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「People Driven Marketing® 実践ウェビナー2020」レポートNo.1

ニューノーマル時代のマーケティング、三つの必須キーワードとは

2020/11/20

電通による“人”基点のマーケティング「People Driven Marketing(※)」(ピープル・ドリブン・マーケティング)も、4年目を迎え、「PDM4.0」として大きく進化しました。 

本連載では、電通人と企業のゲストたちが、マーケティングとデータの未来を語った「People Driven Marketing® 実践ウェビナー2020」3日間の模様を、ダイジェストでレポートします。

※People Driven Marketing
https://www.dentsu.co.jp/business/pdm/
電通が提唱する、データ&デジタル時代に対応した“人”基点の統合マーケティング・フレームワーク。課題を人(People)基点で捉え直し、電通グループが持つ最先端のマーケティング手法を統合して、顧客の持続的な成長を支援していく。

 

※課題解決マーケティング情報サイト「Do!Solutions」でも、本ウェビナーの特集ページを開設しています。より詳細なレポートはこちらへ。
※課題解決マーケティング情報サイト「Do!Solutions」でも、本ウェビナーの特集ページを開設しています。より詳細なレポートはこちらへ。

 

デジタル&データ時代に対応する、“人”基点の統合マーケティング「PDM」

濱窪大洋氏、高橋学氏

「New Normal時代のマーケティングに必須な3つのキーワードとは?」と題したセッションでは、電通でデータドリブンマーケティングを推進する濱窪大洋氏と、ソリューションディレクターを務める高橋学氏が登壇。

近年の社会状況や人々の消費行動の変化を踏まえ、“人”基点のマーケティングの実現に必要な三つのキーワードについて語りました。

デジタルの進化で顧客と企業が“Always on”でつながり、人の意識と行動の可視化が急速に進む現代。

この時代に対応するマーケティング・フレームワークとして、2017年に電通が発表したのが「People Driven Marketing」(以下、PDM)です。

顧客の意識データと行動データを基に、“最適な情報”を“最適な対象者”に“最適な場所”と“最適なタイミング”で届けることで、企業のマーケティング目標を達成することを目指してきました。

PDMの内容は年々進化しており、2019年は「PDM3.0」として、デュアルファネル化する企業のマーケティング活動全体への支援活動を進めてきました。

「従来の電通が得意としていた“新規顧客の獲得ファネル”に加え、“既存顧客の管理ファネル”を組み合わせたものがデュアルファネルです。認知~購買領域と、CRM(顧客関係管理)領域を統合させて、顧客のLTV(顧客生涯価値)向上を目指します」(濱窪氏)

PDM 3.0

しかし2020年は社会が激変し、デュアルファネルの取り組みにも変革が起きています。濱窪氏はまず「2020年に人々の生活や意識がどのように変わったのか」を解説しました。

2020年はキャッシュレス、D2C、デジタルコミュニケーションが急速に浸透

コロナ禍で多くの人々が自宅で過ごすようになり、外出する時間は激減しました。その中で、濱窪氏はキャッシュレス決済の利用率に着目。「感染拡大防止の観点から、多くの局面で現金を使う割合が減ってきています」と、キャッシュレス決済が浸透していることを指摘しました。

キャッシュレス決済が浸透

また、濱窪氏は、「外出時間の減少に伴い、もともと通信販売と親和性の高くなかった業種もEコマースに注力するようになってきました」と指摘し、Eコマースの売り上げが伸長しているデータを提示しました。

中でも、「D2C」(※Direct To Consumer。小売店などを挟まず、企業が自社サイトなどで直接商品を販売するビジネスモデル)について、「化粧品などの業界でも、大手メーカーの参入が報じられています。Googleの検索トレンドなどを見ても、“D2C”の検索が急上昇しています」と、市場のポテンシャルに期待を示しました。

そして濱窪氏がキャッシュレス、D2Cの台頭と並んで挙げたもう一つの重要な変化が、情報接触のデジタルシフトです。人と人のコミュニケーションがデジタル中心となるのに伴って、情報源としてもデジタルの重要度が高まっています。

「商品やサービスを知るために、ソーシャルメディアや情報ブログ、企業の公式サイトが役立つと感じる方が増えています」(濱窪氏)

Twitterがきっかけで、ホットサンドメーカーを購入。そこから得た発見とは?

こうした人々の意識や消費行動の変化に対して、マーケティング活動はどうあるべきか?そのひとつの答えとして濱窪氏が挙げたのが、Googleが提唱する消費行動の概念、「パルス(瞬間的に流れる電流)型消費」です。

従来の購買プロセスは「認知→興味→比較→検討→購入」という流れが主流でしたが、パルス型消費は「明確な理由がないまま、気に入った商品を購入する」という瞬間的な消費行動です。

昔から日用品などでは、いわゆる衝動買いが日常的に起きていましたが、スマートフォンの普及で時間や場所に関係なく商品・サービスを購入できるようになり、洋服や家電でもパルス型消費が起きています。

濱窪氏は「スマホを使っていて、偶然知った商品を“その場”で買うことに躊躇がない生活者が増えている」というデータに触れ、「最初は驚きましたが、よく考えると自分にも心当たりがあります」と述べます。

「私も先日、あるTwitterの投稿を見て、ホットサンドメーカーを購入したのです。私以外にも同様の方がたくさんいらっしゃったようで、後日、その商品が品薄になったという記事を目にしました」(濱窪氏)

この購買プロセスは、「Twitterの投稿を見る→購入する」という典型的なパルス型消費ですが、「振り返ってみると、“伏線”がありました」と濱窪氏は言います。

同氏は、緊急事態宣言による自粛期間中、料理をする機会が増え、レシピサイトをよく見ていました。加えて、「ソロキャンプの動画が面白い」という話題を目にしてYouTube動画を閲覧したり、アウトドアグッズを購入したそうです。

これら一連の流れと、「Twitterでホットサンドメーカーの情報を見た」ことに、表向きの紐付きはありません。しかし、小さな要素が伏線として積み重なった結果、最終的な「Twitterを見てホットサンドメーカーを購入する」体験につながったのではないかと濱窪氏は言います。

「この体験をマーケター目線で考えると、最後にTwitterを見るまでの伏線上にある行動は全てデータとして存在している。こうした“伏線”は、購入行動のトリガーに至るヒントや予兆になるのではないでしょうか」と述べました。

つまり、商品を認知する“前”のさまざまな情報接触をもマーケティングデータとして捉えることが、マーケティング戦略において重要になるというのです。

「伏線となる情報接触が蓄積され、何かがトリガーとなって購入に至る」という考え方は、新規顧客獲得だけでなく、既存顧客の管理ファネルにも大きな影響を及ぼします。ロイヤル顧客の行動や、彼らが拡散してくれる商品の評判が、認知前の新規顧客に影響を与える“伏線”や“トリガー”になるからです。

濱窪氏はその観点から、「CRMは、既存顧客のLTV向上だけでなく、新規顧客獲得のためにも重要になっていくでしょう」と語りました。

世界的な個人情報保護の強化。開示する情報を生活者が選べる時代に

濱窪氏が述べたように、生活者の行動データのデジタル蓄積は急速に増え続け、マーケティングへのデータ活用も加速しています。

一方で、世界的に「個人情報保護の強化」が推進され、生活者の行動データをマーケティング活用することに慎重な姿勢が求められる情勢もあります。

濱窪氏に代わって登壇した高橋氏は、個人情報保護の重要性と、それを踏まえた上でのマーケティング活動に必要な三つのキーワードについて解説しました。

高橋氏はまず、欧州や米国におけるネット上の個人情報保護強化をめぐる動きを整理。AppleやGoogleといったプラットフォーマーが、従来のデジタル広告の主力を担ってきたCookieの利活用を大きく制限する方向に進んでいることに触れ、さらに、日本でも公正取引委員会主導で、同様の動きが起きていることを紹介しました。

「Cookieの利用方法を生活者自身が選べる仕組みを導入する企業も増えています。自分の個人情報をどこに開示するかを、生活者自身が選べる時代になっていくということです」(高橋氏)

しかし、すでに現代のビジネスは、生活者データなしには成り立ちません。こうした時代には、企業もデータ活用に対する姿勢を改めていく必要があると、高橋氏は言います。

生活者のためのPDMの実現に欠かせない、三つのキーワード

現在の社会状況は、コロナ禍の影響でデータ活用の「アクセル」が踏まれると同時に、個人情報保護の動きで「ブレーキ」も踏まれている状態です。 

今後重要になるのは、生活者にポジティブな意味で「データを開示したい」と思ってもらえるアプローチ。「私たちは、それをPDM4.0としてアプローチしていきたいと思っています」と高橋氏は述べ、具体的な方向性を示しました。

生活者がすでに情報を預けていて、“ここに情報を開示しないと自分の生活は成り立たない”というサービスを提供している企業と組むこと。そういった企業と組みながら、自社と生活者がつながり続けるデータ基盤をつくること。生活者に“個人データをつなげてもかまわない”と思ってもらえる関係性を結んでいくこと。

高橋氏は、「個人情報保護のルールをきっちりと守りながら、データ活用していくことが重要です」と述べ、上記のことを実現するために電通が掲げる三つのキーワードを紹介しました。

キーワード①データクリーンルーム

「Data Clean Room(データクリーンルーム)」は、大手プラットフォーマーが企業に向けて提供するサービスです。クリーンルーム内の全てのデータは、個人を特定できない形で統計化・匿名化されていることから、プライバシーが侵害されることのない「無菌室=Clean Room」と呼ばれています。

プラットフォーマーの持つデータと、各企業の持つファーストパーティーデータ、さらに電通グループが持つ独自のマーケティングデータを、クリーンルーム内で個人情報を侵害しない形で統合し、マーケティング活用していくという手法が、今後重要になってくると高橋氏は言います。

キーワード②寄り添い型DX

二つ目は、「寄り添い型DX(デジタルトランスフォーメーション)」。これは「カスタマーサクセス」、すなわち生活者の成功や要望を第一に考えてDXを推進し、継続的な付き合いの中でLTVを向上させていく姿勢のことです。

「生活者に寄り添うホスピタリティーやサービスが前提としてあり、そこに必要なデジタルやセキュリティを用意していく。これが私たちの考えるDXです」(高橋氏)

キーワード③Data×CR

最後のキーワードは、「Data×CR」(データ×クリエイティブ)。

「行動データを提供することで得られる体験価値」が伝わらなければ、誰も企業に行動データを渡そうとは思いません。そこで重要なのが、電通が長年培ってきたクリエイティブの力です。

「企業の思いと生活者をつなぐ“体験価値”を具現化できなければ、PDMは単なる数字やデータの蓄積になってしまう。“クリエイティブによる体験価値の具現化”こそが、データを使ってマーケティングを行うPDMの最大のポイントです」(高橋氏)

PDM 3.0から4.0への深化

「データクリーンルーム」で生活者の背後にある文脈を洗い出し、「寄り添い型DX」で生活者が望むサービスに合わせたデジタル基盤をつくる。そして、それらを踏まえて「Data×CR」で最適な体験価値を提供する。

「こうした一連のフローの中で、電通グループの強みを生かしていく。それがデュアルファネルの深化であり、顧客とともに幸せな体験をつくり続けるエコシステムの進化です」と高橋氏は述べ、セッションを締めくくりました。


※本ウェビナーのより詳細なレポートは、「Do!Solutions」の特集ページをご覧ください!