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OOHのニューノーマルNo.5

DOOHの新潮流~ヘアサロン・サイネージ編

2021/11/30

サキザキテルコ

デジタル化が進み、市場規模が広がっているOOH(Out Of Home:屋外広告・交通広告)。

最近では、さまざまなDOOH(Digital Out Of Home:デジタルサイネージを活用した広告)が話題になっています。DOOHは、アナログのOOHと比べて、出稿が容易にできる、即時性が高い、狙ったターゲットに届けられる、広告効果を測定できる……など、たくさんのメリットがあります。

今回は、DOOHの新潮流を探るべく、ヘアサロンに特化したデジタルサイネージメディア「サキザキテルコ」を手掛ける、デジタルガレージ マーケティングテクノロジーカンパニーの諸石真吾氏にお話を伺いました。

サキザキテルコ


 

完全視聴率が高い、ヘアサロン・サイネージ

──「サキザキテルコ」は、どんなサイネージですか?

2021年7月時点で、全国の美容室に(専用端末)約1万1000台を設置しており、月間リーチ数は110万人に上ります。「サキザキテルコ」は1席に1台、鏡の前に設置されており、ヘアサロン利用者の視界に自然に入る動画広告の配信が可能な、ビューアビリティが非常に高いメディアです。

サキザキテルコ

──動画コンテンツの編集方針を教えてください。

「みんな、ここちよく、自分らしく。」をコンセプトに、ユーザーの生活に役立つ動画コンテンツを配信しています。オリジナルキャラクターの「サキザキテルコ」を主役にしたアニメや星占い、お悩み相談室などのオリジナルコンテンツを配信しており、キャラクターがここちよい距離感で情報を届けるメディアを目指しています。

サキザキテルコ

美容室はさまざまな人が訪れる場所なので、親しみやすいキャラクターが登場することで視聴者が自然と楽しめるコンテンツになるよう、工夫しています。オリジナルコンテンツの他に、コンテンツパートナーから提供を受けた動画素材を「サキザキテルコ」に合うように編集して配信しています。また、コンテンツパートナーとタイアップして広告メニューを作ることもあります。

──広告はどのように配信されるのでしょうか?

純広告では、1ロール30分の動画コンテンツ内で、1枠30秒・最大90秒の広告を配信しています。空き枠次第ですが、広告主の希望に合わせ、相性の良いコンテンツの間に広告を流すことも可能です。広告枠の一部を、マイクロアドデジタルサイネージが提供するデジタルサイネージネットワーク「MONOLITHS」に接続し、プログラマティック配信(※1)も開始しています。

プログラマティック配信で現在できることは、エリア、時間、フリークエンシーの指定、外部API(※2)を活用した広告配信です。エリアを指定して配信できるので、クリニック、エステサロン、ジムなどを運営している広告主から好評です。また、2カ月連続して数百万円分の出稿をしたいなどの要望に対して、配信予算に応じて柔軟に対応できるようになりました。

※1 プログラマティック配信:DOOHをネットワーク化し、自動で広告の取引や配信を行うこと。広告の枠・指標・配信が一括管理できることも特長。

※2 API(Application Programming Interface):ソフトウエアの機能を部分的に公開し、他のソフトウエアと機能を共有できるようにする仕組み。


サキザキテルコ
配信後は、想定リーチ数、再生端末数、着座再生数に加え、視聴ごとの単価を日別、時間帯別、地域別などの項目でリポートしています。着座再生数は、サイネージ端末に顔認識技術を搭載し、総再生数のうち、空席時や美容師の視聴をカウントせず、着座時のみをカウントする技術で実現しています。

サキザキテルコ


──どんな広告主から発注がありますか?また、導入した美容室の反応はいかがですか?

広告主は、美容関連商材、女性向け商材、自動車や家電などの長尺動画で訴求したい商材を扱う企業が多いです。特に美容室で過ごす時間は、美容について考える機会も多く、美容関連商材、特にヘアケア商材の訴求に効果的です。

また、美容師は繰り返し動画広告を見るため、美容師と視聴者の間で話題にしやすいことも特徴です。動画広告での商品の認知・理解促進に加え、実際に手にとってその場で試してもらうといったサンプリングも可能です。あらかじめ美容師に商品を体験してもらい、もし美容師が商品を良いと思ったら、視聴者に好意的な反応を伝えることも期待できます。

われわれの調査では、美容室の平均滞在時間は、男性が約70分、女性が約100分という結果が出ています。リラックスした気持ちで長時間過ごしており、コンテンツや広告を受け入れやすい状況です。そうしたモーメントをターゲティングできることも、「サキザキテルコ」の強みです。数分間の長い動画も最後まで見てもらえることが多いため、開発背景などの商品理解を促す内容や日常の利用イメージを伝える動画、企業ブランディングを目的としたメッセージを盛り込んだ動画などが適していると思います。

ブランドリフト調査では、興味・購買意向のリフト値と、メッセージの浸透率が高いという結果が出ました。広告主からも、他媒体に比べて良い効果が得られたという評価を頂きます。完全視聴率の高いサロンサイネージメディアは、ミドルファネル(生活者が興味・関心や課題を特定した状態で、やや熱心に情報収集をしている段階)へのアプローチに非常に有効であると考えています。

コロナ禍で、ヘアサロンではお客さまに飲み物や雑誌を提供できないという課題も発生しました。われわれのデジタルサイネージは非接触なので、コロナ禍でも視聴者が楽しめます。動画コンテンツや広告が視聴者と美容師の会話で話題になり、美容師と視聴者の関係構築にも役立っているようです。

──今後、サービスのどんなことを強化していきたいですか?

コロナ禍によって人々の生活パターンが多様化し、従来のメディアプランニングではターゲットへ広告を届けることが難しくなっています。しかし、コロナ発生後は一時、客足は落ちたものの、ヘアサロンを訪れて髪を切るという行動は変わっていません。今後は、ヘアサロンをコンタクトポイントに、情報を確実にターゲットへ届けられる生活動線媒体として確立していきたいです。

OOHは、1 to N(多数)の広告が多いですが、ヘアサロンはパーソナル空間に近く、1 to 1の環境なので、プログラマティック配信によってウェブ広告に近いことができるはずです。さらに、最適化されたコンテンツ・広告を配信することで、視聴者に役立つ情報を届けることができます。広告効果の向上、ヘアサロンの来客頻度アップ、サロン物販売り上げアップの成果を上げられるよう、今後も努めていきます。


インタビューを終えて…

私の美容室訪問頻度は、数カ月に1度、2時間くらいの滞在です。コロナの感染が拡大してから、近所の美容院を探して行くようになりました。そこでは、雑誌の代わりにタブレットとサイネージ端末が各座席に配置されています。美容師さんと2時間話し続けることはまれで、そこに自然と差し込まれるのが、美容室のサイネージです。

ずっと席に座っているため自然と視界に入り、「こういう新商品があるんだ。使ってみたい」「このレシピのご飯は、おいしそうだな」など、いろいろな感情が生まれます。また、美容に関する意識が高まっている上に、他にやることもないので、テレビCMよりも集中して見ていることを実感しました。手元にはスマートフォンがあるので、サイネージの広告で興味を引き、スマートフォンのサイトに誘引する……といった使い方も自然だと思います。

美容室のように訪れる目的が明確な場所×OOHの組み合わせは、特定の商材を訴求するのに有効です。マーケティングや広告担当の方は、一度、客として見ていただくと、商品やサービスの新たな訴求方法のヒントがつかめるかもしれません。

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