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経営戦略としての「人事」No.1

そもそも「人事」とは、なんだろう?

2021/09/13

経営戦略としての「人事」

ご自身のキャリアをベースに、企業のあるべき姿、形を提言しつづける八木洋介氏。八木氏が説くテーマを、一言で表すなら「人事改革」だ。人事改革なくして、企業の持続的成長などあり得ない。「人材こそが、わが社の宝である」と多くの企業は言う。しかしながら、その宝を「持ち腐れ」させてはいないだろうか?記事化にあたっては、八木氏ウェビナー(※)を聴講し、独自のインタビューも試みた。

老いも、若きも、男も、女も、他国の人々も。さまざまな個性が、ひとつの企業に集う。そのことの意味、そのことの楽しさ、そこから生み出される未来というものを、八木氏が顧問を務めるサイコム・ブレインズの取り組みからひもといてみたい。私たち一人ひとりは、ただ単に企業という「箱」に押し込められた「道具」ではないという思いを込めて。

文責:ウェブ電通報編集部

(※)サイコム・ブレインズによる「八木洋介氏と考える、これからの会社をリードする人事に必要な学び~ポスト・パンデミックの世界で勝つ~」と題されたウェビナー。詳細は、こちら


「みんな」という言葉は危ない

「企業における人材は、家族ではない。同じ目的に向かって戦う集団の、チームメイトだ」。八木氏のウェビナーは、このような問題提起から始まった。

「社員は、家族だ。というような時代も、確かにありました。でも、考えてみてください。家族の絆は、なにがあっても解かれることはない。一生涯を通じて、いや、何世代にも渡って、育んでいくものです。たとえ、家族の中に人として決して褒められない『人でなし』がいたとしても、その人を見捨てますか? そんなことはない。家族や親戚、みんなで支え合うでしょう。でも、企業における人材というものは、そういうものではない。数年で、次のキャリアをめざして会社を去る人もいる。会社とはゴールを共有して、それに沿ったアウトプットを生み出していくためのシステムなんです」

八木氏は、「みんな」という意識こそが危ないのだ、と指摘する。同じ会社に集う「みんな」が仲間だ。「みんな」のために、「みんな」で協力して働きましょう。精神論としては、よくわかる。でも、「みんな」という価値観が、果たして経営戦略と言えるのか?と問われれば、確かに疑問だ。

八木洋介氏: people first 代表取締役(前LIXILグループ執行役副社長) サイコム・ブレインズ顧問 1980年京都大学経済学部卒業後、日本鋼管株式会社に入社。96年National Steelに出向し、CEOを補佐。99年にGEに入社し、複数のビジネスで人事責任者などを歴任。2012年にLIXILグループ 執行役副社長に就任。Grohe, American Standard, Permasteelisaの取締役を歴任。17年 people firstを設立して、代表取締役。TBSホールディングス 社外取締役、GEヘルスケア・ジャパン 監査役。その他複数の会社の顧問に就任。著書に『戦略人事のビジョン』。
八木洋介氏:
people first 代表取締役(前LIXILグループ執行役副社長)
サイコム・ブレインズ顧問
1980年京都大学経済学部卒業後、日本鋼管株式会社に入社。96年National Steelに出向し、CEOを補佐。99年にGEに入社し、複数のビジネスで人事責任者などを歴任。2012年にLIXILグループ 執行役副社長に就任。Grohe, American Standard, Permasteelisaの取締役を歴任。17年 people firstを設立して、代表取締役。TBSホールディングス 社外取締役、GEヘルスケア・ジャパン 監査役。その他複数の会社の顧問に就任。著書に『戦略人事のビジョン』。

「企業風土」とは、なんだろう?

企業風土という言葉がある。「うちの会社は、まあ、こういう会社だから。こういう企業風土だから」という、なんとなくの空気感で仕事をしてはいないだろうか?企業風土という気分に甘えて、新しいことへのチャレンジを怠けてはいないだろうか?

「環境というものは、変わるものだし、変えていくものです」そう、八木氏は指摘する。企業風土というものを、例えば畑の土壌だと考えてみれば、よく分かる。丹念に耕す。肥料も与える。でも、あるとき洪水が来て、そうした苦労がすべて流されてしまうかもしれない。ならば、と次なる一手を考える。畑を痩せさせない、大切な畑を守っていくとは、つまりそういうことなのだ。

畑

制度を作ることが、人事の目的ではない

制度を作り、それを守っていることが人事の目的ではない。時代は常に変化しているのだから、と八木氏は指摘する。畑の例えで言えば、土壌は常に安定しているわけでは決してないということだ。日照り続きの年もあれば、洪水に見舞われることだってある。

八木氏によれば、年功序列・終身雇用・企業内組合の、いわゆる「三種の神器」への依存体質を見直すべきなのだという。思い当たる節は、誰にもあるはずだ。この原稿を書いている筆者自身が、なにやら反省しなければ、猛省しなければならないような気がしている。

とはいえまだ、なにを反省しなければならないのかは、よく分からない。読者の皆さんも、おそらくは同じような感想をお持ちなのではないだろうか。この連載では、そのあたりをぜひ解明していきたいと思う。続編をぜひ、お待ちいただきたい。

サイコム・ブレインズによる講座は、こちら。

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■講師コメント(酒井章氏)

新型コロナによって起こったことは「キャリア・ショック」と呼ばれています。働き方をめぐるさまざまな環境変化に加え、在宅を余儀なくされたことで、多くの人がこれまでの、そしてこれからの人生や働き方を深く考えたのではないでしょうか。誰もが自分のキャリアに不安を持ついま、キャリア支援を行う人の役割がますます重要性を増しています。本講座は、このようなニーズに対応し、他の講座には見られないような多彩な講師陣からの豊富で多角的なインプットに加え、職種も世代も多様な参加者との刺激的な切磋琢磨(せっさたくま)によって、これからのキャリア支援職に必要とされるマインドとスキルをアップデートすることができます。

■講師コメント(山口周氏)

これまでの「正解」も「定石」も通用しなくなったいま、人に求められる要件も劇的に変化しました。それは、問題を自ら発見できる「意味」のある人です。一方、仕事に対するやりがいでは世界でも最低ランクに位置づけるなど、日本人の働き方は異常な状態に陥っています。そして、新型コロナという未曽有の事態の到来によって、潜在的に起こっていたこのような問題があらわになりました。いまこそ、企業における最大の資源である人財を生かすキャリア支援職の皆さんの出番ではないでしょうか。こうした問題意識に基づいて立ち上げられた本講座の理念に賛同し、講師として参加させていただきます。これからの働き方やキャリアをより良くする志を持った皆さんとディスカッションさせていただくのを楽しみにしております。

本記事の作成にあたっては、八木洋介氏に筆を入れていただくとともに、電通OB酒井章氏(クリエイティブ・ジャーニー 代表/電通アルムナイ・ネットワークマネージャー)に監修を依頼しました。

酒井章氏が代表を務めるクリエイティブ・ジャーニーのHPは、こちら

酒井章氏:
電通に入社後、コピーライター、営業(自動車担当)、マーケティングプロモーション部門を経て2004年よりシンガポール(アジア統括オフィス)に駐在。11年帰任後はグローバル部門を経て人事局、キャリア・デザイン局でキャリア開発施策を担当。19年3月定年退職後、4月に起業。

酒井章氏と電通キャリア・デザイン局(当時)大門氏によるアルムナビでの対談記事は、こちら

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