード大学ビジネススクールでMBAを取得。経営コンサルティングのベイン&カンパニー、人事コンサルティングのマーサーを経て、シティバンクでリーダーシップ開発責任者、シュローダーでグループ人事部長などを歴任。早稲田大学ビジネススクールでは、2005年からコア科目「人材・組織」を担当し、その後二つのゼミ「人材・組織マネジメント」「戦略的人材マネジメント」他を担当。人材育成学会(理事)と多数の企業研修を通して、実践と学術の橋渡しを行なっている。   著書(単著):  『ビジネスマンの知的資産としてのMBA単語帳』日経BP、2012年  『MBA「つまるところ人と組織だ」と思うあなたへ』同友館、2014年  『入社10年分のリーダー学が3時間で学べる』日経BP、2017年

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