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「推し活」時代に進化するアイドルの価値No.4

2021/04/26

アイドル本人に聞く。推し活時代のコンテンツづくり

「推し活」が盛んな今、「推される」側のアイドルや、アイドルとともにコンテンツをつくるクリエイターはどのようなことを意識しているのか? SNS時代におけるファンとの繋がり方とは?

アイドルをテーマに、メディアやコミュニケーション、さらにはエンターテインメントのあり方を考える本連載。最終回は、コンテンツプロデューサーの電通・佐藤祐亮氏が、ラストアイドルのメンバー・間島和奏さんと、楽曲の振付を担当するakane先生に話を聞き、 エンターテインメント分野におけるアイドルの現在地を探ります。

アイドル論4回目

アイドルは、いろんな料理が楽しめる「フードコート」のような存在

佐藤:今日はいろいろお話を聞かせてください。まずはお二人の自己紹介からお願いします。

間島:ラストアイドルの間島和奏です。ラストアイドルは、秋元康先生が企画したアイドルオーディション番組から生まれたグループで、2017年から活動しています。「プロアマ問わず兼任可能」の条件で募集したり、番組の中でデビューをかけたメンバー入れ替えバトルを行ったりと、これまでにない形でメンバーが選抜されているのが特徴です。デビューをかけたバトルに敗れた場合には「セカンドユニット」を結成するチャンスが与えられ、私はそのセカンドユニット「Someday Somewhere」の一員としてデビューしました。

akane:振付師のakaneです。代表的な仕事としては、大阪府立登美丘高校ダンス部のコーチとして「ダンシング・ヒーロー」の振付をしたり、同部がハリウッド映画「グレイテスト・ショーマン」のPR大使に選ばれた際にプロモーションビデオの振付などを担当してきました。現在は登美丘高校ダンス部のコーチは引退し、CMやアーティストの振付、ラジオのDJなどで活動しています。ラストアイドルとは2019年から一緒に仕事をしています。

佐藤:ラストアイドルとつくってきた作品の中で、特に印象に残っているものはありますか?
 
akane:私が初めて振付を手掛けたシングル曲「青春トレイン」です。今あらためてMVを見ると、こんなに複雑で難しいフォーメーションのダンスだったのかと自分でも驚きます。3、4カ月かけてメンバーとつくり上げていきましたが、当時は皆泣きながら練習していましたね。でもこの作品を経験したからこそ、今では振付を覚えるのが皆早くなりましたし、練習もスムーズにいくようになったと思っています。

間島:「青春トレイン」は本当に大変な作品でした。朝から晩まで毎日ダンスの練習をしてノイローゼになりかけるくらい……。それまではユニットごとにバトルをすることが多く、ラストアイドル全員で一つの作品をつくることにまだ慣れていない時期でした。メンバー同士のすれ違いもありましたし、「皆で他のアイドルグループと戦うぞ!」という意識がまだまだ薄かった。

でも、これまでたくさんのチームをつくってこられたakane先生が来てくれてから、ラストアイドルにも徐々に「チーム感」が生まれていきました。皆、akane先生のことはメンバーの一員のように思っています。

佐藤:間島さんは、アイドルという仕事のどこに魅力を感じて、自分もなりたいと思ったのでしょうか。

間島:私はAKB48さんに憧れてアイドルを目指しました。小学3年生のときに、「ヘビーローテーション」のMVを見て、私もあんなふうにかわいい服を着て「キラキラ」したいなと思ったんです。

「キラキラ」を言葉で説明するのはとても難しいのですが、アイドルって歌やダンスのパフォーマンスはもちろん、バラエティー番組に出演したり、お芝居をしたりもしますよね。そういう、なんでも挑戦できる無敵な存在ってアイドルだけだと私は思っているんです。そしてグループでは、メンバー一人一人の個性を評価してもらえるところも魅力だと思います。

佐藤:なるほど。ただ、一般的には歌だったら専業の歌手のほうが、演技だったら専業の役者のほうが上手いですよね。そういう意味で言うと、間島さんが言う「アイドル」は、ある種の「不完全さ」も魅力の一つで、応援したくなるポイントなのでしょうか。

間島:そう思います。私はアイドルって「フードコート」みたいだと思っているんです。高級イタリアンを毎日食べると飽きちゃうけど、フードコートだったら気軽に行けていろんな料理が楽しめる。完成された料理ではないかもしれないけれど、まだまだ美味しくなる可能性があって、どんどん「味」が磨かれていくところも、楽しいところだと感じますね。

ファンとのコミュニケーションを意識して、振付に「仕掛け」をつくる

佐藤:akane先生は、本格的にアイドルの振付をするのは、ラストアイドルが初めてだそうですね。大変だと感じたことはありますか?

akane:ラストアイドルには地方のメンバーもいて、全員でそろって練習できる期間がとても少ないので、毎回大変です。限られた期間の中で振付や立ち位置を全部覚えて、歌の練習もしなくてはなりません。さらにメンバーたちは、配信イベントの出演などほかの仕事もあり、それらにも全力で取り組んでいるのはすごいなと感心します。

佐藤:ラストアイドルと関わるようになってakane先生ご自身には何か発見や変化はありましたか?

akane:ライブでラストアイドルファンの方々を見たときには、その熱量に驚きましたね。お客さんがコール&レスポンスしたり、サイリウムを振って一緒に踊ったり、そういったことでアイドルとコミュニケーションを取っていて、この両者の距離感がとても大切なのだと感じました。

そういうこともあって、ラストアイドルの振付は、楽曲の雰囲気にもよりますが、「ファンとのコミュニケーションが取りやすいパフォーマンス」を心掛けています。「こういう振付をしたらファンはどんなリアクションをしてくれるかな」と考えて、「仕掛けポイント」をつくったりしていて……。それが受けることもあるし、変だと言われることもあるのですが、どんな反応が返ってきてもすごく面白くて楽しいんですよね。

だから私はパフォーマンス中のラストアイドルだけではなく、「パフォーマンスを見るファン」も普段からよくチェックしています。他のアイドルグループのライブDVDもよく見ていて、アイドルのパフォーマンスについては今も日々研究中です。

また、ラストアイドルは他のアイドルグループがやっていないことにチャレンジしている印象があります。毎回楽曲の雰囲気が全く違うので、振付にとても苦労するのですが、私自身も「まだ誰もやったことのないような新しいものをつくりたい」と思っているので、ラストアイドルとのお仕事はいつもとても楽しいです。

9作目のシングル「何人(なんびと)も」では殺陣を使ったダンスを、4月28日にリリースする10作目のシングル「君は何キャラット?」では、インドのボリウッドダンスの要素を取り入れるなど、毎回振付のなかに「初めてトライする要素」を、必ず一つは入れるようにしています。

SNS時代の今、アイドルの「自己プロデュース力」は必須

佐藤:間島さんはアイドルファンから自分が「推される」立場になって、気を付けていることや意識していることはありますか?

間島:ファンの皆さんに「どう推し活をしたらいいのか」を自分から提示するよう意識しています。例えば、歌番組に出演した際に、番組のホームページから感想を送ってほしいとか、雑誌のアンケートに答えてほしいとか……。握手会やオンラインイベントの券を購入して参加してもらえることはとてもありがたいのですが、金銭的に難しい方もいると思います。そういう方々にも推し活をしてもらえるような具体的な方法を、積極的に発信するようにしていますね。

佐藤:アイドルと言えばCDを買って投票するようなイベントもありますよね。そうしたアイドルとファンとの「協力型イベント」にはどういった心持ちで取り組んでいるのでしょうか。

間島:協力型イベントはファンの皆さんにお願いをしないといけないので、自分もその分頑張らなくてはという気持ちは常にありますね。でも「ファンの皆さんは、私たちの3倍大変だ」と思うようにしているんです。学業や仕事があるなかで、配信を見るための時間をやりくりしてくれたり、CDを購入してくれたり……。私たちアイドルももちろん大変だけど、それ以上にファンの皆さんも大変な思いをしながら応援してくれているということは、いつも忘れないように心掛けています。

そして、応援してくださるファンの皆さんには、「アイドル」と「ファン」の一体感を味わっていただきたいなと思っています。SNSや配信する動画の内容も一方通行のコミュニケーションではなくて、ファンの皆さんが「一緒に時間を共有している」と感じてもらえるよう工夫しているんです。私もまだまだ試行錯誤をしているところなのですが、そうした「自己プロデュース」が上手な子は、どんどん人気が上がってくる印象がありますね。

佐藤:アイドル自身が自分なりにできることを考えて精いっぱいやっていくことで、ファンもより応えてくれるということでしょうか。

間島:そう思いますね。今はSNSが盛んで、自分からどんどん発信できる時代だからこそ、個々のプロデュース力が本当に大切になっていると感じます。次回のシングル「君は何キャラット?」のセンターは、「ラスアイ、よろしく!」の番組視聴者投票で1位を獲得した西村歩乃果に決まりました。彼女はInstagramやTwitterのフォロワーがとても多く、自己プロデュース力がとても高い子なんです。

今後も彼女のように、ダンスや歌などのパフォーマンス力に加えて、自己プロデュース力が高い子が選抜メンバーになったり、センターに選ばれたりしていくのかなと思っています。

アイドルとファンは対等。両者の歯車がうまく嚙み合えば、大きなパワーが生まれる

佐藤:ここまでのお話を聞いて、アイドル文化はやはり「アイドル」と「ファン」が一緒につくりあげていくものだと感じました。応援してくれる人のパワーを上げていくのはアイドル側の頑張りで、アイドルのパワーを上げていくのはファンの熱量。両者が対等であることが、今のアイドルの特徴なのかもしれません。最後に、お二人が今後挑戦したいことを教えてください。

間島:オンラインライブのやり方をもっと工夫できないかなと考えています。アイドルのライブってパフォーマンスに対してファンの皆さんがコール&レスポンスしてくれたり、サイリウムを振ってくれたり、アイドルとファンで一緒にライブをつくりあげるところが魅力の一つだと思うんです。それが今のオンラインライブでは、双方向のコミュニケーションが取りづらくなっていると感じます。

例えばリアルタイムでファンの皆さんのコメントをステージの演出に使うとか、ギフティング量に応じて火花やスモークなどの演出を変化させるとか、ファンの皆さんが能動的に参加できるライブを今後つくっていけたらいいなと思いますね。

akane:私はいつかラストアイドルの皆とダンス作品を映像で残したいなと思っています。メンバーと過ごした時間も長くなってきて、それぞれの「この表情がいい!」とか、「ここを見てほしい!」というポイントを、私は一番わかっているつもりなので、他の人には表現できないような作品をつくれる気がしています。

また、今のアイドルの子たちは常にSNSをチェックして、いろいろなことにアンテナを張っているので、情報をキャッチする力がすごいですよね。だからこそ、彼女たちから面白いアイデアがたくさん出てくることにも期待しています。その意見を積極的に取り入れて、これからも楽曲やライブを一緒につくっていきたいですね。アイドル自身の意見を取り入れてつくりあげたものは、ファンにもきっと楽しんでもらえると思います。

佐藤:アイドルと言えば、昔はプロデューサーが絶対で、そこにファンが入り込む余地はなく、つくられたものをテレビで観て楽しむエンターテインメントでした。でもSNSが出てきたことで、大人たちが用意したメディアやイメージで売り出すだけではなく、アイドル本人たちが自分自身をプロデュースする時代になっていると感じます。

そのなかでアイドルたちから、これまで思いつかなかったような考えや面白いアイデアが生まれることもあって、それを運営側が積極的に取り入れていくことが、今後大切になってくるのではないでしょうか。

そして、応援するファンや協賛する企業など、「アイドル」という一つのコンテンツに関わる人たち皆が同じベクトルを持つことで、アイドルのパワーは何倍にもなり、どんどん面白いものが生まれてくるのだと思いました。お二人とも、本日はありがとうございました!

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