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スタートアップ的、テレビCM活用術No.2

「ユーザー起点」の発想が、テレビCMの可能性を拡げる

2021/04/07

お店のデジタル化を支援する「STORES」を展開するスタートアップ企業「hey(ヘイ)」は、テレビCMの効果を最大化させるために電通と二人三脚で、これまでの常識にとらわれない新たなチャレンジをしています。

テレビCMで高速PDCAを実現する方法をお伝えした前回に続き、テレビCMの戦略、そしてテレビCM以外のメディアへの考え方について、heyのマーケティングディレクター・山﨑佑介氏、電通のアカウントリード・阪口真衣氏、プランナー・濱大毅氏が語り合います。

【 STORES とは? 】
お店のデジタル化を支援するプラットフォーム。ネットショップ開設・運営サービス「STORES」、お店のキャッシュレス決済サービス「STORES 決済」、オンライン予約システム「STORES 予約」を展開している。https://stores.jp

 

レスポンスコネクター・ダッシュボード
左から、阪口真衣氏(電通 アカウントリード)、山﨑佑介氏(hey マーケティングディレクター)、濱大毅氏(電通 プランナー)

良いテレビCMを作るためには、現場判断が欠かせない

濱:今回制作したCMついても少し伺いたいのですが、BtoBを狙ったシステムサービス系のテレビCMは30秒が一般的です。15秒を選択した背景には、どのような意図があったのでしょうか?

山﨑:BtoBは事業説明を長くしないと伝わらない懸念があるので、30秒が多くなるんだと思います。「STORES」のネットショップ、キャッシュレス決済、予約システムは、利用シーンは想起しやすいので、15秒で実現できるようにお願いしました。30秒より15秒の方が配信コストは低くなるので、まず15秒で試したかった背景もあります。

阪口:オリエンの段階では、それを15秒で実現できるか分からなかったので、まずは3つのサービスの15秒版をフォーマットとして作りました。その上で、現場で山﨑さんにもアドバイスを頂きながら、3つのCMを再編集した「お店のデジタル、まるっと。篇」を作ってみたら、見事にハマったんです。

 

濱:現場判断で生まれたというのが新鮮ですよね。普通は絵コンテや提案書を事前に承認してもらい、それに沿って作るじゃないですか。

山﨑:提案時のコアアイディアを変えることはないですが、編集方針は撮影を通じて決めた方が良くなりますよね。実際の撮影で見えた強い表情や、強いコメント。そのコミュニケーションの強さを、いかに「STORES」のベネフィットに落とすかという視点を持ち、現場で判断しています。

編集室に行った時、台本通りのパターンの他に、台本と全く違うパターンがあったのも驚きました。まさに現場で見えた強い絵を活かした構造になっていて。台本通りを強要していたら今回のテレビCMは作れなかったと思います。「STORES」ブランドを正しく導いてくれたクリエイティブチームにも本当に感謝してます。

濱:CMにはお笑い芸人の児嶋一哉さんを起用しています。そもそもテレビCMにおけるタレント費用はCPAに見合うのか?どう寄与するのか?という議論が常にあるのですが、山﨑さんはタレント起用の意義をどのようにお考えでしょうか?

山﨑:タレントには、キャラクターやイメージなどの認知属性があります。その方の認知属性を活用して商品コミュニケーションを加速させるのが、タレント活用の意義だと考えています。そのため、検討するタレントさんの出演番組やYouTubeはすべてチェックしますし、今のキャラクターに至った歴史も徹底的に調べます。

濱:なるほど、その上で児嶋さんを選ばれた理由もお聞きしたいです。

山﨑:コロナの影響もあり、今は商店街や店舗のビジネスが苦戦を強いられています。苦しい時代だからこそ、一方的に営業してくる存在じゃなくて、困ったときに気軽に話せる存在になりたかったんです。クリエイティブチームから「商売繁盛」というキーワードを聞いたとき、点と点が一気につながりました。
 
「Just for Fun」というheyのミッションにも通じますが、お祭りで商店街を盛り上げるように、お店の皆さまの商売繁盛を願うことが、「STORES」に必要なコミュニケーションだと考えました。それを伝えてくれる人を検討したとき、児嶋さんが持っている「親しみやすさ」「明るさ」「誠実さ」という認知属性が一番フィットしたんです。 

濱:確かに、児嶋さんに応援してもらえると納得感があるというか、素直にうれしい気持ちになりますよね。

山﨑:テレビCMでは児嶋さんがハッピを着て商店街を練り歩いてますが、実際にhey社員も同じハッピを着て、全国の地方自治体でネットショップ開設セミナーを行ってます。テレビCMのイメージもあって「ハッピのお兄ちゃんこれ教えてよ」と地元の皆さまもとっても温かく迎えてくださります。

レスポンスコネクター・ダッシュボード

メディア起点ではなく、ユーザー起点の発想が大切

濱:前回 、「視聴者のアクションが起こせないテレビCMは、やる意味がない」というお話がありましたが、近年はテレビCM映像をSNSやYouTube、TVerなど他メディアに展開するケースも増えています。山﨑さんはこれまでテレビ以外のメディア戦略にも携わられてきているので、そのあたりの意見も伺えたらと思います。

山﨑:われわれが考えるべきなのは、メディアの特性です。YouTubeであれば、スマホユーザーがほとんどで、ユーザーが閲覧したい動画の前後や途中に視聴される広告になります。その動画広告として最も適切な内容を考えなければいけません。結論を言えば、今回テレビで流している15秒CMをそのままYouTubeに展開するのは間違っていると思います。

濱:設計さえしっかりできていれば、YouTube広告も有効でしょうか?

山﨑:もちろんです。そもそもマス広告とデジタル広告は役割が異なるので、そこに優劣があるのではなく、補完し合うものだと思っています。

いまテレビCMでは電話開設サポートを訴求していますが、これはインターネットが苦手な方にとって電話ですぐ聞けることが、安心してご利用いただけると思っているからです。

一方で、デジタル広告では実際に検索した方を対象としているので、もう少し具体的なことをお伝えしています。テンプレートが豊富で初心者でもデザイン性の高いページが作れるとか。

YouTube広告でいうと、例えばハンドメイドの動画を見ている方に「STORES で販売してみませんか?」と提案するならイメージが湧きます。

阪口:考え方がメディア起点ではなく、ユーザー起点なんですよね。この人たちを動かすためにはそれぞれのメディアで何を訴求すればよいのか?どう伝えるのがベストか?という発想からスタートしているから、メディアに縛られない戦略を立てられるのだと思いました。

レスポンスコネクター・ダッシュボード

メディアで適切なコミュニケーションができているか判断する

濱:テレビCMが視聴者のアクションを起こせたかどうかを測るためのツールとして、「STORES」のCM施策では、「レスポンスコネクター・ダッシュボード」を活用しています。今後、テレビ以外のメディアに展開するときの判断材料としても、同ツールは使えそうでしょうか?

【レスポンスコネクター・ダッシュボードとは】
CM1本ずつに対し、広告主が設定したKPI項目と紐づけすることにより、出稿効果を細かく検証するツール。どの曜日・時間帯でCMに効果があったかを分析し、ユーザーへの「即時的な広告効果」を可視化。さらには、質の高いユーザーの反応、すなわちLTV(Life Time Value)など、「中長期的な広告効果」も継続的に分析することが可能。本ツールの計測ロジックは特許出願中で、既に50社以上に提供実績有(リリースはこちら)。


レスポンスコネクター・ダッシュボード


山﨑:はい。もしかすると、「レスポンスコネクター・ダッシュボード」は、「デジタル広告のようにテレビCMを運用するもの」という印象を持たれる方もいるかもしれませんが、そうではなく「それぞれのメディアで適切なコミュニケーションを行うための判断材料」という認識がより正しいと思っています。

濱:「レスポンスをコネクトする」という抽象度の高い名称にしているのは、テレビCMに対するあらゆる反応=レスポンスに対応できることを表すためです。今回はサイト来訪数にフォーカスしていますが、資料請求数や課金数、SNSでのツイート数など、レスポンスの種類はさまざま。事業の目的に応じてトラッキングすべきレスポンスを最適化することが、私たちプランナーの仕事だと思っています。

山﨑:テレビCMのオンエアデータに、何を紐づけるのかを考えるのがファーストステップ。「STORES」の場合は、それが「オンエア直後30分以内の『STORES』サイトへの新規来訪数」でした。事業ごとに何をレスポンスさせるのかが明確にできれば、テレビというメディアの可能性をもっと活用できるようになると思います。

レスポンスコネクター・ダッシュボード  

濱:「レスポンスコネクター・ダッシュボード」のリリース配信後、多くのクライアントさまからお問い合わせが来ており、正直びっくりしました。同時に、各企業が多種多様なKPIをお持ちだということもつくづく実感する機会となりました。“DX化”という言葉が一人歩きする昨今で、「CM効果がダッシュボードで見られる」という点は、良くも悪くも”聞こえ”は良いようです(笑)。     

ただ、どうしてもこういうツールって手段の目的化になりがちなので、どの業種・どの企業に対しても、代理店がチームとなって、「レスポンスコネクター・ダッシュボード」を一つの判断材料とした、コミュニケーション効果・その先の事業成長の最大化が実現されることを期待したいですね。

山﨑:企業や業種ごとに適切なテレビ番組って変わると思うんですよね。A社にとって良い番組が、B社にとっては悪かったり。「枠を買う」ではなく「コンテンツを届ける」視点で整理すると、CM検討できる番組や地域がぐっと増えると実感しています。

お店のデジタル化で商圏が広がり、地域の魅力を全国に届けているSTORES オーナーさんもたくさんいらっしゃいます。CMを流して終わりではなく、一緒に地域経済を盛り上げるパートナーになれるよう、これらも尽力していきます。


※DX(Digital Transformation|デジタルトランスフォーメーション):デジタル技術を浸透させることで人々の生活・企業の事業成果をより良いものへと変革すること。