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OOHのニューノーマルNo.6

DOOHの新潮流~エレベーター・サイネージ編

2021/12/06

東京エレビGO

デジタル化が進み、市場規模が広がっているOOH(Out Of Home:屋外広告・交通広告)。

最近では、さまざまなDOOH(Digital Out Of Home:デジタルサイネージを活用した広告)が話題になっています。DOOHは、アナログのOOHと比べて、出稿が容易にできる、即時性が高い、狙ったターゲットに届けられる、広告効果が測定できる……など、さまざまなメリットがあります。

今回は、DOOHの新潮流を探るべく、エレベーター・サイネージ「東京エレビGO」と「エレシネマ」を手掛ける、株式会社東京の羅悠鴻(Youhong Luo)氏にお話を伺います。
 

東京エレビGO

 

乗り物から空間へと捉え直し、エレベーター広告を進化させる

──どのようなDOOHを手掛けていますか?

当社は2017年創業の東大発ベンチャー企業で、都内のSクラスやAクラスのハイエンドなオフィスビルのエレベーターホール、およびエレベーター内に自社開発のサイネージやプロジェクターを設置し、広告配信できるサービスを提供しています。エレベーターを待っているときや乗っているときは、スキマ時間が生まれます。そのタイミングで、情報コンテンツやビル管理者からのお知らせ、広告の配信を行います。配信するコンテンツをウェブ上で簡単に管理できるシステムがあるので、柔軟に配信ができます。

設置台数はシリーズ累計で1000台(2021年11月時点)に上ります。今後は、人口の多い東京、大阪、名古屋のオフィスビルやタワーマンションを中心に、日本全国のエレベーター約67万台の5%にあたる約3万台を目標に拡大していきたいと考えています。

──サービスを始めて反響はいかがですか?

サイネージの設置料金は無料で、ビルオーナー側の告知や、ニュースなど番組自体の費用も弊社で負担しコンテンツを提供しています。導入しやすいので、エレベーターホールサイネージ「東京エレビGO」や、エレベーター内プロジェクション「エレシネマ」は歓迎されることが多いです。

設置のクオリティを追求するため、内製のチームでオペレーションをしていますが、ありがたいことに引き合いが多く設置が間に合っていない状況です。設置する際には、ビルのオーナー様やテナント様と密にコミュニケーションを取りながら、ビルの意匠との調和を考えています。そのため、ちょっとしたスキマ時間に彩りを加える「東京エレビGO」と「エレシネマ」はビル全体のイメージ向上に役立っています。

実際に設置していただいたお客さまからは「エレベーターの雰囲気が良くなり、間接的な賃料アップにも役立った」とお褒めの言葉をよく頂きます。また、「エレシネマ」は導入したところ、「ビルにテクノロジーのスパイスがふりかけられた気がする」とお言葉をいただくことも多いです。

東京エレビGO
エレベーターホールの意匠と調和している「東京エレビGO」のサイネージ。
エレシネマ
テック感のある「エレシネマ」のプロジェクター。

──広告主は、どのような会社が多いですか?

商材単価が高いBtoB企業や、SaaS(Software as a Service:クラウドで提供されるソフトウエアサービス)を手掛ける会社が多いです。オフィス環境はセキュリティが厳しいため、これまでビジネスパーソンは会社で広告に接触する機会はほとんどなかったと思います。ですが、エレベーター広告であれば、仕事に注力しているオフィスアワーのタイミングで接触させることができます。

広告主は、自社のターゲット企業が入居するオフィスビルのエレベーター・サイネージへピンポイントに広告を打つことで、その後の営業の効率をあげることが期待できます。特に、商材単価の高い商談をする前に商品広告を流しておくとあらかじめターゲット企業の経営層や社員の方々の認知が取れるので、その後の営業やサービス導入がスムーズになるというメリットがあります。

家具メーカーや引っ越し会社といったオフィス環境をサポートする企業の出稿もあり、社名を想起させることで問い合わせにつながっているようです。エレベーター・サイネージは、マーケティングファネルにおける「認知」というより「契約や購買」といった顧客の刈り取りに寄与する役割が大きいです。また、広告予算ではなく営業の販促予算で発注を頂くこともあります。

──コロナ感染症の拡大によりリモートワークが進みましたが、広告販売の影響はいかがですか?

オフィス出勤率が4~5割に落ちてしまったため、広告枠の販売価格を下げました。ただ想定外だったのは、SaaSやDX(デジタルトランスフォーメーション)の製品を扱う会社が営業対象とする企業にはリモートワークを導入していない企業が多かったことです。そのためターゲットに合致していることも後押しし、事実上リーチ単価が単純に半額になるという現象が発生し、広告効果が顕著に表れるようになりました。某人事系クラウドサービスの会社が、緊急事態宣言中に電車の媒体をたくさん買い、出社している人に向けて、「ハンコを押すために出社した。」という広告を出したときと同じ効果が出ました。また、経営陣や総務など決定権を持つ層が多く出社しているため、よりターゲットに接触させやすい環境になっています。結果、5月以降から軒並み満枠とご好評をいただいております。

──今後の課題や抱負を教えてください

エレベーターの4つの壁面を使うことや、タッチ操作などの技術面の強化を視野に入れながら、エレベーターを乗り物から空間へと捉え直し、エレベーターに乗る体験をもっとアップデートしていくことを目指しています。

コンテンツの内容も改良を図っていきます。例えば夢物語のようですが、エレベーターのドアが閉まった後に顔認証がされて乗客一人一人にあったリコメンドを出し、中でランチが購入でき、決済までされるようになるといいですね。僕たちは、パブリックな空間でスマートフォンを持たず、手ぶらで同じことができる世界を目指しています。

また、僕らは今あるビルを仮想的にWeWork(※)化していっています。
コワーキングスペースを提供する会社の中でも、WeWorkは入居者同士でのコミュニティを形成するような仕掛けが一線を画した価値となっています。

不動産会社としても、入居した企業に直接コミュニケーションを取り、入居している企業内でコミュニティを形成、機能させることができれば、そのビルに居続けるインセンティブを生む可能性があると可視化された事例ではないでしょうか。広告会社であれば、サービスの導入先が分かれば、このビルのA社とC社が導入しています、とお知らせして、他社に「少し話を聞いてみようかな」と思わせることもできますよね。

リモートワークが普及しつつありますが、オフィスでしか生み出せないものもあるはずです。 オフィスには、リアルなつながり、コミュニティがあることが価値なので、その一助として、テナント間コミュニケーションツールをつくっていきたいと思っています。

※WeWork:世界各地にシェアオフィス・コワーキングスペースを展開している米国企業。

インタビューを終えて……

トライアルしやすいビジネスモデルが面白く、BtoB商材をセールスする一つの合理的な手法だと感じました。同じOOHでもBtoC商材では広告費として予算を頂くところが、BtoB商材であれば営業費や販促費など費目が変わるところもユニークです。コロナ禍によって働き方に変化がありましたが、より狙いたいビジネスターゲットに当たりやすくなったという点も興味深いです。

今後、エレベーター広告がビルオーナーとテナントのコミュニケーションツールとして寄与したり、WeWorkのように中に入るテナントや企業間の活性化を図る、そんなオフィスサポート事業まで手掛けるようになった姿を想像すると新しいオフィスや働き方が見えてきそうです。

DOOHの新潮流を紹介する記事では、ヘアサロン・サイネージ編も公開中(記事は、こちら

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