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Dentsu Lab Tokyo × Dentsu Craft Tokyo テクノロジーとアイデアのおいしい関係No.13

クリエイティブの出島が目指すもの。

2021/01/25

本コラム「テクノロジーとアイデアのおいしい関係」の連載開始から1年がたちました。Dentsu Lab TokyoとDentsu Craft Tokyoそれぞれのメンバーの 、好きなものへの愛があふれた、ウェブ電通報にしてはマニアックすぎる連載が並びました。

Dentsu Lab Tokyoは、主にテクノロジーを起点としたアイデアで、クライアントや世の中の課題を解決することをミッションにしています。実は、出向やインターンなど、メンバーは流動的に出入りしていて、多いときには半分が外の人という時期もありました。そして現在、パートナーのDentsu Craft Tokyoと連携しながら、大学教授、デザイナー、エンジニア、CGアーティスト、リサーチャー、プロデューサーといったさまざまな才能たちと有機的に協業しています。

普段、ぼくらの組織を説明すると、「出島みたいだよね?」ってよく言われます。出島というのは、江戸時代に幕府が造った外交と貿易のための人工島です。シーボルトをはじめ、世界から学者や宣教師、商館員が出入りした場所。そこから始まった文化や生活は数知れず。バドミントン、ビリヤード、ボウリング、イチゴ、キャベツ、トマト、セロリ…。そう言われたとき、なるほど、うまいこと言うなと思いました。

たしかに私たちは電通の中にいるようでいない。予期せぬ化学反応が起きる。新しい方法論が発見できる。私たちの強みです。外に飛び出しているから、中のこともよく見える。今日は、その「出島」な感じを紹介できればと思います。

Dentsu Lab Tokyo
「阿蘭陀 玉ツキノ図」長谷川雪旦 (奥でビリヤードしている人がいます) 出典:国立国会図書館貴重画データベース

これまでのコラムを見ていただくと、ぼくらの仲間がとても多岐にわたることが分かります。慶應大学SFCで教鞭を執るAI研究者の徳井直生さん、日本人で初めてGoogle Creative Labに所属していたカワシマタカシさん、CG映像作家の柴田大平さん、VRオタクの末冨亮くん、NTT研究所の主席研究員、木下真吾さんまで。ここで疑問が一つ。なぜ、そんなに多種多様な人たちとのオープンイノベーションが必要なのか。寄り道しながら、つらつらと書いていきます。

そもそも電通のラボってなんだ?

いやいや、1年も連載しておいて、今さらって感じですが…。冷静に考えると電通のラボってちょっと謎ですよね。メーカーのラボなら分かりますけど。少し自分の話をしますと、ぼくは、今まで二つのラボに所属したことがあります。いわゆる大学院の研究室。機械工学専攻で、毎日マシンの前に座って、実験して、論文を書いてました。もう一つはインターンシップで参加した宇宙科学研究所です。ぼくが参加した翌年に「JAXA」というかっこいい名前になりました。ロケットが大気圏に突入したときに先端が超高温になっても大丈夫な素材研究のお手伝いをしていました。どちらもいわゆる「ラボ」ですね。

このようにラボとは、何かモノづくりをする上で、今までなかった新しいモノを生み出すためにR&Dをする場所です。メーカーには絶対ラボがあります。グーグルにも、ディズニーにも。じゃあ、電通のラボって、何のために、何をR&Dしているんでしょう。さらに寄り道します(笑)

Dentsu Lab Tokyo

クリエイティブのR&Dってなんだ?

上述したようにラボとはモノづくりをする組織が持つものです。メーカーの本義は、モノをつくり、売ること。誤解を恐れずにいうとそれがビジネスモデルです。ぼくらの場合は、クライアントと一緒にモノをつくり、売ることもありますが、もう一つメーカーにないビジネスモデルがあります。それは、課題を解決するためのアイデアと制作物(表現だったり、仕組みだったり、プロダクトだったり)を提供することです。

ぼくらのところに来る相談でいえば、「商品を売りたい」はもちろん、「新しいスポーツ観戦をつくりたい」「プロ野球中継を話題にしたい」「社会に役立つ服をつくりたい」「コロナ禍だからこそ人々を元気にしたい」まで幅広い相談が来ています。相手は、企業、行政、個人など、さまざまです。当然、表現や解決方法は常に新しいものが求められる。ぼくらがオープンイノベーションをとりながら、常に柔軟に変化し続ける理由はここにあります。

Dentsu Lab Tokyo

 

好き、のR&Dなのかもしれない。

そんな相談を受けて、今までつくってきたものは、「マツコロイド」という世界初のタレントアンドロイドロボットだったり、「ZUNO」という野球の投球予測AIシステムだったり 、スポーツの新しい観戦システムだったり、AIによる監視システムから免れるための衣服「UNLABELED」だったり。コロナ禍の緊急事態宣言中にぼくたちはサントリーさんと一緒に「話そう。」というキャンペーンも実施しました。スナップカメラを利用したARフィルターも制作しました。 

アンドロイドロボット「マツコロイド」Dentsu Lab Tokyo

AI投球予測システム「ZUNO」
Dentsu Lab Tokyo


AI監視社会から逃れる衣服「UNLABELED」
Dentsu Lab Tokyo

サントリー「話そう。」キャンペーン
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こうやってみると、どれもいわゆるストレートな課題解決とは違う。大事にしているのはPLAYFUL SOLUTIONS(楽しんでいるうちに、課題も解決しちゃってる)です。もっというと、ぼくらがつくっているのは「好き」という感情なのだと思いました。「好き」は、人を動かすための、最良の武器ですから。そのためには、どんな表現やプロダクトやサービスが必要なのか。思えば、ずっと「好き」という気持ちをつくるための R&Dをしている気がします。そして、そのために必要なことは、人間についてとことん考え、新しい方法論を常に探し続けることだと思います。そのために、広告クリエイティブに閉じることなく、人と人、個性と個性、思想と思想をぶつけ合う場所がDentsu Lab TokyoとDentsu Craft Tokyoなのです。

おもいもよらない。

そんなモノづくりの中で、ぼくらが他のラボよりも強みとしていることがあります。それは、広告づくりを通じて培った「アイデアの筋肉」です。言葉、デザイン、ストーリーなどとテクノロジーを融合させることで、人の心を動かすこと。社会を動かすこと。ファンクションとエモーションを行き来すること。

2021年、ぼくたちはウェブサイトをリニューアルしました。そこで、最上位に掲げた言葉が「おもいもよらない。」です。人は、想像を超えた表現を見せつけられたときに、最も心が動きますから。これからも、テクノロジーとアイデアで、人々の想像の先をいく、“おもいもよらない”モノづくりをしていきます。

Dentsu Lab Tokyo
さて、1年にわたったコラム「アイデアとテクノロジーのおいしい関係」は、ひとまず、おしまいです。こんな感じでぼくらは「出島」みたいな場所にいて、江戸時代にそうだったように、ここで新しい方法論やコンテンツをどんどん生みだしていきます。これを読んで、興味を持っていただいた方がいたら、ぜひご連絡ください。

あ、そういう意味では、二つ宣伝したいのですが、毎年やっている学生向けインターンシップ「テクノロジーとアイデアの学校」を今年もやります!

Dentsu Lab Tokyo
インターンシップ「テクノロジーとアイデアの学校」のキービジュアル。個性の重なりが新しい方法論を生むことを、モアレを使い表現しています。

あと、こちらは2年目となりますが、国内外のアーティスト、研究者、パフォーマーらを招いて、クリエイティブについて議論、研究を深めるイベント「Creative Aliens」。こちらは3月ごろ実施予定なのでチェックしてみてください。それでは、どこかでお会いしましょう。ありがとうございました。