共創するサーキュラーエコノミーNo.1
2030年まであと10年。企業のSDGsは実践フェーズへ
2020/11/16
2020年11月にローンチした「SDGsビジネスソリューション」(リリースはこちら )。これは、電通グループを中心とする7社が協働して、企業のサーキュラーエコノミー(循環型経済)(※)構築に関する取り組みを支援するプログラムです。全体の設計から、事業の立ち上げやプロダクトの開発、協業先とのリレーションづくり、社内外へのPRまで、一気通貫でサポートする体制を整えています。
いまなぜ企業にとってSDGsやサーキュラーエコノミーが必要なのか、電通グループにできることとは…?本ソリューションの窓口となる「電通Team SDGs」リーダーの竹嶋理恵氏、同メンバーで「DENTSU DESIGN FIRM」の主宰者でもある堀田峰布子氏が、SDGsを取り巻く現状やプロジェクト立ち上げの背景、展望について語り合いました。
※サーキュラーエコノミー(循環型経済):生産→消費→廃棄という直線的プロセスをたどる「リニアエコノミー」、廃棄の発生を前提にした「リユースエコノミー」を経て、商品開発段階から回収・リサイクルを前提に廃棄を発生させないことを目指す経済の新しい仕組み。これからの経済成長政策として世界で注目が集まっており、実現のためには素材調達から回収に至るまで、企業活動全体での取り組みが必要となる。
いま、企業にサーキュラーエコノミーが求められる理由
竹嶋:SDGsを取り巻く環境はここ1年でガラリと変わりました。最も影響があったのは、なんといってもコロナですよね。パンデミックへの対処や働き方、医療、経済などへの課題が浮き彫りになり、一気に対応が加速しました。国、自治体、企業、個人、さまざまなレベルで人々が、「みんなでアイデアを出し合い、協力し合って、この難局を乗り越えなければならない」と考えている。多くの人が垣根を越えて地球や社会の持続に向けた課題解決を目指しており、「コロナへの対応そのものが、まさにSDGsの取り組みそのものだ」というふうに感じています。
堀田:コロナ前に盛り上がり始めた脱プラスチックへの取り組みやサーキュラーエコノミーへの関心も、ますます高まっているように思います。2019年にEUで採択された「使い捨てプラスチック製品禁止法案」、これがひとつのゲームチェンジとなって、以来、世界規模で脱プラへの機運が高まり続けています。フランスからは、サーキュラーエコノミーをISOで国際規格化する提案も出てきています。欧州のアクションに追随する形で、各国の動きが非常に活発になっていると感じます。
竹嶋:今年のダボス会議でも、各国の首脳や企業のトップの方々が皆さん口をそろえて、「いまこそSDGsを実践すべきとき」とおっしゃっていました。先日行われた菅首相の所信表明演説にも脱炭素宣言が盛り込まれていましたし、欧州だけでなく日本でも、もう勉強や計画のフェーズではない、本腰を入れて、SDGsやサーキュラーエコノミーの構築に取り組まなければ、という機運が高まっているように思います。
SDGsは2030年までに達成すべき目標とされています。2030年まであと10年。国連でも「行動の10年」と位置づけています。多くの企業や人々が、「あと10年でなにができるか」を考え、本気で動き始めているのがいまの状況でしょう。
高まりつつある、SDGs的な考え方への共感。数年後、マーケットが変わる!
竹嶋:私たち電通Team SDGsは、「電通SDGs生活者調査」を毎年行っています。2020年の調査では、「SDGsという言葉に対する認知度」が29.1%まで高まり、前年から13.1ポイント上昇しています。また、「脱プラ」「シェアリングエコノミー」「サーキュラーエコノミー」といった考え方への認知や共感は、SDGsという言葉の認知度よりもさらに高いスコアが出ており、今後自分の生活に取り入れたい人も増えています。
中でも、SDGsについて特に意識が高いのが若者です。学校で環境問題やSDGsの教育を受けていることもあり、地球や社会にとって良いことをするのが当たり前だという感覚を持っています。大人たちに対して、「なんで地球にいいことが分かっているのにやらないの?」と、疑問の目を向けている若者も少なくありません。
堀田:身近なところでは、ごみに対する分別意識やマイボトルの所有率なども、若者は高いんですよね。地球環境にいいからやっているという意識ももちろんあるのでしょうけれど、ごく自然な選択として、飲み物はペットボトル飲料を買わずにマイボトルを持つのが自分のスタイルと考えているのだと思います。
最近では、そんな若者たちの変化の兆しを受け止めるように、ファストファッション系のアパレルメーカーが「サステナブルファッション」を積極的に打ち出し始めたのも印象的ですね。以前は、ファストファッションというと「短期間で買い替える安価な服」というイメージがあったように思うのですが、現在は、素材、つくり方、リサイクルの手法や端材の扱い方まで、とにかくサステナブルやサーキュラーをキーワードとして打ち出しています。ファッションは個性の反映であり自分のスタイルの表現手段のひとつですが、いまやサステナブルファッションという選択も可能になっています。
これはトレンドというレベルでなく、若者たちの生活の中にSDGsが入り込んでいることを表しています。「地球のために行動しないとマジヤバい」という意識を含め、SDGsが一過性のブームではなく確実に根付いているように思います。
竹嶋:確かに。単純にかわいいとかきれいとかではなくて、そのブランドのフィロソフィーとかスタンス、志のようなものに共感して、商品を買う人が増えてきましたよね。
堀田:はい。こういう、SDGsネイティブな若年層がメインの購買層になったとき、マーケットも大きく変わる予感がします。
竹嶋:国際会議などオフィシャルな場でもSDGsを意識した取り組みは進んでいます。例えば、ペットボトルでなくウオーターサーバーが用意されていたり、資料を収めるクリアファイルにはプラスチックの代替素材が使われていたり、無駄なプレスキットが廃止されたり。これからの時代、企業が事業やコミュニケーションを展開していくときに、SDGsのグローバルスタンダードの感度を持っておくことは必須といえます。
2025年にはSDGsをテーマにした大阪万博が開催されますし、2030年に向けて日本政府の取り組みも加速していくはずです。恐らくこの10年で、日本のSDGsを取り巻く環境は激変することと思います。企業は、さらにSDGs視点に立ったサービスやプロダクト、ビジネスモデルを求められるんじゃないかなと。変化に対応することが、マーケットの中で生き残っていくための、とても重要なファクトになっていくに違いありません。
素材、調達方法、リサイクル…。トータルな設計が必要なサーキュラーエコノミー
竹嶋:「日本の企業ではSDGsの取り組みが遅れている」といわれていますが、その理由のひとつに、サーキュラーエコノミー全体の構築ができていないことがあると感じています。堀田さんはプロダクトデザイナーの目線で、この問題をどう捉えていますか?
堀田:私もプロダクトのデザイン以前に、まずはサーキュラーエコノミー全体をしっかりデザインしなければならないと感じます。もののデザインだけ変えても、ことサーキュラーエコノミーにおいてはあまり大きな意味はないんですよね。その商品にどんな素材を使うのか、それはどう調達され、製造されたもので、どんなふうに使われて、そしてどのようにリサイクルさせるのかまで考え抜かなければいけない。そのためには、素材やリサイクルの知識、全体をコーディネーションする力が欠かせません。これまでとは異なる「俯瞰的な視野」を持ってものづくりを行うことが、今後、プロダクトデザイナーはじめ、ものづくりに関わる側に必要になってくると思います。
その他に、生活者の価値変容、世界の動向や社会環境の変化、関連の法令、規制、サステナブルな素材や技術の進化など、「時間軸で変化するファクター」に常に目を配っていくことも重要だと思います。
竹嶋:日本の企業は、プロダクトの開発や製造など、いわゆる“動脈”の部分をつくることは、とても得意だと思うんですよね。一方で、つくったものを回収したり再利用したりする“静脈”の構築まではまだできていないというか、これまではそこまでは考えられていなかったということでしょうか。
堀田さんが言う俯瞰的な視野でのものづくりというのは、まだまだこれからという段階なのだろうなと思います。静脈づくりにはお金がかかりますし、自社だけで完結できないこともある。欧米ではすでにそのインフラや仕組みが出来上がっている事例もありますが、日本の場合はそれぞれの工程が個別にやられている状態で、これからシステムをつくっていかなければなりません。ですから、ひとつの企業だけで、えいやっと進めるのが難しいのですよね。
サーキュラーエコノミーを設計・実装・運用する「SDGsビジネスソリューション」
竹嶋:自社だけでサーキュラー構築を行い、継続的に回すのは、多くの日本企業にとって難しい。だからこそ私たちは、「SDGsビジネスソリューション」が必要だと考えました。「ひとつの会社で取り組むのが難しいのであれば、協業して静脈の部分は共有する。みんなでイノベーションを起こそうよ!」、これが私たち電通Team SDGsのスタンスです。
堀田:そして、われわれ自身としても電通グループ内や協業先とこれまで以上に垣根を越えて協働していくチャレンジでもあります。「SDGsビジネスソリューション」は、素材やプロダクト開発を得意とする電通テック、商品の提供の仕方を含めて新たな場や機会づくりなどを担う電通ライブ、イノベーションの創出に欠かせないDXを担う電通デジタルと電通国際情報サービス(ISID)、フィロソフィーや取り組みを内外に伝える電通パブリックリレーションズ(電通PR)、それらをプロデュースして個々の企業のニーズへのカスタマイズやさまざまな企業を結びつける役割を担う電通、そして世界最大の素材ライブラリーと素材に関するコンサルティング部門を持つマテリアルコネクション東京が参画しています。バリューチェーン全体を俯瞰して設計を行い、施策やPRまでしっかりと実施できる体制を整えました。
「SDGsビジネスソリューション」が提供するのは、「つくる力」「つなぐ力」「伝える力」の“三つの力”。さまざまな取り組みを行う企業を電通グループならではのコーディネーションでつなぎ、プロダクトや事業、仕組みをつくって、さらにその背景にある思いを最も効果的な方法で伝え、多くの人を巻き込むムーブメントを巻き起こしたいと考えています。
竹嶋:サーキュラーエコノミー構築は地球や環境のためはもちろんですが、企業にとってはコストや無駄の削減であり、顧客とのエンゲージメントづくりであり、制作過程でのごみを資源化することで新たな収益を生み出す可能性もあります。まさにビジネスにもつながる持続可能な取り組みであるといえます。
皆さんにお伝えしたいのは、「仲間に入ってほしい」「一緒にやりましょう」という姿勢です。1社でサーキュラーエコノミーの仕組みをつくるのは簡単なことではないと思います。私たちがコンサルティングしますとか、すべて請け負いますみたいな関係性ではなくて、仲間として一緒に取り組みを進化させていきたい。知識や情報をどんどんアップデートし、新しいプレーヤーを招き入れ、そのときに一番いいチームをつくって、柔軟にソリューションを進化させていきたいと考えています。
企業だけでなく、自治体、大学、研究機関や教育機関など、いろいろな組織の方に賛同していただけるとうれしいです。ぜひ一緒に、まだここにない、新しいSDGsの在り方を見つけていきましょう。私たちが提供するソリューションは、大きな取り組み全体にも使っていただけますし、領域を限ってパートで相談いただくこともできます。例えば、パッケージの工夫はできているけど、回収やリサイクルまでは手が回らないというケースもあるかもしれません。企業ごとに、最適なソリューションをご提案していきます。
「サーキュラーエコノミーに興味がある」「こんな課題がある」「活用できるこんな技術や取り組みがある」など、まずはお気軽にお声掛けください!