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不確実な時代の、ビジネスのあり方とは?No.2

とまどいの社会学もどかしさの経営学 #02

2020/08/13

社会はいま「とまどい」の中にある。そうした「とまどい」の下、経営はかつてない「もどかしさ」を抱えている。先行きは、不透明で、不確実なことだらけ。得体の知れない不安が広がっている。

杉浦先生

不安にかられると、人も企業も社会も、ついつい思考を停止してしまう。「考えるほどに、不安はつのる。ならばいっそ、考えるのをやめてしまおう」。そうした意識が、ビジネスを停滞させ、失速させているのではないだろうか。

本コラムでは「とまどい」や「もどかしさ」の正体を解き明かすことで、「不確実な時代のビジネスのあり方」について、考察を深めていきたいと思う。


不確実な世界とは、なにか?

私たちはいま、「不確実な世界」を生きている。これは、誰もが実感していることだと思います。「不確実な世界」の正体がわからないから、不安にかられる。その正体を見極めるには、まずは「確実な世界」「確実な時代」というものを、きちんと定義しなければなりません。

「確実な時代」とはなにか?それは、文化が支えてきた時代と言える。いままでの積み重ねの先に、未来がある。だから、みんなが安心して、前に進める。江戸の世の260年などは、まさにそれですよね?積み重ねてきた文化の上に、新たな文化を重ねていく。明治に入っても、それは変わらない。黒船が来ようが、蒸気機関が入ってこようが、街灯がともろうが、重ねてきた文化の上に、文化を上書きしてきただけのこと。日本人は、この「上書き」する力が、群を抜いて優れている。だから、敗戦にも、度重なる災害にも、めげることはなく前を向ける。

ところが、「不確実な時代」に、文化は通用しない。「上書き」は、一切通用しない。上書きができないとなると、途端にわれわれは不安になる。その不安こそが、本コラムのタイトルでもある「とまどいの社会学/もどかしさの経営学」の本質なのです。

『不確実な世界を賢明に進む「今、ここ」の人生の運び方 幸運学』杉浦正和著 企業の幹部候補生が数多く通うという「早稲田大学ビジネススクール」の教授が「運」の正体について解き明かす。運の良い人と悪い人は何が違うのか?自分でコントロールできる運と、コントロールできない運をどう扱うか?開運財布を買うよりも、冷凍餃子をおいしく焼けるほうが幸運に恵まれる?「運の教科書」で、人生を賢く強化。日経BP
『不確実な世界を賢明に進む「今、ここ」の人生の運び方 幸運学』杉浦正和著
企業の幹部候補生が数多く通うという「早稲田大学ビジネススクール」の教授が「運」の正体について解き明かす。運の良い人と悪い人は何が違うのか?自分でコントロールできる運と、コントロールできない運をどう扱うか?開運財布を買うよりも、冷凍餃子をおいしく焼けるほうが幸運に恵まれる?「運の教科書」で、人生を賢く強化。日経BP

グローバル化とは、なにか?

新型コロナウイルスは「グローバル」とは何か?ということを改めて浮き彫りにしました。「グローバル」というコトバには二つの意味があります。一つは「広がり」ということ。もう一つは、「塊(かたまり)」ということです。後者は、中国語では「全球的」と表現しますが、全世界での画一化が、一気に進む。これが、グローバルの本質なのです。

もうお分かりでしょう?新型コロナウイルスが、全世界の姿を「全球的」に変えてしまっているいまの状況そのものが「グローバル」なのです。

そもそも世界の歴史は、感染症がつくってきたといっても過言ではない。ペストでも、コレラでも、なんでもそう。人間とは愚かなもので、それらに打ち勝った瞬間、グローバル(全球的)の本質を、忘れてしまう。そもそも人類そのものが、感染症の病原体であるのかもしれないという意識を持てなくなってしまう。だから、国際紛争が後を絶たない。戦争だって繰り返してしまう。そのメカニズムについて、そろそろわれわれは本気で向き合うべきだと私は考えています。

ゼミで講義中の写真
ゼミで講義中の写真

リニアの時代は、もう終わっている

文化の時代にあっては、社会も経済も、直線的(リニア的)に推移していきます。右肩上がりであろうが、右肩下がりであろうが、です。ところが、不確実な時代にあっては、ものごとが「指数的」に変化していく。新型コロナウイルスのことを解説したグラフに見るように、直線的な変化ではなく、ぐいんと、爆発的に増幅するのです。それも、全世界的に。

ビジネスの世界でも、それは同じです。緩やかな右肩上がり、の時代はみんながみんな、のほほんと富を享受できた。しかしながら、指数的に膨れ上がる経済の下では、そうはいきません。莫大な富を獲得する人(企業)が出てくる一方で、その変化についていけない人(企業)は、あっという間に没落してしまう。「働き方改革」といったことを標榜し、行動する前に、まずはそのことに、私たちは気付くべきなのです。