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電通報ビジネスにもっとアイデアを。

Dentsu Lab Tokyo × Dentsu Craft Tokyo テクノロジーとアイデアのおいしい関係No.12

誰も見たことのないアイデアを形にする

2020/10/06

「こんなアイデア、ホントにできたらすごいよねー。」
「……ということで、あとは、藍さん、なんとかしてください(笑)」

こんな無責任な?会話。冗談じゃなく、よく打ち合わせで見られる一コマです。ここから、プロデューサーである私のアタマはフル回転し始めます。これ、ほんとにできたら、めちゃくちゃ面白いかもな!! しかも、できなく…はないかも。

打ち合わせ中に、ここまで思考がたどり着いたら、そのアイデアはプロデュース的にはひとまず生かして進めてみようか、という判断をします。

私の思考回路として、まだ見たことのないアイデアに直面したとき、

「これはすごい!見てみたい!!」

と、ひとたびテンションが上がってしまうと、そこに潜むリスクやスケジュールやコストという本来プロデューサーに必要とされる基本概念を一瞬で忘れ去り(あとでちゃんと考えます)、そもそもどうやったらこれができるか…というスイッチが入ります。

そのアイデアを成り立たせるためには、立てつけをどうすればよいだろうか?

技術的なチャレンジや課題はどこにあるのか!?
それをどう検証し、クリアすべきか!?
そのためのスタッフィングは?

こんなことを考え始めています。

「プロジェクト型」の仕事が増えてきている

CGで何でも表現できてしまう世の中。

一見すると、「すごっ!ウソでしょ!!」っていうビックリ映像も実はCGで加工していて…ということも珍しくないので、「どうせCGでしょ」っていう冷めた目で見られることも少なくありません。

でも、もしそれがリアルに起きていることだったら。

最近は、リアルな世界で一度しか起きない体験をつくって、それを見た人が感動し共感し大きな話題になり、最終的にそれがCMやウェブムービー、SNSなどで残っていくといったように、なんでも入っている「プロジェクト型」の手法が増えてきています。

そもそもCMとかイベントありき、という出口ありきの発想ではなく、なにをやったら課題解決になって、かつ面白いのか、制約も領域もいったん取り払って、ともすればこれは広告なのか?というような、業界のボーダーもなく自由に考えるクリエイターが増えてきているからだと思います。いわゆる異種格闘技戦、戦い方なんでもあり、倒せば勝ちみたいなことでしょうか。

そんな自由発想なクリエイターたちのアイデア実現のため、真っ向から向き合っていくためには、CMやイベントといったプロダクトをつくるという従来の領域を超えて、まずプロジェクトをつくっていくところからすべてを見回せるプロデューサーが必要になってきている気がします。

アイデアが起点で、プロデューサーはつくり出す前にそのアイデアを立てつけることに奔走する必要が出てきた、ということでしょうか。

当然アイデアは毎回変わるので、ルールがありません。
従来のつくり方では実現できないことばかり。
アイデアによってチーム編成もゼロから考えなければなりません。

CM・グラフィック・イベント・ウェブ・PR・メディアなど…、これらすべてにおいて複合的に絡み合う要素を整理して一つのプロジェクトとして成立させられるプロデューサー。それがプロジェクト型の案件に求められるプロデューサー像ということになります。

そして、困った(?)ことに、冒頭で挙げたシーンのような、私の「面白いからやってみたい!」というスイッチが入るときは、こういったプロジェクト型の案件の始まりだったりするのです。

プロジェクト型案件のカギは、「人を巻き込みまくる」こと

私は電通テックのイベント部署(現 電通ライブ)出身で、入社以来10年ぐらいイベント一筋でした。なので、ライブイベントの勘所は相当鍛えられてきた自負があります。しかし、それ以外で…というと、10年従事したイベント知識には当然及びません。そんな私がこうしたプロジェクト型の複合案件に対してどう向かい合うのか!?

それは「人を巻き込みまくる」ことです。

ただ「人を巻き込む」ってことですと「やたらと声をかける」ってことに聞こえるかもしれませんが、そうではなく、アイデアを形にするために必要なことを、必要な人と一緒に悩むってことかもしれません。

私の所属する「Dentsu Lab Tokyo」でのプロジェクト型案件は、ほとんどがテクノロジーを駆使した、形にとらわれないアイデアを起点としています。テクノロジーを使った表現は、想像や理論の上では成り立っていても、やってみないと分からないことだらけです。だから、アイデアをどう実現できるか、クリエイターと共に悩んで、手を動かして、試行錯誤して、アイデアに肉付けしてくれる人が必要です。そういう人を巻き込みまくります。だって今まで見たことがないもののつくり方に正解はないんです。一緒に悩んでくれる人が欲しくなりますよ。

DLC1
あるプロジェクトのテクニカル検証。暗闇で半透明のバルーンに強力なレーザー光線を照射してみたところ、自発光しているように見えるという発見が。結局このネタが使われることはなかったが、テクニカルチームと一緒に検証をしていく中で新たな発見やアイデアが生まれていくことがある。

この巻き込む人たちは、広告業界内のつながりで、実にいろいろな分野から集めます。さらに、時にはクライアントを「御社のこの技術がもっとこうなっていれば、面白いことができるんです!!」と巻き込んでみたり。

FUTURE-EXPERIMENT
NTTドコモの5Gなどを活用し、東京、ニューヨーク、ロンドンからの映像を合成してPerfumeのパフォーマンスをストリーミング配信。FUTURE-EXPERIMENT 第1弾「Vol.1 距離をなくせ。」

プロトタイプを勝手につくって、スポーツの競技団体に、「これやると観戦者がもっと競技を楽しめると思うんです!」と競技観戦システムを導入してもらったり。

BOCCIA RULER
画像解析技術を用いボッチャの戦況をリアルタイムで把握、3D描画できる競技観戦システムを独自開発。ボッチャ観戦システム:BOCCIA RULER

 テレビ業界の人と、「こんなコンテンツあったら面白いよね」と企みながら実現していくプロジェクトなど。

トットの夢プロジェクト
大阪大学・石黒浩教授の監修で、テレビ朝日など数社と黒柳徹子さんのアンドロイドを開発。「徹子の部屋」の会話データを基に、最新技術で合成した声で話し、本人の表情やしぐさ、クセなども研究し再現。トットの夢プロジェクト  https://totto-android.com/  ©totto製作委員会

このように、広告業界とは普段付き合いのない人たちも巻き込んだりして、広告以外の方法で表現することも多いんです。

そう考えると、今までのクライアント、エージェンシー、プロダクションとかの役割分担や関係性ってなんだろう、と思うことも多々あります。でも、そんな従来の役割分担を越境したり、統合したりして生まれてきたプロセスがあって、誰も見たことがないアイデアが形になる。つくり方の一種として間違ってはいないんだろうな、と思っています。プロデューサーのこれからは、アイデア次第でそのつくり方すらも柔軟に変化させ続けることも必要なのかもしれませんね。