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2022年、「クリエイティビティファースト」で、企業や社会の課題解決に挑む

2022/01/25

2021年11月、株式会社電通はクリエイティブ部門を統括するチーフ・クリエーティブ・オフィサー(CCO)を新設し、執行役員の佐々木康晴氏が就任しました。

急速に変化しつつある社会の中で、電通のクリエイティブはどのような役割を果たすのか?今こそ求められる、クリエイティブの価値とは?佐々木氏に、これからのクリエイティブについて伺いました。

佐々木康晴

クリエイティビティを発揮すれば、どんなアイデアも実現できるはず

──佐々木さんは1995年の入社以来、コピーライターやクリエーティブ・ディレクターとして数々の仕事を手掛け、国内外の主要な広告賞を多数受賞してきました。はじめに、入社の経緯やクリエイターとしての経歴を教えてください。

佐々木:1995年、思い返すとはるか昔のことのように感じますね(笑)。僕は学生時代にコンピューターサイエンスの研究をしていて、当時はちょうどインターネットが商用化されたタイミングでした。まわりの仲間はメーカーや研究所など、システムやソフトウエアを作る道に進む人が多かったのですが、僕はどちらかというと、インターネットという仕組みがメディアとして世の中にどう普及するのかに興味があって、電通の門をたたきました。

そして、どういうわけか、コピーライターの部署に配属されることになったんです。なので、自分から選んだというよりは、いきなり知らない場所に連れて来られてしまったというのが、クリエイティブの道に進むきっかけでした。

でも、入ってすぐにクリエイティブの世界に魅了されました。それまでずっとプログラムを書いてコンピュータを動かすことをやってきたのですが、コピーライティングは言葉を書いて人の気持ちと体を動かすことだと理解すると、こっちのほうがよっぽど面白いな、と(笑)。

そこから、いろいろな広告の企画制作に携わりました。特に好きだったのはラジオCMです。鉛筆とストップウオッチさえあれば、音と言葉だけでどんな世界でもつくれることに、とてもワクワクしました。テレビCMでは、野生動物をモチーフにした製薬会社の企業広告を長年手掛けたことも印象に残っています。図書館で世界の珍しい動物を調べて、実際にジャングルや砂漠、草原などに滞在してその動物を観察し、珍しい生態を見せてくれる瞬間を撮影する。世界中を駆け巡っていろんな動物に会いに行きました。思い返すと、僕のキャリアは非常にアナログなクリエイティブ生活から始まったわけです。

その後、1998年に転機が訪れました。電通が世の中に先駆けて、デジタルクリエイティブの部署を新設し、そこに配属されることになりました。昔から知っていたデジタルの世界と、新しく知ったクリエイティブの世界。これらをどうつなげたら面白くなるのか。それが僕の新たな探求テーマになりました。まだデジタルマーケティングの手法が確立されていない時代。どうやったら誰も見たことがない新しい表現をつくれるか、人の心を動かす強烈な体験をつくれるか、いろいろと試行錯誤しながらひたすらつくり続けて、気が付けば今に至るという感じです。

──クリエイティブの仕事に携わる上で大切にしてきたことは何ですか?

佐々木:「実現できないアイデアはない」という思いです。例えば、現実世界でタイムマシンを作るのは難しいけれど、テクノロジーとアイデアの力を使えば、昔に戻ったり未来に行く「体験」は作り出すことができます。思い付いたアイデアは、さまざまな手段を駆使すれば絶対に実現できるはずだから、諦めずに粘って工夫して形にしよう。デジタルクリエイティブの世界に入ってからは、そんなことを常に考えてきました。

人と企業、社会をつなぎ直すクリエイティビティが求められている

──今の世界的なクリエイティブの状況や変化をどのように捉えていますか?

佐々木:言うまでもなく、コロナ禍がもたらした変化は大きいですよね。外出する機会が減った代わりに、私たちの日常にデジタルが一気に浸透しました。同時に、環境問題や社会問題に対する関心も急速に高まっています。今、企業はただモノやサービスをつくって売ればいいのではなく、その存在意義が問われている。となると、当然、クリエイティブに求められる役割も変わってきます。企業や商品・サービスの魅力を伝えるだけでなく、企業の本質的な提供価値をつくり直したり、人と企業、人と社会の新しいつながりをつくったり、そういったことにクリエイティビティが発揮される事例が世界的に増えていると感じます。

──最近、感銘を受けたクリエイティブを教えてください。

佐々木:たくさんあるのですが、例えば、海外のハイネケンのクリエイティブは最近どれも面白いですね。ビールは「みんなで楽しむもの」という価値観もある中、コロナ禍でバラバラになってしまった人やお店をつなぎ直すチャレンジをしています。人びとが感染症防止対策を試行錯誤しながらお酒を楽しむ様子を描いたCMでみんなに元気を与えていたり、お店のシャッターに広告を出稿して休業中のお店を支援するキャンペーンを展開したり。人と企業と社会をつなぎながら、自社の存在意義を伝える素晴らしい取り組みだと感じました。

このように、企業の抱える課題に高度なクリエイティビティを提供することで、その企業価値を再定義し、社会までも変えていく、そんなやり方が必要とされています。車メーカーであれば、ただ電気自動車を作ることだけが求められているのではなく、例えば、その先にある移動の自由を提供することや、移動で得られる楽しい体験や豊かな生き方を提供することが、本質的な存在意義になるかもしれません。大きな未来を描き、人びとにそれを届けることに、クリエイティブの力が求められているのかなと思います。

企業・社会の課題解決にクリエイティビティは欠かせない

──今回、電通が新たに設けたCCOという役職を、佐々木さんはどのように捉えていますか?

佐々木:電通にはクリエイターが800人ほど在籍しています。これほどの人数のクリエイターを抱えている企業は世界的に見ても珍しいのですが、それぞれ多様な専門性を持っているところが一番のユニークネスだと思っています。コピーを書く人、デザインする人、映像やストーリーをつくる人、体験を創造する人、デジタルテクノロジーに強い人、宇宙開発に詳しい人や、ゲノム研究を応用してプロダクトをつくれる人、などなど。

この個性豊かな800人を同じ方向に束ねることなんて、正直、難しい。ですから、トップダウンでディレクションするのではなく、この多様性をさらに伸ばしていきながら、意外なかけあわせのチームをつくり、世の中が想像もしなかった新しい価値をつくれるような場を整えたり、個々のクリエイティビティを高度化する役割を担っていると考えています。同時に、社外に向けて、電通がクリエイティビティ・カンパニーであることを知っていただくこともCCOの仕事です。

──電通は「Integrated Growth Partner」(インテグレーテッド・グロース・パートナー)というビジョンを掲げ、広告にとどまらない幅広い領域で企業と社会の持続的成長に貢献することを目指しています。その中で、クリエイティブが果たすべき役割を改めて教えてください。

佐々木:まさしく、電通は従来の広告宣伝変革(AX)から、ビジネス変革(BX)、カスタマーエクスペリエンス変革(CX)、デジタル変革(DX)へと事業領域(※)を拡張させ、国内外のグループ会社と連携しながらクライアントや社会の課題解決に取り組んでいます。そのベースに卓越したクリエイティビティがあると思っています。

クリエイティビティとは、単に広告表現をつくるという狭義の意味ではなく、世の中にある課題の本質をつかみ、劇的に効果が高くかつ最もエネルギーを使わない方法、すなわち「その手があったか!」というやり方を考えて実行し、それによって人びとの心と体を動かすということ。電通にはクリエイターのすぐ横に、プロデューサー、メディアプランナー、サイエンティスト、ストラテジスト、アントレプレナーなど、多種多様な人たちがたくさんいます。広告で企業の課題を解決するだけでなく、その先にある人や社会の課題まであざやかに解決してしまうような仕事へ事業領域が広がった今こそ、この多様性から生まれるクリエイティビティが企業や社会の課題に貢献できるポテンシャルは非常に大きいはずです。

電通には豊富なデータやテクノロジーもそろっています。私たちはこれらをクリエイティビティの高度化のために使います。電通のクリエイターたちは、従来のメディアだけでなく、デジタルスペースにリアルスペース、体験創造からビジネスデザインまで、なんでもそのクリエイティビティ発揮の道具として使えるようになっています。そんな電通から、どれだけ意外で、画期的で、強く人の心を動かすものを生み出せるか。そこをみんなでとことん追求していきたいです。

今回、電通がCCOという役職を設けたのは、改めて企業としてクリエイティビティを大切にしていくという決意だと受け止めています。これからもクリエイティビティを軸に、企業、そして人と社会の持続的成長に貢献する、新しい価値を創造していきます。

※4つの事業領域(AX、BX、CX、DX)
AX(Advertising Transformation)領域:広告の高度化・効率化を実現する広告宣伝変革領域。
BX(Business Transformation)領域:顧客企業の事業変革を実現するビジネス変革領域。
CX(Customer Experience Transformation)領域:最適な顧客体験をデザインし、実現するカスタマーエクスペリエンス変革領域。
DX(Digital Transformation)領域:マーケティング基盤の変革を実現するデジタル変革領域。
 
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