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【グローバル】加速するサステナビリティー&サーキュラーエコノミーNo.2

2021/03/23

「ダボス・アジェンダ」にみる2021の行方

「海から陸、そしてその先へ」 photo by 中村正樹
「海から陸、そしてその先へ」 photo by 中村正樹
<目次>
「ダボス・アジェンダ2021」。1月の会合はオンラインで開催
サーキュラーエコノミーの実証実験も加速
ESGの動きもさらに加速。「ステークホルダー資本主義指標」への取り組み



 

「ダボス・アジェンダ2021」。1月の会合はオンラインで開催

新型コロナウイルスの流行は、これまでの価値観を一変させています。世界中で当たり前のように集まって行われていた国際会議もそのひとつでしょう。

毎年1月下旬にスイスで行われていた世界経済フォーラム(WEF)の年次総会・ダボス会議は、世界経済を引っ張る首脳陣が対面で集い、その年の重要な問題を議論します。

「1年の始まりはダボスから」。世界の1年の議論をリードしてきたこの会議は、51年の歴史で初めて、すべてがオンライン形式で開催されました。対面による年次総会は既に2度延期され、現在は8月開催で予定されています。

今年は「信頼回復に向けた重要な年」と位置付けて、5日間で100あまりのセッションを一般にも公開しました。対面での開催を延期してもなお、年初のオンラインでの開催にこだわった理由に関して、WEFのシュワブ会長は

「パンデミックという状況下において、優先順位を再設定する必要性と制度改革の緊急性が世界中で高まっている」

と述べていました。

「ダボス・アジェンダ2021」と名付けられたこの会議では、日本を含む各国の首脳による脱炭素や国際協調、グリーン社会への取り組みを強調する発言が目立ちました。

その他のトピックとしては、

  1. 先進国による必要以上のワクチン購入への懸念
  2. 国際機関の機能不全
  3. 気候変動への対応の遅れ

など、自国主義に端を発する課題が山積しており、就任直後の米バイデン政権への期待を反映した内容も多くありました。

「持続可能な未来のための消費のあり方」や「危機に強い公衆衛生のシステム」なども議論されました。プラスチック対策に取り組んでいる若者も会議に参加し、行動の呼びかけや革新的な解決策を企業のトップと共有しました。

またネットゼロエミッション(温室効果ガス排出量実質ゼロ)へのチャレンジとして、企業、政府、投資家、個人それぞれの取り組みの加速が不可欠ということも議論されました。

デジタルの領域では、グーグルのピチャイCEOの発言が注目を集めました。

インターネットにおける言論の自由と安全の両立について、動画サイトなどの自由は守られるべきだが、社会として合意した境界線が必要であること、企業により対応が異なる中、政府は明確な指針を示すことが重要と強調しました。

また、今後3~5 年で圧倒的な情報処理能力を持つ量子コンピューターを貸し出す「量子クラウド」が実現すると予測。量子コンピューターや人工知能によって引き起こされる差別などの倫理的な問題に対し、温暖化対策にまつわる「パリ協定」のような国際的な枠組みの整備を急ぐ必要があると主張しました。

サーキュラーエコノミーの実証実験も加速

ここ数年議論されてきた「サーキュラーエコノミー」(循環型経済)も、動きが活発になっています。

ダボス・アジェンダの議論を受けWEFはメキシコシティ、ブリュッセル、トリノ、バンコクで循環型イノベーションのハブを立ち上げると2月8日に発表しました。

これは、WEFの20代の若者のコミュニティーであるグローバル・シェイパーズ・コミュニティーが中心となり、若い変革者を活用することで、循環型社会に向けた草の根的なアプローチの実現を目指すものです。

ハブとなる都市の選定には、40以上の応募があり、その中から4都市が選ばれました。2030年までにSDGs(国連の持続可能な開発目標)を達成するためには、現在の商品やサービス、この先のイノベーションにおける新しいアプローチが必要です。ローカル(地元的な視点)とグローバル(世界的な視点)を考慮することで、循環型の未来に向けた前進を目指しています。

サーキュラーエコノミーはオランダ政府、大手のコンサルティング会社やエレン・マッカーサー財団などがリードしており、それぞれ目標や原則を打ち出していますが、自治体や企業が取り入れるためには、それぞれの強みをどう取り入れていくかの見極めが必要です。

経済構造の見直しは避けて通れないものとなっています。このWEFが始めた実証実験の行方を、この先も注目していきたいです。

ESGの動きもさらに加速。「ステークホルダー資本主義指標」への取り組み

企業によるESGの取り組みの動きもさらに加速します。

ダボス・アジェンダに合わせてWEFとそこに参加するビジネスリーダー61人が、新たにつくられた「ステークホルダー資本主義指標」に基づく報告に取り組むことを発表しました。

これは、企業が業種や地域を問わず報告可能な、普遍的で比較可能な開示事項で、「人」「地球」「繁栄」「ガバナンス」の四つの柱を中心とした枠組みです。

非財務報告の分野でも、結束の声が高まっています。企業や投資家はサステナビリティーへの評価能力を強化して意思決定を改善するとともに、透明性と説明責任を負うべき、という強い決意を、ビジネスリーダーたちが表明しています。

具体的には、自社の事業に関連性の高い指標や、より適切なアプローチを示し、投資家その他のステークホルダーへの報告(年次報告書、サステナビリティー報告書、委任状などの資料)に反映させるというものです。

ビジネスリーダーたちは、ESGがすべての企業でこれまで以上に重要になると感じています。自社の中核的な戦略、事業運営、企業情報開示にサステナビリティーを組み入れるという大手グローバル企業の意向を明確に表しているといえるでしょう。

バンク・オブ・アメリカのモイニハンCEO兼会長は

「私たちは株主にリターンを提供すると同時に、社会課題の解決に貢献しなければなりません。これこそが、ステークホルダー資本主義の実践なのです。共通の指標があれば、すべてのステークホルダーが進捗状況を測定することができ、資本主義の下、企業や投資家、その他の人々から集結できる資源を、最も大きな変化をもたらす場所に向けることができます」

と述べています。

またサステナビリティーへの対応で注目されるユニリーバのアラン・ジョープCEOは

「世界が直面している課題は、気候変動の暴走、環境悪化、社会的不平等です。変革のためのメカニズムとして、企業の年次報告書や決算書が最初に思い浮かぶことはないかもしれませんが、これらの問題に取り組む新たな資本主義を創出するためには、標準化された非財務報告の義務化が不可欠です」

と述べています。

「ダボス・アジェンダ2021」では、グローバル視点の“改革の必要性”が、この数年と同様に訴えられていますが、多くのセッションでパネリストから“改革実行の必要性”を切に訴えるメッセージが出されていました。今がまさに社会・国際秩序の歴史的な転換点であると感じ取れます。

毎年1月の会議の直前に出される「グローバルリスク報告書」でも、引き続き気候変動を重大なリスクと位置づけていました。その上で、今後2年間は新型コロナウイルスの感染拡大が大きなリスクとなり、人々の生活が脅かされるだけでなく、医療や所得、デジタル技術などの格差がさらに広がるおそれがあると指摘しています。

そしてリスクも短期だけではなく中長期でも見るべきだとし、3~5年後には資産バブルの崩壊や債務危機といった経済のリスクに、5~10年後には国家の崩壊といった地政学的リスクにつながりかねないと指摘しています。

サーキュラーエコノミーも議論から実践に移るフェーズに入っており、現場を巻き込んでどのように動かすのかが重要と感じます。ESGもしかり、ステークホルダーたちがいかに社会とのつながりを持っていくかが重要です。あらゆる面において「コミュニケーション」が重要な時代だと痛感しました。

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