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「推し活」時代に進化するアイドルの価値No.3

2021/01/26

「アイドル×次世代コンテンツ」から生まれるシナジーとは?

アイドルをテーマに、メディアやコミュニケーション、さらにはエンターテインメントのあり方を考えていく本連載 。3回目は、「みんなが応援するアイドルを起用することで得られるマーケティング効果」について考察します。

推し活が盛んな今の時代、企業はアイドルとどのように協業しているのか?生活者、アイドル、企業、それぞれにメリットがある、“三方良し”が実現されるコミュニケーション設計のあり方とは?

本記事では、次世代コンテンツ配信サービス「5G LAB」でアイドルコンテンツの制作に携わる、ソフトバンクの正木光則氏と筑田大介氏を迎え、電通・中村大河氏が話を聞きます。

推し活
イラスト:金井沙樹

「もっと近くでアイドルを見たい!」ファンのニーズに応える次世代コンテンツ

中村:昨今では、事業会社のマーケティング活動でアイドルと協業することが増えています。ソフトバンクは、最新のテクノロジーを駆使したコンテンツ配信サービス「5G LAB」において、ラストアイドルやAKB48グループなどと協業してコンテンツを作っていますね。まず、5G LABとはどのようなサービスか教えていただけますか。

正木:次世代通信システム5Gが持つ、「高速大容量」といった特徴を生かした、新しいコンテンツ配信サービスです。5G LABには、「AR SQUARE」「VR SQUARE」「FR SQUARE」「GAME SQUARE」の四つのサービスがあります。

  • AR SQUARE…リアルとバーチャルを組み合わせるAR(拡張現実)の技術を活用。タレントやキャラクターがまるで目の前にいるかのような世界が楽しめる。
  • VR SQUARE…VR(仮想現実)の技術を活用。ユーザーはVRゴーグルを装着して、ライブやスポーツを臨場感あふれる立体的な映像で体験できる。
  • FR SQUARE…Free view point Reality(多視点)映像サービス。ライブやスポーツで、複数のカメラが撮った映像を自由に切り替えながら、自分が見たい瞬間の映像を楽しめる。
  • GAME SQUARE…ゲームで遊ぶときに発生する、負荷のかかるデータ処理をクラウドで行い 、映像をストリーミング配信するクラウドゲーミングサービス。高性能を要求するゲームでも、デバイスや場所を問わず遊ぶことができる。

各アプリでは、さまざまなコンテンツを配信していますが、AR SQUARE、VR SQUARE、FR SQUAREでは、アイドルと協業してライブ配信などを行っています。

中村:新しい視聴体験ができるのが5G LABの大きな特長ですね。なぜアイドルとコラボしようと考えたのでしょうか?

正木:さまざまなアイドルグループが活動していますが、メンバーが多い場合、今までのようにスイッチングされた一つの視点だけで視聴すると、センターやフロントの子ばかりが映ったり、多人数ならではのフォーメーション全体の美しさを見せられませんでした。

この問題を解消するには、複数のカメラで、正面や背面、上手や下手など、さまざまなアングルから撮った映像を一つのコンテンツに集約して配信できるFRの技術が役立つと考えました。また、FR SQUAREには「推しカメラ」という機能もあり、特定のメンバーだけを追いかけて撮影した映像が見られます。このサービスは、「推しをずっと見ていたい」というファンのニーズに応えるものです。

また、VR SQUAREにも、視点を切り替える機能があります。VR SQUAREは、基本的にVRカメラをステージの目の前に設置して撮影しています。「より近くで推しを見たい」というファンの心理に応えることができ、センターの最前列よりもさらに前ということで「超神席」と称し、ファンの皆さんに楽しんでいただいています。

ライブ映像の他にも、AR SQUAREのコンテンツでは、アイドルをスマートフォンのカメラで出現させて、現実の人物や背景と一緒に写真や動画を撮ることができます 。

このように5G LABを活用して実現できることは、アイドルととても相性がいいんです。

中村:どのサービスも、いわゆる「推し活」のニーズに応えられるようになっているのが印象的ですね。ユーザーの反応はいかがですか?

正木:SNS上では、「この時、推しはこんな表情をしていたんだ」など、自分の好きなメンバーをじっくり見ることができる点について評価いただいています。好きじゃないと見逃してしまうようなシーンを含め、パフォーマンスの全てをお届けしているので、ファンがSNSにアップする情報やコメントを見て「ここがファンの心に刺さるのか」と、われわれが学ぶことも多々あります。

筑田:さまざまな角度からカメラで撮影しているので、アイドルにとっては気が抜けない部分もあるでしょう。一方、ファン目線では、普段見られないところがいかに見えるかということになるので、ライブ会場とは違う楽しみ方ができるのかなと思っています。

先進的サービスの知見を、アイドルファンが広げてくれる

中村:アイドルファンにとっては、5G LABのコンテンツは多くのメリットがあるようですね。その一方で、アイドルと協業している企業側にもたらされるメリットは何でしょうか。

正木:5G LABは、AR、VR、FR といった、一見とっつきにくそうな技術が用いられています。このようなちょっと難しそうなイメージのする新しい技術というのは、初めはユーザーから敬遠されがちです。しかし、アイドルファンの方の熱量は高く、推しを見たいという強い思いから、“難しそう”という壁をも越えて使ってもらえます。

また、新しい技術を使ったサービスを世間に伝えるとき、企業が生活者に発信するのと、ユーザー(生活者)同士で話をするのとでは、質に違いがあると考えます。ユーザー同士の場合、よりフレンドリーで分かりやすい言葉で会話が成り立つので、サービスや機能がより理解されやすいと感じます。

筑田:アイドルファン同士のコミュニケーションが積極的に行われることが、企業としては大きなメリットになっています。好きなものが共通している分、助け合いの精神が働いて「このボタンを押したらこう見えた」「ここをこう操作したら、こういう楽しみ方ができるよ」といったやりとりが交わされています。サービスの知見がユーザー間で自然に広まり共有されていくのは、アイドルファンならではかもしれません。

加えて、企業が新しい技術を伝えていくとき、アイドルのような方々と新技術は、親和性が高いと感じています。より印象的に自社の技術を世間にアピールできるメリットがあります。

正木:そうですね。中でも、私どもとコンテンツ作りでご一緒させていただいているラストアイドルのメンバーは、とても協力的で、サービス開始初期からVR SQUARE・AR SQUARE・FR SQUAREの全てのコンテンツに入っていただきました。またわれわれが新しい試みなどを試そうとしているときも多大なご協力を頂き、一緒にサービスを育てていく形になりました。

例えば、昨年の緊急事態宣言の最中に流行った、芸能人の「うちで踊ろう」動画。実はラストアイドルの皆さんにも「FR SQUARE」で配信する「#お家で踊ろう」映像を撮っていただきました。スピード感を持って対応いただけたおかげで、アイドルの中ではかなり早い段階で公開することができました。メンバーの皆さんは、これまで触れたことがない新しい技術などについても積極的に理解を深めようと努力していました。これらによって、うまくコンテンツ展開ができたことには大変感謝しています。

筑田:一方で、アイドルとコンテンツを作るときにわれわれ企業側が気をつけないといけないこともあります。ファンの熱量が高い分、われわれが演者のことを理解しないまま物事を進めると炎上するリスクがあります。この演者とこの演者がこう出ているから意味がある…という文脈をしっかりと掴み、ファンの目線になってどう楽しんでもらえるかを考えることが重要です。企業側がそれを理解した上で作っているかどうかが、コンテンツやサービスを支持してもらえるかどうかの大きなポイントになります。

発信の場が広がり、後列のアイドルも自分をアピールできる

中村:企業とコラボするアイドル側にはどんなメリットがあると考えていますか?

正木:ライブ映像やテレビ番組をこれまでのように撮影した場合、アピールする機会は限られてきます。しかし、5G LABのコンテンツなら、複数のカメラによる撮影や視点を変えられる映像などで、これまでにない角度からアピールができたり、一人一人のメンバーにフォーカスしたりすることができるので、より一層自分を前に出しやすいのではないでしょうか。アイドルにとって露出機会の拡大につながると思います。特に後ろの方にいるメンバーもしっかり自分をアピールできる場が、5G LABにはあります。このことがファンに周知されてくると、好きなアイドルとつながる方法として5G LABが選択肢に入ってくるのではないかと思います。

筑田:また、アイドルはイメージ戦略も非常に重要です。その点、新しい技術を取り入れたサービスとのコラボレーションは、先進的なイメージが付くという意味でメリットになっている部分もありそうです。

中村:新しいサービスを世の中に広めていくときに、アイドルが担える役割があるのかもしれないですね。

お二人のお話をまとめると、次世代コンテンツとアイドルを掛け合わせることから生まれるシナジーとして、

  • ファンは、今まで以上に「推し活」を楽しめる
  • 企業は、アイドルとそのファンを通じて新しいサービスの浸透が狙える
  • アイドルは自分をアピールできる場が広がるとともに先進的イメージを醸成できる

ということが分かりました。

これからの展開がますます楽しみですね。本日はありがとうございました!

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