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2021/04/23

眞鍋亮平氏に問う クリエイター・オブ・ザ・イヤーって、何だ?

デンツーホー3兄弟

歴史を重ねること、32回。いまさら「何だとは、何だ?」という話なのだが、ウェブ電通報としては「時の人」眞鍋氏に、この点をぜひ伺ってみたい。時代が大きく変わりつつある中、マスメディアの役割も、社会のコミュニケーションのあり方も、その根本から大きく変わろうとしている。権威ある賞だから、ではない。その権威の正体とは、価値とは、そもそも何なのか。その力を、眞鍋氏は今後どのように活用していくつもりなのか。ウェブ電通報ならではの切り口で、迫ってみた。


「かけ算」にこそ、勝機あり

CMプランナーからデジタルクリエーティブやPRプランニングの修業を経て現在に至るという眞鍋氏のインタビューでは、「かけ算」という言葉がよく聞かれた。編集部からの最初の質問は「オワコン(終わっているコンテンツ)とも揶揄されるマスメディアに、まだポテンシャルは残されているのでしょうか?」という意地悪なものだった。それに対して、眞鍋氏の答えは明快だった。

電通入社後、ずっとクリエーティブ局。2014年からクリエーティブ・ディレクター。2020年からNewsPicks StudiosのChief Creative Officerも兼務。中長期で展開する耐用年数の長いブランドアドが得意。学校や番組づくり、商業施設の空間・体験設計など、広告クリエイティブの拡張にも手腕を発揮している。
電通入社後、ずっとクリエーティブ局。2014年からクリエーティブ・ディレクター。2020年からNewsPicks StudiosのChief Creative Officerも兼務。中長期で展開する耐用年数の長いブランドアドが得意。学校や番組づくり、商業施設の空間・体験設計など、広告クリエイティブの拡張にも手腕を発揮している。
 

「マスが持つリーチの大きさと、デジタルが持つエンゲージメントの深さをかけ算できれば、その可能性は無限大だと思います」。新聞×SNSにしてもそう。雑誌というメディアの「才能を発掘する力」も、ラジオという「音に特化したメディアならではの力」も、デジタルとのかけ算によってとてつもない波及力と破壊力を持つのではないか、と。「オワコンなどという声があるのだとすれば、逆にそれはチャンスだと僕は思います。デジタルで培ったノウハウを、マスに返すことができれば、まだまだ面白いことがやれるんじゃないか」。
 

地道な積み重ねが、スピード感を生む

もう一つ、眞鍋氏へのインタビューで印象的だったのが「積み重ね」というワードだ。一見すると、前時代的な精神論かと思いきや、そうではない。今回の受賞につながった大塚製薬ポカリスエットのCMも、この時代の中高生の心にポカリスエットというブランドの持つ価値を再認識してもらうには、一体どうしたらいいのだろう?ということを、コロナ禍に見舞われる何年も前から考え続けて、試行錯誤を続けてきた結果、生まれたものだと言う。
世の中は、その表現に心から感動しつつも、何よりもそのスピード感に驚いた。ステイホームとなった途端にこの表現を、このスケールでやってのけるとは、一体どういうからくりなのか?と。「からくり、なんてものはないんですよ。地道にやり続けてきたことに、突然、大きな出番が回ってきた、という感じでしょうか」。

大塚製薬ポカリスエット「ポカリNEO合唱」篇。大規模な撮影ができなくなり、97人の出演者がスマホで自撮りした映像を編集。緊急事態宣言の3日後に公開され、大きな話題に。
大塚製薬ポカリスエット「ポカリNEO合唱」篇。大規模な撮影ができなくなり、97人の出演者がスマホで自撮りした映像を編集。緊急事態宣言の3日後に公開され、大きな話題に。

 

壁に対して萎縮する気持ちが、壁をつくっている

コンプライアンス、人権にまつわること、ビジネスとして達成しなければならない数字……。クリエイターの前に立ちはだかる「壁」は、年々、大きく分厚くなっているような気がしてならない。そのあたりを、どう考えているのか? 眞鍋氏にずばり聞いてみた。

「萎縮しないことでしょうね。壁そのものをポジティブなものと捉えるというか。この時代に、なぜその壁が壁として存在するのか。存在感を増してきているのか。目の前にある壁の高さや厚みを研究することで見えてくることもある。その上で、クライアントやチームメンバーと協力しながら、どう面白く乗り越えていくかを考える。ネガティブに捉えようと思うといくらでもできるのですが、そうしないことで状況は変えられると思います」。

東急プラザ銀座の7階に2020年7月にオープンした「NewsPicks GINZA」。「NewSchool」「NewStore」「NewCafe」から構成されるリアルな集いの場。
 東急プラザ銀座の7階に2020年7月にオープンした「NewsPicks GINZA」。「NewSchool」「NewStore」「NewCafe」から構成されるリアルな集いの場。

 

考えたくなっちゃうこと、が大事

ここで眞鍋氏に「そもそも、クリエイティブという形容詞は、どんな意味があるのでしょう?」という質問をしてみた。クリエイティブな仕事、と言われると何となくイメージが湧く。でも、クリエイティブな暮らしとか、クリエイティブな人生とか言われると、途端にさじを投げたくなるというものだ。「これまでのやり方、敷かれたレールとは違うことを……」と切り出す眞鍋氏に、ありがちな答えが返ってくるものだ、と正直思った。でも、続けて「考えたくなっちゃう、ということでしょうね」、と来た。

安定した時代には、クリエイティブな人生など、よほどの酔狂な人間しか選ばない道だ。でも、不確実性の高い時代には「そのようなことを考えたくなっちゃう人が、不思議と重宝されるんだと思います」。誰に強制されたものでもない。ついつい、考えたく「なっちゃう」。だから、気がつくと鉛筆を握っている。いつもとは違う隠し味を、いつものカレーに仕込んでいたりする。それが、クリエイティブということなのだと考えれば、合点がいくのではないか。

「ASICS FIRST RUN」国立競技場のオープニングイベント。人々がトラックをはじめて走る瞬間を演出。ブランドの思想を体験できるイベントを実現した。
「ASICS FIRST RUN」国立競技場のオープニングイベント。人々がトラックをはじめて走る瞬間を演出。ブランドの思想を体験できるイベントを実現した。

 

実は、教師に憧れていたんです

インタビューの最後に、とてつもなく意地悪な質問を眞鍋氏に投げかけてみた。この記事のタイトルにあるように「クリエイター・オブ・ザ・イヤーって、何だ?」というものだ。「すごく簡単に言うと、ずっと憧れていたものですね」という返事に続けて、不思議なコメントが返ってきた。

「実は僕、学校の先生になるか、電通の、それも営業職として就職するか、最後の最後まで迷っていたんです」と。「クリエイター、それもオブ・ザ・イヤーとか持ち上げられると、なんだか創造主にでもなったような気恥ずかしい気持ちになるんですが。広告と教育って、根っこの部分ではどこか共通したものがあって、それは教えるというよりも伝えたいという気持ち。大学4年の時に広告学校に通っていたのですが、憧れていた岡康道さんにコンテを講評してもらえました。広告クリエイティブという一生かけて探究したい奥深い仕事を教えていただいたのですが、そうして先輩たちから受け継いだものを、若い人たちに引き継いでいきたい。NewsPicks NewSchoolをクライアントと立ち上げたら、そこの一つの講座を先生として請け負うことになりました。ここにきて、もともとやりたかった教育と、これまでやってきた広告が重なってきて、運命のようなものを感じています」。

クリエイター・オブ・ザ・イヤーという称号は、教職免許というような感じですか?と尋ねると、そうかもしれません、という言葉が返ってきた。「でも、変化し続ける時代にチューニングしながら、謙虚に学びつづけるしかないと思っています」。


(編集後記に替えて)

デン太郎「最後の、教員資格の話は、しびれたね」
ツー次郎「デジタル領域で培ったノウハウをマスに返す、という話にも通じる」デン太郎「昔の人は、裏を返しとけ、とかよく言ったもんだよ」
ツー次郎「先輩にご馳走になったとき、とかにね」
デン太郎「ここは俺が払っとくけど、今度はお前が自腹で、この店に後輩とか連れて来るんだぞ、と」
ツー次郎「そう。それが、裏を返す、ということ」
ホー三郎「ホ、ホぅ〜」
デン太郎「持続可能な社会の実現とか言われているけど、大事なことは、そういうことなんじゃないかな」
ツー次郎「サステナビリティってものの根っこに必要なのは、先人、後輩、世の中のあらゆる人をリスペクトする気持ちなのかもしれないね」
デン太郎「そう。その気持ちさえあれば、多少の破天荒は許される」
ツー次郎「まあ、それはどうか、と思うけど……」
デン太郎「だから、オレ様は今日も、このようにデデーンと構えていられる」
ホー三郎「ホ、ホぅ〜」
ツー次郎「デン太郎の破天荒話はともかく、眞鍋さん。今回は、素敵なお話をありがとうございました!」

デンツーホー3兄弟

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