動画広告の効果最大化!「Talent YouTube+TV」No.1
YouTube×タレント発の「ストーリー」が、消費者を動かす
2021/04/22
コロナ禍により自宅で過ごす時間が増える中、幅広い年代に視聴され、存在感を増すYouTube。近年は、テレビタレントや企業にとっても重要なプラットフォームになっています。タレントのチャンネル開設が相次ぐYouTube市場の概況やその魅力、YouTubeを活用した企業のマーケティング活動の現状とは?
デジタル領域においてタレント・企業のコンテンツ制作に携わるFIREBUG(※)営業担当・柳川美里氏と、インフルエンサー施策に精通する電通・溝渕竜三朗氏が、「YouTube×タレント×企業」をテーマに対談しました。
※FIREBUG:主にデジタル領域において、タレントのSNSサービスコンサルティング、コンテンツ制作・サポート、アーティストのプロデュース事業などを幅広く手掛ける。エンターテインメントを軸に企業に多角的なマーケティングソリューションも提供。2020年11月、電通と業務提携した。
タレントのYouTubeチャンネル開設が急増
柳川:これまでタレントの活動の場はマスメディアが中心でしたが、2019年からYouTubeのチャンネル開設が増え始めました。それ以前にYouTubeで活動していたタレントが登録者数をどんどん増やし、 話題になっていたことが大きな要因です。さらに昨年から、コロナ禍によってタレント活動の場が大きく制限されたこともあり、チャンネル開設の勢いが加速。それと連動して、企業主体の動画広告でなく、タレントのコンテンツに企業が乗っかるタイアップを希望する企業も増加しています。
溝渕:確かにマーケティングでもPRでも、企業にとってYouTubeは今や無くてはならない存在になりつつありますね。私は現在、インフルエンサーを活用した企業のPR活動をサポートしていますが、この領域でも近ごろはYouTubeやインフルエンサーを使いたいという企業からの依頼が本当に多くなりました。BtoB企業や、これまで消費者向け映像を作っていなかった企業からYouTubeの活用法について相談を受けることもあります。
柳川:タレントにとってYouTubeは、マスメディアよりも自分を自由に表現できる場です。そこから新たな魅力が伝わり、仕事が増えることもあります。例えば認知度が低いタレントがYouTubeでバズって一気に知られるケースも少なくありません。また、登録者数や再生数が一定のラインに達するとまとまった広告収入も見込めます。エンターテインメント市場のDXが進む中、YouTubeは投稿が無料というコスト面の利点も手伝って、今後もこの状況は続くでしょう。
一方でタレント側の悩みとして、「チャンネルを開設してもどんな動画を作ったらいいのか分からない」「より収入を生みだせる企画や、企業にタイアップしてもらうためのノウハウがない」といったケースが少なくありません。弊社にはタレント事務所からYouTubeにおけるコンテンツ制作や営業サポートなどの依頼が増えています。
テレビタレントは、フィルターバブルの壁を破る存在
柳川: これまでYouTubeは若年層向けのプラットフォームと捉えられがちでした。そこに世間で認知度の高いタレントが参入して視聴者の幅が広がることは、YouTubeがさらに活況を呈する原動力にもなります。
溝渕:そうですね。近年は、例えば10代が見るYouTubeのトップ画面には30代や40代向けのコンテンツは表示されにくくなっています。いわゆる「フィルターバブル」の環境ですね。一方で、よく見る動画や視聴者の属性との親和性が高いと判断されたコンテンツは繰り返し自動的に表示されます。まるで防音性の高い部屋の中で声がこだましているようなこの現象は「エコーチェンバー」と言われます。
YouTubeなどのデジタルメディアで起こるこういった現象には良い点と悪い点がありますが、良い点の一つは視聴者の思考が深まっていくところです。一方でテレビはこのようなフィルターがかからず、さまざまな情報と出合えるのが良い点です。
情報を広く得られるテレビと深掘りするデジタル。両者をつなぐことができるのがテレビで活躍するタレントです。有名タレントのチャンネルであれば、年代が違ったとしても若年層が見るYouTubeのトップ画面に表示されやすくなります。フィルターを超える可能性があるという意味で、テレビタレントは大きな役割を果たしてくれます。
柳川:タレントにとってもYouTubeでアップした企画がバズれば新規ファンの獲得につながります。加えて、YouTubeのコンテンツをきっかけに視聴者がタレントに興味を持つことで、そのタレントが出ているテレビや他のメディアへの波及効果も期待できます。
マーケティングファネルを貫く、「YouTube×タレント」
溝渕:では、企業のマーケティング活動において「YouTube×タレント」はどのような価値をもたらすのか?先ほど柳川さんから、YouTubeでのタイアップ事例が増えているという話がありました。マーケティングを考える際、認知から契約、ファン化の流れをファネル図で表すことがあります。下図は、そのファネルにインフルエンサー(ここではYouTubeチャンネルを持つテレビタレントを想定)の価値を加えたものです。
一般的な施策として考えられるのは、「認知」に対してはテレビCM、「興味・関心」はネット広告、「比較検討」はネット検索、「ファン化」はポイントプログラムなど。それぞれのファネルで異なる施策が求められます。つまりこれまではトップファネルからCRMファネルまで最大4つの施策が必要でした。
しかし、インフルエンサーを起用すれば、インフルエンサーを横串としてまとまった施策が可能です。というのも、インフルエンサーが商品やサービスを利用したコンテンツをフォロワーが見てくれることが、「認知」「興味・関心」の向上につながります。さらにインフルエンサーが好意的な反応を示すことで、フォロワーにはポジティブな印象が残り、競合との差別化になり、「ファン化」に向けた効果も期待できるといった具合です。
これまでのテレビCMは企業発というのが大前提でした。企業が作ったストーリーの中にタレントが出演するという形でしたが、YouTubeは逆の構造で、タレントが作ったストーリーの中に企業がどう入っていくかがポイントになります。これはどちらがいいという話ではなく、いろいろな文脈が作れるという意味で、消費者とのコミュニケーションの幅が圧倒的に広がりました。そんな中で、「ある特定の“人”が自分たちの商品を愛してくれることでさらに価値が上がる」と考えている企業が増えてきたと感じています。
「誰が語るか」が付加価値に。「リアル」が視聴者を動かす時代
溝渕:PRの世界では、「情報が物の価値を高める」と言われます。例えば一杯のコーヒーでも、その背景に特別な産地や焙煎方法、実は冷凍保存しているといったストーリーがあると価値が高まりますよね。同じように商品やサービスは変わらなくても、「誰が語るか」「どんな物語を語るか」によって価値は上がります。
柳川: YouTubeはタレントが本当に思っていることを自分の言葉で表現しやすいプラットフォームです。より「リアル」に近いことを話していると、やはり見ている側にも伝わりますし、説得力も増しますよね。
溝渕:今は、「何を言うか」以上に「誰が言うか」が情報を伝える上で重要な要素になっています。ターゲット層に影響力のある人物が商品についてその人の言葉で語ってくれれば商品に付加価値が付く。PRの世界では、そういった形で自社商品の価値を高めてお客さまに伝えていくことが差別化の手法として求められています。YouTubeによる企業タイアップが増えているのは、「リアル」が共感を得られる場での新たな広告手法に魅力を感じているからではないでしょうか。
でも、タレントにアピールをお願いするなら、自社の商品やサービスに好感を持ってもらうことが前提になりますから、「本当に好きかどうか」がとても重要になってきます。
柳川:溝渕さんのおっしゃる通りですね。最近企業側からも「自社製品を実際に使っているタレントを起用したい」と要望されることが増えているんですよ。例えばアパレル企業なら「うちの服を日ごろから愛用しているタレントさんにお願いできれば!」と。企業の認識や要望もこれまでとは少し変わってきているように感じます。
また、YouTubeで広告タイアップを実施する企業の業種が広がっているのも最近の傾向です。昔は業種が限られていて、YouTube広告の反響が特に大きいジャンルは美容系でした。メイクのいろいろなハウツーをインフルエンサーが紹介する動画がバズるケースが多かったんです。しかし、YouTubeへのタレント参入が増える中、今では不動産、保険、金融といった、以前ならYouTube広告を提案しても反応の薄かった業界からタイアップの要望があります。視聴者が若年層メインということで敬遠されていたのですが、主婦層に響くようなタレント起用の希望が出るなど、広告セールス面で次のフェーズに入った実感がありますね。
溝渕:コンテンツとしては、インフルエンサーが工場見学に行ったり旅行をしたり、新しい手法も見られます。今後も新たな手法がどんどん生まれていくでしょう。私たちとしてもYouTubeに興味を示す企業へのサポートをより充実させていきたいですね。