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コロナ下の生活者意識から考えるサステナビリティとパーパスNo.1

よりサステナブルな世の中へ。コロナ禍がもたらした生活者意識の「5つのシフト」

2020/12/21

コロナ禍は単に感染症の問題にとどまらず、生活者の社会に対する意識全般にもさまざまな変化をもたらしています。

その中でも、コロナ以前にはそこまで感じられることがなかった“サステナビリティ”(地球や社会の持続可能性)への意識が高まっているようです。そして、それは、人々がアフターコロナに期待する社会像にも影響を与えています。

電通は2020年10月に、コロナ下の生活者に対して“サステナビリティ”や企業/ブランドの“パーパス”(社会に対する志・社会的存在意義)に関する意識調査を行いました。本連載では、調査結果を基に生活者意識の潮流と、アフターコロナに向けた企業活動のヒントについて考えていきたいと思います。

第1回は、調査結果から読み取れる、生活者の社会意識における「5つのシフト」をご紹介します。

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シフト1:環境・社会課題の「自分ゴト化」が加速

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コロナ禍は、生活者に「社会と自分の暮らしがつながっていること」を感じるきっかけとなったのではないでしょうか。調査結果から、個人と社会との距離感が従来以上に縮まってきていることがうかがえます。


シフト2: “持続可能性”の意味を実感

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“持続可能性”というやや難解な概念についても、その意味をコロナ下で生々しく実感することとなり、ある意味で腹落ちさせるきっかけにもなったと推測されます。


シフト3:環境・社会問題は“世界課題”との理解が進む

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コロナ禍は、地球環境や社会問題は全世界が共有する課題であること、そして解決に向けた国際協調が必要なことを可視化しました。この経験により、今後、人々の視野は脱炭素や脱プラスチックなどの地球環境課題、またグローバルな人権問題などにまで、より広がっていく可能性があります。

シフト4:多様な環境・社会課題への気づき

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コロナ禍によって人々は、従来意識することがなかった社会のひずみを目の当たりにすることになりました。また、社会課題が相互につながっている、誰もがいつ当事者になるか分からない、といった気づきもあったと思われます。世の中の課題に対する生活者の感度や感受性は、今後高まっていくことが考えられます。


シフト5:共通の目的に向かって力を合わせる“共創”を重視

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コロナ禍によって、生活者は「社会全体で共通の目的に向かって力をあわせる」という、従来にない体験をしました。また、日本だけでなく全世界の人々が、コロナ禍への対応に一丸となって取り組んでいることを目にし、その重要性を実感する機会にもなりました。

これはひとつの“共創”体験といえるかもしれません。そして、この“体験知”を基に今後、他の環境・社会課題においても、より能動的に関わる生活者が増えていく可能性があります。日本でも欧米社会に見られるような積極的な社会参画の波が訪れるかもしれません。

Build Back Better! 「コロナ以前に戻るのではなく、これを機により良い世の中に」

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「コロナ禍から復活する際は、コロナ以前に戻るのではなく、これを機により良い世の中になってほしい」と考える人は8割(81.9%)に上っています(=新たな「より良い世の中」志向層)。欧米でよく語られる「Build Back Better」(創造的復興/より良い世の中の再構築)と相通じる考え方を、行政や企業のみならず、日本の生活者自身も抱いていることが明らかになりました。

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「新たな『より良い世の中』志向層」(前述)のうち、「そう思う」と回答した人(Top1層)が、「社会全体が本気になって取り組む必要がある」と考える課題を見ると、上位に挙がったのは「介護・高齢化」「災害支援・防災・減災」「地球環境」「日本経済・財政問題」「少子化・育児支援」です。

これらは、コロナへの対応も含む「健康・医療」の回答率を上回っており、人々の視線が目の前の感染症の問題のみならず、それ以外の多様な環境・社会課題の解決にまで広く向けられていることが分かります。また、3MA(=回答は三つまで)の結果を見ると、「格差社会・就労問題/雇用維持」の割合が高く、対策を講じるべき重要課題として注目が集まっていることもうかがえます。

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今回紹介した生活者の社会意識における「5つのシフト」は、コロナ禍における一過性のものではなく、むしろ、これまでじわじわと進行しつつあったサステナビリティに関する意識変化を、コロナ禍が一気に加速させたと捉えた方がよいかもしれません。

現時点での最優先課題は、感染症との闘いであることは言うまでもありません。ただ、環境や社会格差など、健康・医療以外の課題も次々と拡大する中、生活者は今後そういった課題についても、従来以上に当事者意識を持ち、未来に向けて長期視点で考え、行動するようになる可能性があります。

現在、多くの企業が急ピッチでサステナビリティや ESG(環境・社会・ガバナンス)を念頭に置いた経営へとシフトしていますが、生活者側でもサステナビリティへの機運が高まっています。

行政はもちろん、企業にとっても、サステナビリティが織り込まれた、新たな「より良い世の中」をいかに実現していけるか、が重要になっていくのではないでしょうか。


調査概要
・調査手法:インターネット調査
・調査時期:2020年10月26~28日
・調査エリア/対象:全国20~74歳男女2000名
・調査機関:株式会社電通マクロミルインサイト