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為末大の「緩急自在」No.15

アスリートブレーンズ為末大の「緩急自在」vol.15

2021/12/03

為末大さんに「いま、気になっていること」について、フリーに語っていただく連載インタビューコラム。唯一、設定したテーマは「自律とは何か、寛容さとは何か」。謎の「聞き手」からのムチャ振りに為末さんが、あれこれ「気になること」を語ってくれます。さてさて。今回は、どんな話が飛び出すことやら……。乞う、ご期待。

為末大氏

──「自律と寛容」というお題の下で、今回は「美しさとは、何か?」というテーマを設定しました。「さびしさ」「ありがたみ」同様、毎回、風変わりなテーマで恐縮です。

為末:いえいえ。この取材は、毎回、楽しみです。大きな疑問っていうんでしょうか。そういうものに、人は魅せられるんだと思います。

──実はこのテーマ、オリンピックが始まる前から、為末さんにどうしてもお伺いしたかったことなんです。たとえば、大相撲。勝ち負けはもちろんですが、観客は力士の美しい所作みたいなものに魅了されますよね?陸上競技でもそうです。記録も大事ですが、なんだ、為末のあの美しい走りは?みたいな。

為末:そう言っていただけると、うれしいです。美しさということでいうと、陸上競技で日本人初のオリンピック金メダリストである織田幹雄さんが「正しい動きは美しい」という言葉を残していらっしゃいます。要するに、機能美ですね。理にかなったものを見せられると、人はそれを美しいものと捉える。

──なるほど。

為末:そして、これは女性の美しさにも通じることだと思うのですが、異性のセクシャルな要素も美しさの一つだと思います。男性女性を問わず、この人のDNAを残したい、みたいな。人が美しいと感じるものには、そうした動物としての本能のような要素があるように思うんです。

──いつものように、話が飛びますね。いいですよ、いい感じです。

為末:そうしたものは、自分の内側にある、生物として普遍的な部分。それにプラスして、社会から刷り込まれた要素というものが、美しさにはあると思います。外の世界に向けて、このように行動すべきだ、といったような。たとえば、大相撲の力士の所作に、外国の人は美しさを感じるのだろうか、とか。つまり、社会に刷り込まれた美しさとは、限られたコミュニティでのみ、機能するものだと思うんです。

──いわゆる秩序からくる形式美、のようなものですね? 

為末:そうです。内なる普遍的な感情、社会から刷り込まれた感情。この二つが、美しさの基本だと思います。それに加えてもう一つ、「文脈からズレたもの」に、人は美しさを覚える。

──「文脈からズレたもの」?

為末:そう。えっ?そう来るの?という、常識を超えたもの。分かりやすい例を挙げれば、アートとか、アスリートのパフォーマンスとか、そういったものです。

為末大氏

──戦国大名たちが、千利休の「茶の湯」の世界にほれ込んだのも、僕らが今、世界で活躍するアスリートのパフォーマンスに夢中になるのも、そうした理屈なんですね。単純にゴールを決めたとか、ホームランを打って点を取った、というだけでなく、そこには「美しさ」がありますものね。「文脈をズラせた瞬間」というのは、為末さんご自身の体験からいうと、どんな状態なんでしょうか?

為末:アスリートのパフォーマンスでいうと、自分の能力を見せつけてやろうという気持ちが消えた瞬間に、美しさが宿るような気がします。観客へ向けて、とか、勝負に勝ちたいとか、そういうことではなく、ひたすら自身と向き合うというか。欲が消えて、目の前の行為そのものに没頭できた瞬間、そこに美しさが生まれる。

──なるほど。僕らが「為末、頑張れ!」と願ったあの気持ちと、千利休が結びつくとは思いませんでした。確かにそこには、同じような美しさがありますものね。

為末:戦国大名が、利休の世界にほれ込んだのも、人をもてなすという純粋な行為を極めたからだと思うんです。戦国の世ですよ。いつ、命をとられてもおかしくない、という。そこに「お、も、て、な、し」の精神を持ち込んだ。当時の世の中の文脈からは、大きくズレている。だからこそ、そこに美しさが生まれる。すさんだ心が解放される、みたいな感覚がおそらくあったのだと思います。

──それでも最期は、秀吉に切腹を命じられる。

為末:美しさを極めたがゆえ、の結末だったんでしょうね。

──そのあたりはぜひ次回、伺いたいと思います。政治の世界でも、ビジネスの世界でも、美しさが求められている。いわゆるオープンとか、透明性、みたいなことです。でも、しょせん、カネが絡む世界。美しさとは、ある意味、真逆の世界です。それでも人は、美しさを求めようとする。自らも、美しくありたい、と思う。

為末:そう考えると、美しさとは、深いテーマですね。(#16へつづく)

(聞き手:ウェブ電通報編集部)


アスリートブレーンズ プロデュースチーム 日比より

今回は、「美しさ」がテーマでした。仕事の中で、プロ野球選手のノックを見る機会がありました。野球好きではあるものの、全く素人である自分から見ても、選手たちのノックを受ける動きは、まるで水のように流れ、美しいものでした。アスリートが鍛錬を重ねていくことで、正しい動きを身に付け、美しいものになるのだと考えます。これは、アイデアにおいても同じではないかとも思います。磨き込まれたアイデアは美しい。では、どうすれば、美しくできるのか。もしかすると、アスリートの鍛錬のプロセスから、ひもとくことができるのかもしれない、そんなふうにも思います。

アスリートブレーンズプロデュースチーム 電通/日比昭道(3CRP)・白石幸平(事業共創局)

為末大さんを中心に展開している「アスリートブレーンズ」。
アスリートが培ったナレッジで、世の中(企業・社会)の課題解決につなげるチームの詳細については、こちら

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