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OOHのニューノーマルNo.1

2021/08/25

OOHは、“場所起点”から“人の移動起点”のメディアへ 

OOH
イラスト:萬田 翠(電通)

皆さんは、OOHにどのようなイメージを持っていますか。

OOH(Out Of Home)は、「屋外広告」と訳され、家の外での広告接触を担うメディアや、そこに掲出される広告を指します。具体的には街の屋外看板、駅や電車内の広告などです。

私は、昨年末に電通のアウト・オブ・ホーム・メディア局へ異動しました。OOHについてはこれまで海外の広告賞を通して使い方やトレンドを学ぶくらいで、漠然とした印象しかありませんでした。しかし、知れば知るほどOOHは過渡期にあり、新しい商品やサービスが生まれる可能性に満ちたメディアであると思うようになりました。

新型コロナウイルス感染症の影響による外出自粛、訪日外国人の渡航制限が相次ぎ、OOHは苦境に立たされている一方、コロナ前から始まっているDX(デジタルトランスフォーメーション)は、OOHの領域でも加速しています。本連載では、新たな視点でOOH業界の新しいスタンダード、ニューノーマルをお伝えします。初回は、OOHとは何かを考えつつ、現在の状況をざっと見ていきます。

<目次>
OOH=屋外広告?拡張するOOHの世界
理由①:設置場所の多様化
理由②:あらゆる移動手段のメディア化と移動データの活用
理由③:他メディアと連動した広告プランニングの増加
理由④:OOHの効果計測が可能になった
OOHは、生活者の動線を踏まえたコミュニケーション

 

OOH=屋外広告?拡張するOOHの世界

今回の連載にあたり、弊社の広報から「OOHの領域って広がっていませんか」と問われました。アウト・オブ・ホーム・メディア局では、主に屋外広告や交通広告を取り扱っていますが、各社から出されるOOHのリリースに触れていると、確かにその領域は広がっていることが実感できます。

人通りが多い繁華街の屋外看板、駅や電車内の広告は、今でもOOHの主要メディアであり、クリエイティブの訴求効果も高いため人気があります。

家の外が対象のメディアとなると、もっとあらゆるものが媒体化する可能性があります。街の中で偶然、自分の好きな広告に出合った瞬間は、意外と印象に残るものです。単純に接触させるメディアではなく、その時・その場所の感情とともに記憶に刷り込まれる体験ができるのがOOHの魅力です。

一方で、可能性が広すぎて手が付けられておらず、広告取引において、場所やサイズ、接触するシーンなどが一律ではないので効果測定が難しいというのも実態です。 

OOHは約20年前から少しずつデジタル化が進み、ネットワークにつながったDOOH(Digital Out Of Home=デジタルサイネージを活用した広告)が普及した今、そのようなメディアもOOHに含むのか……?とわからなくなるほど広く活用されるようになりました。このようにOOHが拡張している背景として、四つの理由が考えられます。

理由①:設置場所の多様化

街中だけでなく、ここ数年で、スーパーのレジ前、ドラッグストア、美容室、マンション、オフィス、エレベーターなど今までサイネージが置かれていなかった場所でも広告配信が始まりました。

OOH
(右上から時計回りに)オフィスビル、美容室、タクシー、薬局のデジタルサイネージ

これらの媒体は、特定の目的で集まっている人々に広告配信ができるため、高い訴求効果が期待できます。近年では、インターネット広告を手がけるデジタル企業が媒体社として新規参入するケースも増えてきました。それによって、DOOHの購入方法もインターネット広告の概念が取り入れられ、指定した期間で注文する予約型から、インプレッション(視認者数)ベースの運用型広告が始まりました。

例えば、NTTドコモと電通の出資により2019年に設立されたLIVE BOARD社は、インプレッションベースのDOOHを手がけています。LIVE BOARD社の最新の取り組みは、本連載でも取り上げる予定です。

理由②:あらゆる移動手段のメディア化と移動データの活用

鉄道車両だけでなく、バスや飛行機、タクシー、シェアサイクルなどでも広告メニューが増えています。特にタクシー広告は、B to B向け商材を告知する媒体として認知を確立し、コロナ禍でも好評です。

さまざまな移動手段をシームレスにつなぐ次世代移動サービスMaaS(Mobility as a Service)のマネタイズ方法としてもOOHは注目されており、電通はMobility Technologies社(※1)と業務提携を行い、新たなOOHのあり方を検討しています。生活者の移動データを乗り換え向上につなげるだけでなく、移動中のモーメント(商品やサービスに対する関与が高まる瞬間)を捉えることで、その場所にひもづく新たなマーケティングの可能性が広がっています。

※1 Mobility Technologies社:タクシー事業者などに向けた配車システム提供など、モビリティ関連事業を手がけている。


 

理由③:他メディアと連動した広告プランニングの増加

OOH自体は、その場所にいないと見られませんが、生活者がTwitterやInstagramなど、SNSに投稿することで、より多くの人に見てもらうことができるため、OOHは「バズメディア」とも呼ばれます。実際に渋谷、新宿、池袋などの繁華街や駅の構内に大きなポスターやサイネージがあると目を引きますし、好きなアーティストやビジュアルであればなおさら写真を撮りたくなります。

特にTwitterとOOHは相性が良いため二つをセット販売にした広告のパッケージ商品もありますし、キャンペーン告知をOOHで行い、その反応をTwitterで集めるなど、双方を活用することで、世の中全体の盛り上がりを演出する使い方があります。

OOH
TwitterとDOOHを同時に活用した直近10案件(その他のメディアに関する接触状況は不問)の平均値の結果。調査実施・分析実施会社:ドコモ・インサイトマーケティング及びインテージ、1調査あたりのサンプル数:事前調査/10,000サンプル、本調査/2,000サンプル程度、調査手法:位置情報を元にしたWeb定量調査、調査の抽出対象エリア:LIVE BOARD放映エリア、調査対象者:15歳~69歳の男女個人(LIVE BOARDメッシュ在圏者<該当広告のプロモーション期間に在圏>)、調査対象期間:2020年7月10日~2021年1月25日

「OOHでバズらせたい!」と相談いただくことが多いので、アウト・オブ・ホーム・メディア局では、複数のキャンペーンをソーシャルリスニングツールで分析し、「話題化」をひもといてみました。

横軸に媒体規模、縦軸にコンテンツパワーを取ってキャンペーンをマッピングしてみたところ、下記の傾向があることがわかりました。なお、コンテンツパワーとは、特定の人物やキャラクター、アニメ、ブランドなど、生活者にとって認知度や共感性が高いものを指します。

OOH
コンテンツパワーが小さいものは、自然発生的に投稿件数が増えにくいので、OOHに加えて、公式アカウントのSNS投稿や、メディア向けにプレスリリースを打つなど、具体的なアクションを取る必要があります。このようにOOHと他メディアを連動させることで広告効果を上げることが可能です。
 

理由④:OOHの効果計測が可能になった 

これまでOOHは出稿後の効果計測を苦手としていました。しかし、最近では、位置情報データをもとにした効果測定が可能になってきています。電通は、位置情報マーケティングプラットフォームを有するGround Truth社と2018年に提携し、位置情報利用に関する各種ガイドラインに準拠しながら効果測定に加え、位置情報データを使ってテレビとデジタル、そしてOOHも加えた統合プランニングを行っています。

電通が提供するデータマネジメントプラットフォーム「People Driven DMPⓇ」(※2)と連携した分析ができるので、OOHとテレビ、デジタルのインクリメンタルリーチ(特定の広告の純増リーチ効果)を出したり、OOHを見た後、どのくらいの人がサイトに来訪したか、アプリをダウンロードしたかも追えるようになりました。効果検証ができるようになると、その結果を基に次回以降の出稿計画が立てられるようになるため、PDCAサイクルを回し、費用対効果の高い効率的な出稿が可能になります。

※2:People Driven DMP®:PCやスマートフォン由来のオーディエンスデータと、STADIAのテレビの視聴ログデータ、WEB広告接触データ、OOH広告接触データ、ラジオ聴取ログ、パネルデータ、購買データ、位置情報データなどを人(People)基点で活用することができる、People Driven Marketing®のデータ基盤。

 

OOHは、生活者の動線を踏まえたコミュニケーションへ

OOHの拡張は、現実世界だけでなく、デジタル上につくられた世界にも広がっていく可能性があります。昨年「バーチャル渋谷」という、渋谷を仮想化したプラットフォームが誕生しました。VR化した渋谷の街を自身が選んだアバターで自由に歩き回ったり、行われているライブイベントにみんなで参加できる体験は新鮮です。

任天堂の「あつまれ どうぶつの森」のように、ゲームの世界でも企業や団体がマーケティング活動として活用する事例が増えています。世界最大級の広告賞「カンヌライオンズ」でも今年は、ゲームを広告コミュニケーションに使う傾向は見て取れるので、国際的な流れでしょう。リアルな街と同じように、バーチャル空間でできることが増え、常時行き交う人が増えれば、立派なOOH媒体になりえます。

さらに、国内でも増えている音声配信メディアとOOHの連携もこれから注目される領域です。目で見るOOHを補完するものとして、耳で聞く音声メディアは相性が良いといわれています。移動中にラジオやSNSなどの音声メディアアプリを立ち上げ、コンテンツを聴く間に音声広告は配信されますが、配信タイミングやリスナーの位置情報が取得できればOOHとの連動も可能です。

これまで、OOHは固有の場所〈点〉でメッセージ配信してきました。しかし、データ・テクノロジーにより人の移動が捕捉できるようになると、リアル/バーチャルを問わず、各々の場所〈点〉が有機的につながり、生活者の動線を踏まえたコミュニケーション設計ができるようになります。サイネージだけでなく移動手段やスマートフォンなど生活者がよく使うデバイスを組み合わせることで、テレビやデジタル広告とは違う実体験を伴った販促、商品理解、ブランド体験をつくれるようになっています。

OOHは、これまで「家の外の広告」という場所起点で捉えられていましたが、これからは、生活者の移動を広くカバーする、「人の移動起点のメディア」へと変遷していくでしょう。

次回からは、
・コロナ禍におけるOOH
・OOHの統合メディアプランニング
・LIVE BOARDでみるプログラマティックOOHの今
・鉄道会社のOOH
・DOOHの新潮流
など、OOHの新しいスタンダード、ニューノーマルを紹介します。お楽しみに。

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