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新たな兆し。ウェルビーイングを高める、男性×料理のおいしい関係

2021/04/28

新型コロナウイルスの影響もあって生活様式が大きく変化している今、「Well-being(ウェルビーイング、イタリア語のベネッセレを始原とする“よくある状態”を意味する)」をより高める鍵は「料理」にあるのかもしれません。

男性の調理支援を目的としたプロジェクト、「世の中が変わるときは、料理をしよう。」が「BRUTUS.jp」と「AJINOMOTO PARK」でスタートしました。Withコロナ時代に幸福度を上げていくための新たな兆しとなりえる、男性×料理の魅力とは何でしょうか。

同プロジェクトの発起人である味の素社執行理事の岡本達也氏、その志に共感し、企画を立案した「BRUTUS」編集長の西田善太氏、岡本氏が料理とウェルビーイングの関係へ着目するきっかけを作った予防医学研究者の石川善樹氏の鼎談からヒントをお届けします。

(左から)予防医学研究者の石川氏、味の素執行役員の岡本氏、「BRUTUS」編集長の西田氏
(左から)予防医学研究者の石川氏、味の素執行理事の岡本氏、「BRUTUS」編集長の西田氏

「食」への行動が生み出す「居場所」。コロナ禍でも幸福度が高い人の特徴とは?
 

西田:今40~50代の男性の多くは、おそらくあまり料理をしていません。しかしそれは、社会と本人、双方にとっての新たな“鉱脈”が潜んでいることでもあると思います。

BRUTUSでは2011年に「最高の朝食を」という特集を組み、東日本大震災で多くの人が苦しんだ時期に、さまざまな思いを込めて朝ご飯だけは自分で作ってきちんと摂ろうと発信しました。レシピもたくさん載せ、コア読者である男性に朝ご飯から料理への意識を向けたいと考えたのです。

昨年から新型コロナの先行きが見えず不安な状況が続いていますが、簡単に抜け出せないのは、世の中が変わるときだからだと私は考えています。そういった時代に、足元を見直したり、根幹に立ち返ったり、アクションを変えてみることがプラスになるなら、男性にとっての料理はとてもいい素材です。ノウハウがたくさんたまっているし、簡単にも深くも追求できるカルチャー。今回はそれを提案するチャンスをいただけたので、BRUTUSなりに紹介していきたいと思っています。

西田氏

岡本:近年は、どちらかといえば“調理をすることは面倒だから可能な限り簡単に”といった風潮があったと思います。完全栄養食のような物を作るなど、商品の中にすべてそろっていることが当たり前という流れだったのですが、私はそこに違和感を覚えていました。

私自身は料理が楽しく、作ったものを誰かに「おいしい」と言ってもらえればうれしい。買い物に行き、旬の食材を見つければ気分が上がります。そこで「調理を簡単にすることだけが本当に“絶対”なのだろうか?」という思いがあったのです。

その後、石川さんから「料理をすることや食にまつわる時間が人生を豊かにする」と複数のエビデンスを基にしたお話を伺い、「私が求めていたものはこれだ!」と直感しました。現状、日本ではまだ料理の楽しさや充足感に気づいていない男性が多いように思います。この企画ではそこをお伝えできればいいですね。

岡本氏

石川:そうですね。近年は特に男性の料理頻度がとても低くなってきています。2019年に世界116カ国で「人々がどれくらいの頻度で料理をしているのか」という調査が行われました。すると、一国の例外もなくすべての国で男性よりも女性の方が料理をしていることが明らかになりました。それに驚くと同時に、料理頻度の男女格差は国ごとにばらつきがあることも分かりました。そして、格差が小さい国ほど、ウェルビーイング度が高い傾向がみられました。

また昨年、コロナ禍での苦境や大変さが話題に上がる中、僕は逆の視点を持とうと考え、この状況にもかかわらず幸福度やウェルビーイング度が上がった人の特徴を調べました。すると、共通していたのが料理でした。例えば在宅勤務で料理をするようになった人ほど、ウェルビーイング度が上がったという傾向がみられました。

西田:僕は食べることって「居場所」につながる行為だと考えています。例えば、飲食店に行き、食事をすることでそこにひとときの居場所ができますよね。今はそれが一気にできなくなってしまってたいへんつらい状況。

では、家で男性が居場所を作るにはどうしたらいいかというと、料理をするのがとても有効なんです。ただ座って料理を待っているだけではなく、参加しないと家では居場所ができません。食事を作るのは、そこで一歩先に進む大きなチャンスとも言えます。

岡本:時間をいい形で使えると人は幸せになる。食材を集めたり、料理をしたり、家族や気を許せる相手に食べてもらいながら話をするのはすごく幸せな時間ですよね。

西田:今、調理器具は非常に発達しています。そういった道具を使うのは手抜きではありませんし、機能やスペックなんかを見比べるのも男性には面白いはず。それに今ほど世の中にたくさんのレシピが出回っている時代はありません。好みの料理を作るシェフが、自分の料理の秘密を本でもインターネットでも動画でも簡単に明かしてくれている。料理を始めるのに、これほどいい時代はないのではと感じています。

料理は現代のキーワードすべてを象徴するアクション

石川:新型コロナの影響に限らず、今の時代は生活様式や概念に幅広く変化が生じているタイミング。「ダイバーシティー」や「サステナビリティー」「ウェルビーイング」といった時代のキーワードが次々生まれている中で、それらすべてを象徴するのが料理ではないかと考えています。

例えば料理をする過程で「食材ってどこから来て、どこに行く?」と考えることはサステナビリティーにつながるし、男性が料理をすることでダイバーシティーが推進され、女性がもっと自分の時間をしっかり持てるようにもなる。だから「世の中が変わるときは、料理をしよう。」という話なのですが、特にこれから料理はもっと今の時代の象徴になっていく期待感があります。

サステナビリティーを象徴する行為として脱プラやエコバッグを持ち歩くことが挙げられますが、もっと広い視点で“今の時代を象徴する行為”を考えたときに僕は料理だなと。入り口が広い半面、少し踏み込むととても奥深い世界が待っています。

石川氏

岡本:料理は基本的にクリエイティブな作業。やってみると楽しい部分がすごくたくさんありますよね。少しの工夫がどこかに現れてきますし、そういった検証をしていくのが好きな男性は多いと思います。

石川:一概には言えませんが、食べてくれる人が自分以外にいなくても、料理という行為自体がウェルビーイング度を上げる可能性は高いですね。買い物、調理、片づけをすべてするのは手のかかることではありますが、それをせずにファストフードで食事をしたとして、空いた時間に何をしているものでしょうか?

これは私自身もそうですが、何となくスマホを見たり、ぼんやりして時間をつぶしている場合、きっと本人が本当にしたくての行動ではないですよね。それに代わる時間の過ごし方として、料理はよりウェルビーイングを高める所作と言えるはずです。

西田:料理をすることで、自分の生活をきちんと管理してコントロールしている感覚もつきますね。

石川:そうですね。加えて達成感もあります。今は仕事も分業が進んでいるので、一つの事案を最初から最後まで全部自分で手掛けることはなかなかありません。“部分”の仕事に意味合いややりがいを感じるのは難しいものです。そういう意味でも料理は最初から最後まで自分が関われるので、すごく充実した時間の過ごし方になります。この企画を通して料理を食におけるニューノーマルと捉え、それも含めた新たな生活のバランスを見つけてもらえればと。

西田:世の中を変えていくのはやはり“能動”。外出自粛が続く中で、例えば動画サービスなどを受動的に見続けていた人たちは、コンテンツ疲れを起こしているように感じます。与えられるコンテンツに疲れたら、自分のコンテンツを作ればいい。それが料理だと思うんです。自分の料理は唯一無二の作品ですから。

料理をしなかった時間が長い人ほど最初の下ごしらえのハードルが高いと思ってしまうようですが、みじん切りが難しいなら切られた野菜を買ってきて、そこから始めることもできます。

岡本:私自身仕事に没入していた時期が長く、その当時は物質的な豊かさの方ばかりを追いかけていたように思います。けれど、石川さんとお話をする中で、一番大切なものはやはり「時間」だと気づきました。

時間はプライスレス。だからこそ、何に使うかということが非常に大切です。時間をいい形で使えると人は幸せになる。それがウェルビーイングなのではないかと思います。ウェルビーイングを生み出すのに一番いい時間の使い方が食と調理なのではという思いでこの企画を始めましたが、こういった取り組みは、すぐ終わってしまっては意味がありません。長期にわたって続けていくものとして携わっています。まずは日本の男性が料理の良さに気づき、始めることで周りも幸せになれるような動きのお手伝いが少しでもできたらうれしいです。


「世の中が変わるときは、料理をしよう。」

「BRUTUS.jp」の特集ページはこちら

「AJINOMOTO PARK」の特集ページはこちら

<コンテンツ詳細>

①Talk ~俳優・永山絢斗の『聞くレシピ』~
「料理×ウェルビーイング」をテーマに俳優・永山絢斗氏が各界の有識者と対談。予防医学研究者の石川善樹氏、作詞家の児玉雨子氏、情報学研究者のドミニク・チェン氏が登場。
https://park.ajinomoto.co.jp/special/well-being/talk01/

Talk1:俳優 永山絢斗氏×予防医学研究者 石川善樹氏「ウェルビーイングの鍵は料理にあった!?
Talk1:俳優 永山絢斗氏×予防医学研究者 石川善樹氏「ウェルビーイングの鍵は料理にあった!?

②Fun Cooking ~作りたくなるレシピ(動画付き)料理ってこんなに楽しかったのか!~
簡単で誰でも作りたくなるようなレシピを動画付きで紹介するコンテンツ。「ごはんと旅は人をつなぐ。」をテーマにレシピ開発を行う山田英季氏と、「Bistro Rojiura」「PATH」「LIKE」を経営するシェフ原太一氏が登場。
https://park.ajinomoto.co.jp/special/well-being/funcooking01/

③Recipe Archive ~作りたくなるレシピ 今はなきあの名店の味を自宅で!~
“最強料理芸人”の愛称で知られるクック井上氏が「BRUTUS」で連載していた「十中八九同じ味!思い出巡りの料理レシピ」から、選りすぐりのベストレシピ30を掲載。クック井上氏の料理術も紹介する。
https://park.ajinomoto.co.jp/special/well-being/recipearchive01/

④Book 美味求真2021 ~もっと食を知るためのブックリスト~
日本の美食文化の礎となった大正時代の名著「美味求真」(木下謙次郎著)へのオマージュとして、食にまつわる書籍を紹介。食文化研究家の畑中三応子氏が日本屈指の食の専門図書館(「食の文化ライブラリー」)から11冊を選書する。
https://park.ajinomoto.co.jp/special/well-being/book01/