とまどいの社会学もどかしさの経営学 #03
2020/09/10
社会はいま「とまどい」の中にある。そうした「とまどい」の下、経営はかつてない「もどかしさ」を抱えている。先行きは、不透明で、不確実なことだらけ。得体の知れない不安が広がっている。
不安にかられると、人も企業も社会も、ついつい思考を停止してしまう。「考えるほどに、不安はつのる。ならばいっそ、考えるのをやめてしまおう」。そうした意識が、ビジネスを停滞させ、失速させているのではないだろうか。本コラムでは「とまどい」や「もどかしさ」の正体を解き明かすことで、「不確実な時代のビジネスのあり方」について、考察を深めていきたいと思う。
リターンはコントロールできないが、リスクはコントロールできる。
前回は、私たちが今生きている「不確実な世界」の正体に迫りました。
そうした「不確実な世界」で、われわれはどのようにビジネスをしていくべきなのか?今回は、その点を掘り下げていきたいと思います。多くの経営者や、ほとんどの働き手の人もそうですが、売上高や利益率といった「リターン」を増やそうと、やっきになっている。でも、「リターン」なんてものは結果として表れるものであって、そもそも人がコントロールできるものではないんです。
コントロールできるのなら、話は簡単です。「売上高30%アップを目指すぞー!」「おー!」で達成できるのならみんなで掛け声をあげて、頑張ればいい。そうはいかなから、みんな、苦労しているんです。
リターンはコントロールできないが、リスクはコントロールできる。ここが、大事なところです。「リスクマネジメント」と言われると私たちは「危機回避」ということだけを思い浮かべてしまいますが、リスクには、「とるべきリスク」と「とるべきでないリスク」の2種類があって危機回避というのは、後者のこと。
対して前者は、たとえば「投資」とか、「スタートアップ」といったことでそこを恐れている企業は、必ずといっていいほど失速します。「とるべきリスク」の先に、リターンが望めるのであって、「とるべきリスク」を選択しない人や企業に、リターンがもたらされることはありません。
マネジメントとは、支配することではない。「整理」すること、である。
ホテルの「支配人」といったワードに象徴されるように、マネジメントということを「人やモノや組織やカネ」を支配することだと多くのひとは、思っています。思い込んでいるものだから、パワハラやセクハラが生まれる。けだし当たり前のことで、そもそもの原因は物事を「上下」の関係でしか、考えられないからなのです。
対して、リーダーシップとは何か?「上下」ではなく「前後」で物事を考えられる資質のことなんです。前を向くこと、前がどの方角にあるのかを見極められること。それは、未来を見通せる力がある、ということ。それが、リーダーシップの絶対条件です。
それを前提として、マネジメントというものを考えてみましょう。私は、「マネジメント=整理すること」だと思っています。管理するのではなく、小さな箱をたくさん用意して整理するイメージ。人材でも、設備投資でも、なんでもそうです。
会社にはなぜ、さまざまな部署があるのでしょう?整理をしたからです。人材を、適正な場所に配置して、力を発揮してもらうための「箱」なのです。文学的な言い方をするのなら「宝箱」なのです。多くの経営者にその意識がないものだから、「働き方改革を推進する」となると就業規則を改めてみたり、残業の量を監視したりする。そういうことではないのです。整理するのです。経営戦略も、組織体制も。整理するからこそ、前を向けるのです。そこから、正しいリーダーシップが生まれるのだと、私は思います。