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OOHのニューノーマルNo.2

コロナ禍でもOOHは成功する!

2021/09/17

OOH

2021年3月、渋谷と新宿で、大規模なOOH(Out Of Home:屋外広告)を掲出した、デジタルハリウッド大学。

平手友梨奈さんの春らしいグラフィックが、渋谷のハチ公ビッグシートファイナル(※1)や渋谷憲章シート(※2)、QFRONT Q'sWall(※3)などに登場。テレビやSNSで大きな話題になりました。

コロナ禍でOOHの出稿が低下する中で、大規模なOOH展開を行った理由を、デジタルハリウッド株式会社(※4)執行役員・広報室室長の山本隆三氏に伺いました。

※1 ハチ公ビッグシートファイナル:旧・東急百貨店東急東横店ビルの壁面を利用した、幅 25.4m×高さ 17.0mの巨大なシート広告。圧倒的な存在感がある。

※2 渋谷憲章シート: 渋谷駅西口ハチ公広場に設置されているシート広告。テレビ番組などで背景として放映されることが多く、非常に注目度が高い。

※3 QFRONT Q'sWall:渋谷スクランブル交差点のランドマーク施設「QFRONTビル」の外壁に掲出されるシート広告。

※4 デジタルハリウッド株式会社:デジタルハリウッド大学をはじめ、デジタル社会に対応するスキルや力を育む複数の教育事業を展開している。


OOH

本質を捉えたシンプルなタグラインで、ブランドイメージを高める

──まず、今回のキャンペーンの趣旨や狙いを教えてください。

今回、キャンペーンを行ったのはデジタルハリウッド大学のポジション、ひいては大学院や社会人向けスクールも含め、グループ全体のポジションを変えていきたいと考えたからです。本学は、大学受験世代からはその名前のキャッチーさから、「模試の際に冗談で志望校欄に記載する学校」など、なかなか本質に目を向けてもらえない課題感がありました。その受験世代が将来デジタルクリエイティブを学びたいと思ったときに、そのイメージが想起されるのは好ましくありません。

そこで、2017年から私どもが何者であるかを世の中に伝えていくブランドコミュニケーションを始めました。「みんなを生きるな。自分を生きよう。」というタグラインは、大学進学を控えた高校生に対して自分らしい進路を考えて、時代の変化を生き抜いてほしいという願いが込められています。このタグラインは4年間変えずに使っており、大学としての考え方や価値観を伝えるためのシンプルなメッセージ訴求を、OOH、テレビCM、デジタル広告を組み合わせて、毎年行っています。

OOH
新宿駅東南口にあるファッションビル「Flags」に、2021年3月に掲出したOOH。本来であれば、桜とともに明るい気持ちで新生活を迎えるはずの学生に向けて、春を感じさせつつ、平手さんの表情が印象的なキービジュアルを作成。

──広告は、大学のロゴがあまり大きくなく、タグライン以外の情報もありません。掲載時、気になりませんでしたか。

みんなが持っている強みを生かして自分らしく生きようというメッセージを伝えるには、美しいビジュアルとシンプルなタグラインで十分だったと思っています。私たちが扱っている学校という“商品”は、あれこれ“商品特徴”を広告で伝えたところで、広告を見た人がそれを記憶して、即、コンビニに行って買うようなものではありません。ですから、本質的なところに訴えかける必要があると考えています。

よく他の方から「ベンチャーをたくさん輩出している大学」など、実績で訴えかけた方がいいんじゃないかとも言われます。しかし、それは興味を持った高校生がオープンキャンパスへ来たときに知りたい内容であって、たまたま触れたOOHやCMを見て知りたい内容ではないでしょう。そういった情報はサイトにありますし、OOHからの流入を受け止める連動グラフィックとコピーを用意することで、役割分担を意識しました。

高校生が今の時代をどう捉えているのか。硬直的な受験というシステムや、少しでも偏差値が高い大学に行く方がいいという旧態依然とした感覚は、大人から見ても息苦しさを感じます。高校生自身が積極的に関われる領域を持ち、経験値を増やせる場として進学先を選んでほしい、という願いを広告に込めました。

想定以上のリーチを獲得。受験生はもちろん、親世代や卒業生、従業員の間でも話題に!

──なぜOOHへ出稿されたのでしょうか。OOHに求めた役割を教えてください。

どうすれば限られた予算で広告が話題になるかを考えていました。広告は難しい時代になったと思います。情報過多な時代ですし、自分が子どもの頃と比べると、好きなCMはYouTubeで見られるようになり、コンテンツの価値は相対的に下がっています。広告で初めて接触させるより、知り合いを介して伝わる方がいい。そこで、ターゲットの高校生が多く、テレビでもよく抜かれる渋谷でのOOH掲出を決定しました。

例年は、CMオンエア直後に連動したグラフィックを数カ所でOOH掲出していました。しかし、今年はオンエアのタイミングでコロナの第三波があり、緊急事態宣言が出るなど日々状況が変化していました。このご時世だからこそできるコミュニケーションの追加検討を始め、不安定な環境下で進学や進級を控える学生に向けて、OOHをメインに再設計しました。緊急事態宣言で人出が減少したことにより、都心部のOOHの人気枠に空きが出ていること、また、渋谷の旧・東急百貨店東急東横店のビル壁面に、日本最大規模の新しい枠が予定されているとの情報を聞き、OOHに大規模掲出することにしました。

電通から提案いただいた媒体は、新宿・渋谷の大型スペース、渋谷を中心としたデジタルサイネージ、高校の最寄り駅や通学路の媒体をカバーした「青春ボード」(首都圏の高校生向けの屋外広告)です。社内では、「東京近郊だけの広告展開でいいのか」という意見もありました。しかし、「すごいなぁ、なんなんだろう、目に入るなぁ」という状態を作るには、限りあるリソースを集中的に出さないとその状態は実現できないと考え、このプランに決めました。

──実際に出稿した反響はいかがでしたか?

思っていたことが全部できてラッキーだったという印象です。OOHに出稿して良かったことは主に三つあります。

一つは、出稿料から想定していた以上に広くリーチできたことです。スクランブル交差点前は渋谷の人出が主要キー局で抜かれ、ニュースにもたくさん取り上げてもらえました。今回は、これまで以上の規模でOOHを掲出しましたが、外出自粛が呼びかけられた時期だったのでキャンペーンのリリースを出しませんでした。

しかし、平手友梨奈さんのファンの間で、「こんなに大きい広告が出ている」と話題になり、SNSに熱心に投稿してくれたので、後から新宿、渋谷の掲出場所をネットで公開しました。「東京まで遠征して見たかった」という声もあり、首都圏のファンの方が、「じゃあ写真撮ってアップします」というやりとりもありました。ファンの方にとっては、祝うようなものなんだなとうれしく思ったことを覚えています。

OOH

「青春ボード」は、「あれ、私の地元になんかある!」という声が生まれ、コミュニケーションが多層的になって良かったです。あまり費用が高くないので、他の広告と組み合わせて出すにはいい媒体です。今回のキャンペーンも、渋谷の駅前媒体だけではこんなに話題にならなかったと思いますし、CMだけ出稿しても、同じ予算でデジタル広告を出してもこの効果は得られなかったと思います。

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首都圏の高校の通学路などに設置された「青春ボード」。

二つ目は、ターゲットとその周囲で本学が話題となったことです。

定量的な話ではないですが、高校生の母親ぐらいの世代が熱心に写真を撮っていて、そんな世代にもリーチできるのかとうれしく感じました。今は、パソコンに詳しい世代が親世代になりつつあります。以前に比べ、親世代にもデジタルクリエイティブへの理解が浸透しつつあると感じており、この世代への訴求も大事です。また、本学の卒業生たちがOOHをきっかけに、語りだしてくれたことも予想外の喜びでした。

高校生は周りの大人から大きな影響を受けますから、親世代や卒業生が広告をポジティブに捉えて積極的に発信してくれることは、本学を志望してもらう大きなきっかけになります。

三つ目は、エンゲージメントの向上です。私は採用活動にも携わっているのですが、社員の意欲がものすごく上がりました。当社はライセンス提供する学校拠点が全国に約20カ所あります。九州や東北などのエリアで働く方々、従業員、運営スタッフも含め、気持ちを一つにして「こんなことをやっている学校なんだ」「こういうことをやれるブランドとして仕事しているんだ」と思ってもらうことができ、会社的にはすごく良かったです。リモートワークで会社への帰属意識が希薄になる傾向があるので、従業員のエンゲージメントを上げる意味でも、OOHは効果的です。

──今回の結果を踏まえ、今後はOOHをどのように活用したいと考えていますか?

我々のような小さな会社でも反響があることがわかったので、今後もポジティブな驚きがあり、喜んでもらえるようなコミュニケーション展開をしていきたいです。企画やタレントのアサインは毎回変わっていくかもしれませんが、ご一緒させていただくクリエイティブディレクターが本学や会社の考え方に深くコミットし、言語化やビジュアル化してくださるので、基本的なコンセプトは変えずにいきたいです。世の中の気分や媒体のあり方、アドテクは、これからも変化していくでしょう。その中で、普遍的な本質をどのように表現し、どのタイミングで発信するか、工夫していきたいです。


インタビューを終えて……
今年の春、渋谷駅構内を歩いていたところ、女子高校生2人が本キャンペーンのOOH広告を写真撮影している場面に遭遇しました。桜色の大きなグラフィックはひときわ目立ち、通りすがりの私の気持ちも明るくさせるものでした。

OOHはバズメディアといわれますが、全てが話題になるわけではありません。デジタルハリウッド大学のキャンペーンは、時流をうまく捉えたことが成功につながったと思います。今後に不安を抱える高校生のインサイトを捉え、前向きな気持ちになれるシンプルで強いメッセージを空き枠だったOOH媒体を通して効果的に発信しました。

withコロナと呼ばれる状態が長期化しています。緊急事態宣言下でも通勤・通学で外出せざるを得ない人たちがいます。街のランドスケープ化はOOHならではの使い方なので、広告主にはうまくブランドコミュニケーションに活用していただきたいです。