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不確実な時代の、ビジネスのあり方とは?No.4

とまどいの社会学もどかしさの経営学 #04

2020/09/24

社会はいま「とまどい」の中にある。そうした「とまどい」の下、経営はかつてない「もどかしさ」を抱えている。先行きは、不透明で、不確実なことだらけ。得体の知れない不安が広がっている。

杉浦先生

不安にかられると、人も企業も社会も、ついつい思考を停止してしまう。「考えるほどに、不安はつのる。ならばいっそ、考えるのをやめてしまおう」。そうした意識が、ビジネスを停滞させ、失速させているのではないだろうか。本コラムでは「とまどい」や「もどかしさ」の正体を解き明かすことで、「不確実な時代のビジネスのあり方」について、考察を深めていきたいと思う。


そもそも、「分からない」とはなにか?

前回は、多くのひとがその本質を理解していない「マネジメント」と「リーダーシップ」についてお話ししました。今回は、人はなぜ物事の本質を理解できないのか、そもそも「分からない」というどういうことなのか、ということについて考えてみたいと思います。

多くの人は「分からない」ということを本質が、分かっていません。なぜ、分からないのだろう?その理由に、思いを馳せていないからです。

「分からない」理由には、大きく二つあります。一つは、複雑だから。もう一つは、不確実だから。こう整理しただけで、もうお分かりでしょう?複雑さを解消するには、マネジメントすればいいんです。不確実さに向き合うためには、強いリーダーシップが必要なんです。

書影
『不確実な世界を賢明に進む「今、ここ」の人生の運び方 幸運学』杉浦正和著
企業の幹部候補生が数多く通うという「早稲田大学ビジネススクール」の教授が「運」の正体について解き明かす。運の良い人と悪い人は何が違うのか?自分でコントロールできる運と、コントロールできない運をどう扱うか?開運財布を買うよりも、冷凍餃子をおいしく焼けるほうが幸運に恵まれる?「運の教科書」で、人生を賢く強化。日経BP

マネジメントとは、「ちゃんと」するということです。リーダーシップとは、「もっと」に向き合うということです。企業にとって、ビジネスにとって、このバランスこそが大事で、どちらが欠けていても、それは「破滅」や「死」へ向かっていることになります。

「ちゃんとする」ことだけを考えていては、緩やかな死へと向かいます。「もっと」だけを考えていては、カオス(混乱)が起こり、無茶苦茶な死が訪れます。私はこの二つのバランスのことを「デリケートバランス」と呼んでいるのですが、そのバランス感覚に基づいて「ちゃんと」「もっと」を実践できている企業が、どれだけあるでしょうか?

「Life」という英単語には、人生/生活/生命の三つの意味があります。新型コロナウイルスに翻弄されている現在の状況は、「生活」と「生命」の間で社会全体が揺らいでいる、ということだと思います。どちらを優先すべきか、ということではありません。生活を優先するあまり、生命を失っては元も子もありませんし、生命を優先するあまり、ライフラインを絶ってしまっては、これまた意味がありません。

大事なことは、バランスなんです。社会全体が、正しいバランス感覚を維持し、共有することなのです。パニックを防ぐには、それしかありません。ビジネスの世界でも、まったく同じことが言えるのではないでしょうか?

極限するならば、日本人はビジネスというものが分かっていない

さあ、いよいよ最終回へ向けてのラストスパートです。多くの日本人が考える「仕事」とは、ビジネスではなく、インダストリーのことなんです。インダストリー=産業/勤勉ということですから、「まじめに、産業を盛り立てること」=「仕事をすること」だと思い込んでいるんですね。対してビジネスとは、「投資をして、リターンをあげること」なんです。

そんなことは、スタートアップ企業の社長がやることだ、と思っていませんか?そうではないんです。人生の貴重な時間や、ご自身の能力を、最大限に、かつ効率よく活用する。その対価として、給料が得られる。それが、ビジネスというもの。そのビジネスを、より楽しく、豊かなものにしていくために人間関係を構築する。よりよい方法を考える。クリエイティビティーを発揮する。これは、あらゆる職業に共通することだと思います。

一言で言うならば、働く前に、体を動かす前に、まずは考えましょう。ということです。考えるとは、なにか。整理することです。整理した上で、単純な算数で状況を把握し、望ましい未来をイメージすることなのです。

幸福の図